毎日新聞 9月11日(水)21時28分配信
カネボウ化粧品の美白化粧品で大規模な白斑被害が広がっている問題で、11日公表された外部有識者による第三者調査結果は、顧客や社員、医師から繰り返し寄せられた被害報告を放置してきた同社のずさんな姿勢を浮き彫りにした。カネボウは信頼回復に躍起だが、不祥事に伴う消費者の「カネボウ離れ」は深刻で、親会社の花王を含め経営への打撃は避けられそうにない。
調査報告書などによると、カネボウは2008年9月、美白成分「ロドデノール」を配合した化粧品の販売を開始。少なくとも11年の年初には使用者に白斑被害が出始め、同年10月にカネボウに最初の被害報告が寄せられた。ところが、同社はその後の被害報告も含め「病気による症状」と判断し適切な対応をとらなかった。結局、問題発覚は被害者を診察した医師から症例報告があった今年5月までずれ込み、被害者は9月1日時点で9959人に拡大した。
なぜ、発覚が遅れたのか。調査を担当した中込秀樹弁護士は11日の会見で「組織的な問題が大きい。事なかれ主義で(問題を)放置した」とカネボウの構造的な問題を指摘した。
カネボウは伝統的に販売員の役割が強く、「クレーム対応も販売員の接客の延長になっており、お客様が『病気だ』と納得すればそれでよしとしてしまっていた」(カネボウの夏坂真澄社長)。さらに独立した品質管理部門もなく、異常が発生した時に、どこに情報を集中すべきか定まっていないなど体制にも欠陥があった。
業界内では「ロドデノールはそもそも成分が強い。それを主力製品に一斉に使うカネボウの姿勢に危うさを感じていた」(大手幹部)と美白効果ばかりを優先し、被害を拡大させたカネボウに対する批判も強い。夏坂社長は「当たり前のことをどこまで徹底できるか。全社員が変わらなければならない」と強調したが、体質改善を含めた信頼回復は容易ではない。【松倉佑輔、西浦久雄】
賠償拡大、訴訟に発展も
白斑問題の拡大を受け、カネボウ化粧品の経営への打撃もさらに大きくなりそうだ。同社の年間の売上高は約1900億円。回収対象は8ブランド54製品で、売上は約50億円に過ぎないが、ブランドイメージの失墜で他の主力化粧品の売り上げも不振が続いている。回収発表後の7〜8月の売上は前年同期比で約2割も減少した。
夏坂社長は11日の会見で、白斑の原因とみられる美白成分「ロドデノール」を使わない、新たな美白化粧品を年内にも発売する考えを示したが、「他社に流れた顧客を取り戻すのは容易ではない」(百貨店関係者)。
被害者賠償も巨額になる見通しだ。カネボウで治療にかかった医療費のほかに慰謝料も支払う方針で、症状が回復した被害者から順次、支払いを始めている。ただ、被害報告は今後も膨らむ可能性があり、「(賠償が)どれぐらいになるかは分からない」(夏坂社長)状況だ。顧客が賠償内容に納得せず、製造物責任法(PL法)に基づく訴訟に発展すれば、賠償額や訴訟費用は一層拡大する。
影響はカネボウだけにとどまらない。親会社の花王は13年12月期の通期業績見通しで、カネボウ製品の買い控えなどにより100億円の減収を見積もる。ただ、慰謝料などの規模は精査中で、今後、損失規模が膨らむのは必至だ。
花王の社内では「賠償や売上減など業績の影響以上に、カネボウのブランド力が失墜したダメージが大きい」との声も上がる。花王は2006年、高いブランド力を評価し4100億円を投じてカネボウ買収に踏み切った。
今後もカネボウブランドを軸に化粧品の海外展開などを加速する方針だったが、白斑被害は台湾など海外にも広がっており、戦略の大幅な見直しを迫られている。【松倉佑輔】
最終更新:9月11日(水)22時28分
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