Vol.64
07.03.22 更新
3月8日(水)に発売された、PS2『SEGA AGES 2500シリーズ Vol.29 モンスターワールド コンプリートコレクション』。かつてゲームセンターで旋風を巻き起こした『ワンダーボーイ』『モンスターランド』などが当時のまま収録されている。そして3月27日には、Wiiの「バーチャルコンソール」向けタイトルとして、『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』が配信予定。今回は、『モンスターワールド』シリーズを産み出したウエストン・ビット・エンタテインメントの坂本慎一取締役をはじめ、オリジナル版開発スタッフの栗原孝典さん、大空真紀さんに話をうかがいました。
(株)ウエストン・ビット・エンタテインメント 取締役
坂本 慎一(さかもと しんいち)
ウエストン在籍以前から多数のゲームの音楽を手掛ける。PS2版収録作では『モンスターランド』『モンスターレア』『MWII』『MWIII』の作曲・効果音担当。PS2版と同時発売されたサントラCDに収録されているアレンジバージョンでは、ギターの腕も披露。
(株)ウエストン・ビット・エンタテインメント プログラマ
栗原 孝典(くりはら たかのり)
『モンスターレア』のアシスタントを経て、『モンスターワールドII』、『モンスターワールドIII』のメインプログラムを担当。
(株)ウエストン ビット エンタテインメント デザイナー
大空 真紀(おおぞら まき)
『モンスターワールドIII』のエンディングなどを担当した後、『モンスターワールドIV』ではキャラクターデザインのほかキャラのドットモーションなどを担当。
シリーズ第1作である『モンスターランド』は、今見ても斬新なシステムが非常に魅力的ですが、誕生したきっかけなどを教えてください。
[坂本]
『モンスターランド』は、『ワンダーボーイ』をつくった西澤(ウエストンビットエンタテインメント代表取締役)が、「ロールプレイングゲームをつくろう」と言ったことから始まりました。私は「ついにウチもPCや家庭用ゲーム機向けに本格的なロールプレイングゲームを作るのだな」と受け取っていたんですが、「アーケードゲームとして発売できるように、違う方向性でできないだろうか?」と企画を揉んでいくうちに、システムが当初思っていたモノとはかなり異なってきました。
そして生み出されたのが、主人公のパラメータは成長せず、武器やアイテムを入手することで強化されていくという『モンスターランド』のシステムです。これは、キャラクターを成長させる…というロールプレイングゲーム要素的な楽しみと、ただ成長させただけではクリアできない…というアクションゲームとしての要素の両方をマッチングさせたものでした。
また、当時1レバー+2ボタンが普通だったアーケードゲームにおいて、「ステータス表示などに割り当てるボタンがない」ということもあり、ロールプレイングゲームでは必須とも思われたレベルアップの概念をバッサリ切り捨てたのが印象に残っています。
本作は未だに稼動しているお店もある人気作品となったわけですが、続くシリーズは家庭用ゲーム機向けとなりましたね。
[栗原]
『モンスターワールドII』は、アクションゲームだった『ワンダーボーイ』、ロールプレイングゲームを取り入れた『モンスターランド』に続くゲームとして、さらに新しいシステムにしようと企画が立てられていました。アーケードタイトルとしては『モンスターレア』を別のスタッフがすでに開発を進めていたので、それとは違うゲームとして主に新人中心で進めていたんです。
西澤から「次は家庭用のゲームを作ろう。ところで、みんなは今どんなゲームを遊んでいる?」といった質問がありました。そこで「主人公を次々と替えていくゲームが楽しい」と誰かが意見して、「じゃあ、それで行こう」と決まったのが始まりです。
主人公の「ブック」が、リザードマンやホークマン、マウスマンなどに変身し、戦う相手や進む場所に合わせて姿を変え、様々なアクションを楽しめるようにしました。海外では「MASTER SYSTEM」で発売されましたが、日本ではすでにメガドライブの時代になっていたので、携帯ゲーム機「GAME GEAR」での発売となりました。今回は両バージョンを収録しましたので、両方の違いを楽しんでいただきたいですね。
そして「ワンダーボーイ」シリーズの5作目となり集大成となる『モンスターワールドIII』の登場となるわけですね。
[坂本]
『モンスターワールドIII』は、とあるクリエイターさんから「私は、本当は『モンスターランド』のようなゲームを作りたかったんです」という話を聞かされ、「そんなに思い入れを持ってくれる方がいるなら、シリーズの集大成を作ろう!」と思い立ち、『モンスターワールドII』のスタッフ中心で企画がスタートしました。
[栗原]
「ワンダーボーイ」シリーズの完結作とするべく、これまでに考えられた様々な要素を取り入れ、あらゆる面白さを詰め込みました。そのためこれまで以上のボリュームを用意しました。シリーズを遊んだユーザーの方なら「ニヤリ」とするような遊び的なイベントやサウンドも盛り込んでいます。唯一心残りは容量の関係で、当初最後のダンジョンへ向かうシーンは『モンスターレア』のシューティングにしようという話をしていたのですが、実現できなかったことですね。
完結編として作られたはずの『〜III』ですが、さらに『〜IV』が作られました。
[坂本]
前作の制作にタッチしていなかった西澤が、完結した『ワンダーボーイ』シリーズでやり残したことが多かったらしく、「まだまだゲームの面白さを味わってもらえる要素はある!」という強い思いを実現させたゲームが『モンスターワールドIV』です。『モンスターランド』のメイン2人による久々の共作となりました。ただ、まったく新しいアクションを用意する必要があり、そのアイデアを思いつくまでにかなりの時間がかかりました。その結果、「ペペログゥ」が誕生し、新しい奥の深いアクションを提供することができました。
[大空]
余談ですが、ペペログゥが生まれる前、『モンスターワールドIV』には、主人公が3キャラいたのです。ストーリーが『モンスターワールドIII』の続きの「とある星」から始まり、そこで攻撃を受けた「宇宙人」がUFOで命辛々に星を脱出。そして墜落した土地で現在の主人公である「アーシャ」やもうひとりの主人公である男の子と出会い、3人の冒険が始まる…というものでした。
PS2版ではシリーズを通してプレイできますが、ユーザーの皆さんにはどんなところを見ていただきたいですか?
[坂本]
『モンスターワールド』シリーズのサウンドは、意図して似通った部分を用意してあります。リズムであったり、音程であったり。当時はそういったゲームは少なかったですが、そうすることによってユーザーに「『モンスターワールド』の続きを遊んでいるんだ」と思っていただけたのではないでしょうか。
これは、グラフィックやシーンにも言えることです。『モンスターワールド』シリーズを全部遊んでいればわかってもらえるイベントや、「前作で似たようなシーンを見た」と感じてもらえるようになっています。それらにより、サウンドと相まって『モンスターワールド』というシリーズへの印象が強くなって感じてもらえると嬉しいですね。
最後にメッセージをお願いします。
[栗原]
日本では隠れ気味となってしまった『モンスターワールドII』をぜひ遊んでください!
[坂本]
アーケードでたっぷり遊んだ『モンスターワールド』シリーズが、そのままのクオリティで家で遊べます! ぜひ楽しんでください。
[大空]
『モンスターワールド』シリーズは、未だに国内だけでなく海外の方からも「欲しい!」「今のハード向けに出して!」と言われている作品です。日本の方だけでなく、海外のファンの方にも何とか手に入れて遊んでいただきたいですね。それと、『モンスターランド』が稼動した当時はネットなどがなく、プレイしていただいた方の感想やご意見といって反響が伝わってきませんでした。今はネットのおかげですぐに声が聞けて嬉しいので、遊んだらぜひ感想を教えていただきたいです。
PS2『SEGA AGES 2500シリーズ Vol.29
モンスターワールド コンプリートコレクション』
2007年 3月8日(木)発売¥2,500(税込¥2,625)
Wiiバーチャルコンソール
『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』
2007年 3月27日(火)配信予定 Wiiポイント 600