境界性(ボーダーライン)人格障害




「ボーダーライン人格障害」とは?

「境界性人格障害」という心の病は「ボーダーライン人格障害」とも呼ばれます。以前は、神経症と精神病の「境界」(定義が難しい)にある病気とされましたが、現在では独立した病気として位置づけられています。

患者の特徴

境界性人格障害の患者さんの大きな特徴は、人格が不安定であることです。そして不安定な窮地にいつも立たされているため、理由もないのにイライラしてしまったり、憂鬱な気分になったりしてしまうことが多く、さらに症状が悪化してしまうと、統合失調症に酷似した症状が現れることもあります。

また、この病の患者さんの中には、前述のように人格に安定を欠いているために、対人関係をうまくコントロール出来ないという状態に悩まされることもあります。つまり、同じ相手なのに、ある時までは普通に親しみを持って接していたのに、突然にそれが豹変してしまって、いきなり攻撃的な態度を取ってしまったり、またさらに豹変して、今度は温かい態度で接するようになったりと、とにもかくにも不安定さがつきまとってしまうのです。

とにもかくにも、ボーダーライン人格障害の患者さんの中には、自分の衝動を抑えることが難しく、そのために不本意ながら反社会的な行動を(もちろん病気が原因で好きでやっているのではありません)取ってしまう方も存在するの事実です。

ボーダーライン人格障害の診断基準

アメリカで用いられている精神疾患の診断名を決めるべくマニュアル的文書DSM-Wという文章で境界性人格障害の診断基準は、一応はなされています。ちょっと挙げてみます。

対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で成人早期に始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち、五つ(またはそれ以上)で示される。

@:現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気違じみた努力。 注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと。

A:理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式。

B:同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像または自己感。

C:自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも二つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い)。注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと。

D:自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰返し。

E:顕著な気分反応性による感情不安定性

F:慢性的な空虚感

G:不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難

H:一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状

いずれにせよ、以上に述べましたような境界性人格障害の患者さんの持つ特徴に当てはまるかなと思われる方がいらっしゃいましたらば、治療を勧めるべきでしょうし、自らがそうだと思った場合は尚更、率先して治療を受けるべきでしょう。さもなければ、自らだけではなく、他人をも傷つけるという悲惨な結果が起こりかねません。

なぜそのような疾患にかかるのか?

原因としては様々な説が挙げられています。中でも最も多く指摘されているのは、「親子関係のゆがみ」が原因であるという説。これは精神医学分野において「分離不安」と呼ばれています。

子どもは、「自立」と「依存」との葛藤の中で成長します。つまり、人間というものは乳幼児の頃は食事から排便までを親の世話になる「依存」の時期を過ごし、独り立ちできるようになれば、親離れして「自立」して生きていくわけです。このバランスが何とも難しいのですが…。しかしそこに共通していることは、親の愛情に支えられた「安心感」が不可欠であるという点なのです。ところが、何らかの理由で親に愛情を注がれずに、その「安心感」が得られないと、「見捨てられる不安」が生じて自立ができず、思春期以降に、このボーダーライン人格障害を発症してしまうという考え方があります。

その原因となる時期は2歳前後とする説があります。2歳になると人間は親から「分離」、つまりは自分と両親が違うものだと気づくと言われているのですが、この時期に両親がいなかったり、情緒不安定だとすると、子どもの心に不安が起きてしまい、親からうまく「分離」できなくなってしまい、それが他人との距離の取り方が分からないという事態を引き起こすのです。

それに加えて、親の過度の期待や理想の押しつけが発症の原因とする考え方もありまして、最近では幼児虐待との関係も注目されています。

つまりはこういった様々な込み入った事情で、人との距離の取り方が分からないまま、成長した子どもはボーダーライン的な人間になってしまいがちであるということになります。



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