仕事を拓く
若い民からの成長戦略
【放送芸能】「血の記憶」感じて 人気声優 朴ロ美の主演舞台アニメ作品「 ∀ (ターンエー)ガンダム」「鋼の錬金術師」「NANA」などで活躍した人気声優の朴ロ美(パクロミ)(41)が九月、自ら企画・プロデュースした演劇「夏ノ方舟(はこぶね)」で主役を演じる。声優をしながら、ここ数年は舞台でも精力的に活動している。今回は「お客さん一人一人が自分の原風景を思い起こす舞台に」と意気込んでいる。 (五十住和樹) 「実は、声優を志したことはないんです」。「NANA」の大崎ナナ役で第一回声優アワード主演女優賞を獲得した実力派の朴だが、意外な答えが返ってきた。 声優の仕事を始めたきっかけは、「機動戦士ガンダム」シリーズの富野由悠季(とみのよしゆき)監督が朴の出演した野外劇を見て、オーディションに声を掛けたのがきっかけ。「∀ガンダム」では主人公の少年ロラン・セアック役を務めた。 「男の子の役なんて夢にも思ってなくて、人生が変わった」。自らを猪突(ちょとつ)猛進型、「曲がったことが大嫌い。“熱苦しい”性格なんです」と評するだけあって、マイクの前で気持ちをぶつけ、自分を開いていくような感覚で役をこなしたという。 高校時代は演劇部。「皆で一つのものを作り上げる」魅力に取りつかれた。在日韓国人三世の少女は当時、「奇異の目で見られている」ような思いがあった。「自分が素直になれる、本当の自分を出せるのが演劇だった」といい、短大を出て韓国に半年間留学した後、円演劇研究所に入った。 演劇をやめようとしたこともあった。「会社員になって稼いで、両親に楽をさせてあげる」。携帯電話や冷凍食品の売り子をした時は、在庫が売り切れになるほどの手腕を発揮し周囲を驚かせた。 この人には、人を引きつける何かがあるのだろう。猪突猛進の情熱か、思わず見つめ返してしまう視線の力か。初の主演映画「あかぼし」(吉野竜平監督)では、夫が蒸発し、息子と二人で暮らしながら新興宗教にのめり込んでいく母親を、迫力たっぷりに演じた。 「夏ノ方舟」は、「ハコブネ」と呼ばれる港町の安宿を舞台に、出入りするチンピラや春を売る女、男たちのさまざまな思いを通して、泥の底からはい上がろうとする者たちの希望を描く。朴は作者で演出も務める東憲司さん(48)に「人の想(おも)いは海をも越える、普遍的なテーマを書いてほしい」と頼み、この台本が出来上がった。安宿の女主人を演じる朴は「自分の父や在日のことを伝えたいのではない。舞台を見る人それぞれが、人と人とのつながり、『血の記憶』『自分の帰りたい場所』はどこかを感じてもらえたら」と話している。 ◇ 「夏ノ方舟」は九月十二日から二十三日まで、東京・西浅草のステージ円で。一般四千八百円、学生三千五百円など。問い合わせは演劇集団円=(電)03・5828・0654。「あかぼし」は東京・新宿のK’sシネマで三十日まで上映中。 PR情報
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