乳製品と糖尿病13

まとめます。

・mTORC1は栄養のセンサーであり、その活性化には三つの経路を必要とする。

 1.ロイシンによるmTORC1のトランスロケーション
 2.インスリンまたはIGF-1によるIRS-1の活性化
 3.エネルギーによるAMPKの不活性化


・ロイシンは動物性タンパク質によって供給され、特にホエイやチーズなどの乳製品に多い。

・インスリンは糖質の摂取によって膵臓から分泌され、IGF-1はアミノ酸の摂取によって肝臓から分泌される。

・エネルギーはATPを産生する。糖質と脂質はもちろん、アルコールもエネルギー。

・mTORC1が活性化すると、タンパク質、脂質、コレステロールの合成が増加し、細胞の増殖は促進される。

・mTORC1が活性化すると、S6K1を介したIRS-1のセリンリン酸化により、インスリン抵抗性が増大する。

・炎症もTNFα/IKKβ/TSC1/Rheb経路によりmTORC1の活性化を促進する。

・肥満ではBCAAの代謝は低下するが、糖質コルチコイドの産生も増加して、両者は拮抗する。

・インスリン抵抗性によりインスリン需要は増加し、インスリン抵抗性は糖新生を促進する。さらに、ロイシンは膵臓β細胞のmTORC1シグナルとインスリン分泌を促進する。その結果、膵臓β細胞のERストレスが増加するとともに、膵臓β細胞の増殖が刺激され、膵臓β細胞の老化が早まる。

・インスリン/IGF-1によるPI3K/AktシグナルはFoxOを核外へ排出し、核外のFoxOはmTORC1を促進する。核内のFoxOは、筋肉のLPL活性を促進・肝臓の糖新生を促進・共抑制因子 (co-suppressor) としてアンドロゲン受容体を抑制するなど様々な影響を及ぼし、mTORC1と協力/を阻害して疾患を引き起こす/シグナルを弱める。

※co-suppressor: 共抑制因子。補助抑制因子とも。転写因子と違って直接DNAと結合しないので「co- (補助)」がつく。co-activatorも同じ

・以上から、ロイシン/エネルギー過剰が引き起こすmTORC1活性化/FoxO抑制が関与する疾患は、2型糖尿病、肥満、癌、アルツハイマー、ニキビ、脱毛、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)。



PI3K/Akt/mTORC1を阻害する物質は以下の通り。

・メトホルミン ─┤ミトコンドリア呼吸鎖複合体I

・メトホルミン ─┤ロイシン

・レスベラトロール (赤ワイン) ─┤PI3K

・EGCG (緑茶) ─┤PI3K / mTORC1

・クルクミン (生姜) ─┤Raptor → mTORC1

・DIM (アブラナ科) ─┤Akt / mTORC1

・ゲニステイン (大豆) ─┤PI3K

・カフェイン (コーヒー) ─┤PI3K






2011年の第47回欧州糖尿病学会では、次のような報告がありました。

「蛋白質を多く摂取し続けると、2型糖尿病リスクが約1.4倍に増大する可能性」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/easd2011/201109/521554.html

論文はこちら。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22850191

日本国立がん研究センターの多目的コホート研究からも同様の発表です。

「男性が牛肉や豚肉を多く摂取すると、糖尿病発症リスクが約1.4倍に上昇」
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3290.html

米国の観察研究では、肉をより多く摂取することで、その後のリスクがさらに上昇する可能性が示されています。

「赤身肉を食べる量の少なかった人が量を増やすと、その後の2型糖尿病のリスクは2倍」
http://kenko100.jp/articles/130621002335/



上記から分かるように、糖質制限などと称してインスリンを制限しようという発想は間違いであって、穀物や野菜の代わりにチーズや肉を食べても逆効果になります。

一時的に糖尿病が改善したように見えるのは、乳製品により促進されるGIPや、過剰なロイシンが、インスリンの分泌を刺激するからに過ぎません。

そして過剰なロイシンはインスリンを、過剰なトリプトファンは成長ホルモンを介してIGF-1を促進し、インリスン/IGF-1/ロイシンは最終的にインスリン抵抗性につながります。

インスリンは膵臓のβ細胞の機能を維持するために必要ですが、インスリン抵抗性はβ細胞の機能を損ない、肝臓の糖新生を促進し、筋肉による糖の取り込みを低下させることで、結局は糖尿病を悪化させます。

それでは。
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by travelair4000ext | 2013-05-08 21:43 | 翻訳 

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