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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・

いまだにシリア化学兵器使用はどっちか?と思っている方へ

 まさかの急展開で、化学兵器国際管理という話が進んでいますが、米露ともにきわめて強い条件付きなので、まだどうなるかわかりません。シリア=ロシア連合の時間稼ぎですね。これまでの不毛な国際社会の交渉とやらでまた時間が浪費されるのでしょうか? その間も人々は殺され続けています。
 ところで、いまだに化学兵器使用はどちらか?という方もいらっしゃるかと思いますので、ご参考まで。
▽化学兵器の使用許可申請 シリア政権指揮官と独紙(共同 9月9日)
▽シリア軍の化学兵器使用 「証拠ある」 、国外脱出の法医学者明かす(ロイター 9月10日)
▽アサド政権、反体制派に毒ガス使用した可能性高い=国際人権団体(ロイター 9月10日)
 確度が高いのは、やはり最後のヒューマンライツ・ウォッチの報告ですね。あそこは不確かな情報で断定的なことを言うのは避けますから、ここまで言いきるということは、それなりに確信があるのでしょう。独自の現地情報をもとにした中立な第三者機関の報告ですから、説得力もあります。

 他方、こんなものもあります。
▽反体制派が化学兵器使用? 拘束中の伊記者ら漏れ聞く(9月10日 MSN産経)
(一部引用)⇒拘束されていた部屋のドアの隙間からある日、反体制派関係者らのインターネット電話「スカイプ」を使った英語の会話が漏れ聞こえてきた。化学兵器攻撃は西欧諸国が軍事介入するように反体制派が仕掛けたもので、死者の数は誇張されているとの内容だったという。キリコ記者は「会話していた連中の素性も分からない。(これだけで)アサド政権が化学兵器を使わなかったと言うのは無理がある」と述べた。(引用終わり)
だそうです。これでは参考情報にもならないような・・・
  1. 2013/09/11(水) 18:26:19|
  2. 未分類
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  4. | コメント:5
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コメント

黒井先生の『インテリジェンスの極意』を読み、こちらのブログに辿り着きました。ブログの方もとても勉強になります。ありがとうございます。

シリアの件で西側の人たちのいろいろな言説を読むと、アサドが一応世俗派で反政府側にイスラム原理主義者がいるというところがすごく引っかかってるなと感じます。
エジプトのムスリム同胞団への欧米メディア・政府の反応も冷淡そのものですよね。同胞団は原理主義ってほど過激じゃないのにも関わらず。
黒井先生はエジプトのクーデターに関してはどう思われますか?
  1. URL |
  2. 2013/09/11(水) 21:09:13 |
  3. 石川進 #U6M1AWu2
  4. [ 編集]

>不毛な国際社会の交渉とやらでまた時間が浪費されるのでしょうか? その間も人々は殺され続けています。

内戦勃発以来二年半で犠牲者十一万人突破。一日平均で百二十人が殺されていく。アサド政権支持の人々は同じ情報を共有していないのか。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130902/mds13090201270003-n1.htm

エントリー中の引用記事『化学兵器の使用許可申請 シリア政権指揮官と独紙』ですが、軍事介入に慎重なドイツの偵察艦船がシリア沖で何をやっている(笑)。この情報は黒井先生が指摘した「マーヘル指示説」というイスラエル情報と似てる。


さて、常識で考えたいのですが、米国は衛星情報からシリア軍が反体制派地区へミサイルを撃ち込んだ後で大量死が起こったと理解。これはサダムが対イラン戦争で化学兵器弾頭を打ち込んだのと同じで高度な装置保持が前提でシリア反体制派には無理。

一方オーム真理教地下鉄サリン事件では化学兵器を人が運んだが、これは素人も実行可能。ただし、これは地下鉄という閉鎖空間の条件下で少量のサリンを使い時間差で実行出来た。

シリアの場合は開かれた空間で千人以上が大量死。これには運搬及び散布に特殊技術の訓練を受けた化学部隊
が必要。シリア軍でも実行出来るのは限られているのではないか。

果たしてシリア反体制派にそんな事が出来るか。まして、助っ人のアル=カイダなんて所詮は寄せ集め兵士。

「トルコの秘密工場から云々」とまことしやかな説があるがトルコ軍の支援でも無い限りシリア反体制派は化学兵器を扱え無いだろう。この辺がまっとうに分析される必要があるのではないか。
  1. URL |
  2. 2013/09/12(木) 02:47:31 |
  3. 道楽(どら)Q #-
  4. [ 編集]

道楽Q様
まさしく仰るとおりと思います。反体制派には技術的に無理なので、その場合はCIAと米軍の合同工作チームが潜入して行ったとでもしないと成り立たないでしょう。すごい陰謀論ですが(笑)
  1. URL |
  2. 2013/09/12(木) 17:53:43 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

石川様 コメントありがとうございます。
 反政府軍の中に、海外の義勇兵が多いスンニ派原理主義派がいますが、別に多数派というわけではないです。親アサド言説は政府系メディア情報から、まず基本的にそこを読み間違えています。
 原理主義とは、自らの宗教・宗派だけを社会の基準と認め、それを基盤とする社会秩序を作ろうという思想ですが、シリア人には何派でもそうした考えの人は今でもそんなに多くはいないと思っています。ただ、死と直面する日常の中、宗教に救いを求める人は非常に増えています。
 エジプトのケースについてはよくわかりません。私は手続きとしての民主主義の原則を絶対視しているわけではなくて、リアル世界でベターであればいいとの考えですが、長年さまざまな紛争を取材して学んだことは、それぞれのケースごとに事情は違っていて、一般論的な視点で判断してはいけないということでした。
 なので、エジプトはまたシリアや他の国と違う、エジプトだけのケースとして分析しなければならないと思っていますが、恥ずかしながら勉強不足で、いまだ判断できないでおります。
  1. URL |
  2. 2013/09/12(木) 18:12:24 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

丁寧なご返答ありがとうございました。エジプトの件も今後機会がありましたら触れていただけると大変ありがたいです。
  1. URL |
  2. 2013/09/12(木) 22:10:59 |
  3. 石川進 #SIR.BgG2
  4. [ 編集]

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黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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