今さら東京招致応援…韓国民団の思惑 決まれば五輪景気に便乗?
9.7
東京が招致を目指す2020年夏季五輪の開催地は、ブエノスアイレスのIOC総会で7日(日本時間8日午前5時)に決定する。その直前の5日になって、在日韓国人50万人で構成する在日本大韓民国民団(民団)が「国籍を超えて日本の地域住民として、ぜひ東京に五輪が来ることを念願している」と表明した。今さら「招致に何らかのお手伝いができれば」というが、日韓両国の関係が冷え込む中で、民団の“総意”を示す狙いは何なのか。 (笹森倫)
5日、都内で開かれた「東京招致に関する民団の総意について」と題された会見には、日韓30人余の報道陣が集まった。
民団側からは中央本部の呂健二、朴安淳両副団長と在日本大韓体育会の崔相英会長が出席。呂副団長は「(民団の)構成員の85%は日本生まれ。自分が生まれたところもふるさと。そこが発展してみんなが元気になるのは大変うれしいこと。韓国と日本の間は非常に微妙な関係だが、こういうときに一緒になって“東京五輪に賛成だ”という気持ちを伝えることで、両国の関係を改善するお手伝いになればいい」と趣旨を述べた。
質疑応答では、当然ながら「表明がギリギリすぎる」という指摘が飛んだ。呂副団長は「全くそうだと思う。もともと賛成していたが会見は考えていなかった。3週間ほど前に日本の方といろいろ話す中で“態度表明したら”という話があった」と説明。出席者の日程を調整した結果、ここまでずれ込んだのだという。
開催都市決定の投票権を持つIOC委員は韓国にも2人おり、民団は韓国与野党の有力者に「日本に出てもらったほうがいい」と働きかけてきたという。その狙いは朴副団長の「われわれは日本生まれ。経済基盤も日本にある。住む日本がよくならないと」という言葉に集約される。頭の中には「1964年の東京五輪以降、あらゆるものが発展して雇用も増えた。韓国自身も88年の五輪以降、すばらしい発展を遂げた」という過去の事績が念頭にあるのだろう。
東京開催が決まった暁に訪れる好況に、約50万人の在日韓国人も乗らない手はない。ただし、前回16年の招致の際は「こうした動きはしていません。日本経済が厳しい中で、五輪が決まれば大きな起爆剤になるので、初めて声をあげた」。その慎重な姿勢の背景にあるのが、ヘイトスピーチなどで顕著な日本での反韓感情の高まりだ。
東京・大久保や大阪・鶴橋のコリアンタウンで「口にするのもはばかられるようなことをがなりたてる。商売に支障が出ている」と呂副団長。事前に民団の総意として、“東京招致を応援した”という事実があれば、五輪景気に便乗する上で“アリバイ”になり得る。
一方で韓国国内では「皇族の招致活動は違憲の疑い」(朝鮮日報)、「期限内に汚染水問題を解決できなければ、招致を自ら放棄せよ」(中央日報)などと、大手メディアが東京開催に異を唱え続けている。本紙が本国と民団との温度差をただすと、呂副団長は「どういう意見をいおうが、僕らは賛成です」ときっぱり。この会見を母国メディアがどう報じるかも見ものだ。
「靖国神社に来るような極右の議員には、何をいわれるかわからない」と呂副団長は苦笑いするが、たとえ底意が“我田引水”であれ、母国の反感を買うリスクを承知で「東京招致に賛成」と表明した勇気は、一定の評価に値するといえよう。
■「サッカー女子W杯も共催したい」
会見の席上では民団側から、サッカー女子ワールドカップ(W杯)を「日韓で共催したい」という仰天プランまでブチ上げられた。
「なでしこジャパン」の2011年ドイツ大会の優勝に刺激を受けた崔会長は、大韓体育会に「ぜひ韓国でも女子サッカーの振興を」と申し入れ。その過程で持ち上がった話だという。
15年大会はカナダで開催予定。その次の19年大会について「韓国の女子サッカー協会にも、男子が(02年日韓大会で)共同開催したんだから、ぜひ女子も共同開催することで話し合いをしてください」と要請し、現在も協議中だというのだ。
一方の日本側は02年大会の共催に不満もあり、「今度こそ単独開催を」というのが本音。“日本の中の韓国”という、思わぬところから降ってわいた共催案にどう応えるのか。
5日、都内で開かれた「東京招致に関する民団の総意について」と題された会見には、日韓30人余の報道陣が集まった。
民団側からは中央本部の呂健二、朴安淳両副団長と在日本大韓体育会の崔相英会長が出席。呂副団長は「(民団の)構成員の85%は日本生まれ。自分が生まれたところもふるさと。そこが発展してみんなが元気になるのは大変うれしいこと。韓国と日本の間は非常に微妙な関係だが、こういうときに一緒になって“東京五輪に賛成だ”という気持ちを伝えることで、両国の関係を改善するお手伝いになればいい」と趣旨を述べた。
質疑応答では、当然ながら「表明がギリギリすぎる」という指摘が飛んだ。呂副団長は「全くそうだと思う。もともと賛成していたが会見は考えていなかった。3週間ほど前に日本の方といろいろ話す中で“態度表明したら”という話があった」と説明。出席者の日程を調整した結果、ここまでずれ込んだのだという。
開催都市決定の投票権を持つIOC委員は韓国にも2人おり、民団は韓国与野党の有力者に「日本に出てもらったほうがいい」と働きかけてきたという。その狙いは朴副団長の「われわれは日本生まれ。経済基盤も日本にある。住む日本がよくならないと」という言葉に集約される。頭の中には「1964年の東京五輪以降、あらゆるものが発展して雇用も増えた。韓国自身も88年の五輪以降、すばらしい発展を遂げた」という過去の事績が念頭にあるのだろう。
東京開催が決まった暁に訪れる好況に、約50万人の在日韓国人も乗らない手はない。ただし、前回16年の招致の際は「こうした動きはしていません。日本経済が厳しい中で、五輪が決まれば大きな起爆剤になるので、初めて声をあげた」。その慎重な姿勢の背景にあるのが、ヘイトスピーチなどで顕著な日本での反韓感情の高まりだ。
東京・大久保や大阪・鶴橋のコリアンタウンで「口にするのもはばかられるようなことをがなりたてる。商売に支障が出ている」と呂副団長。事前に民団の総意として、“東京招致を応援した”という事実があれば、五輪景気に便乗する上で“アリバイ”になり得る。
一方で韓国国内では「皇族の招致活動は違憲の疑い」(朝鮮日報)、「期限内に汚染水問題を解決できなければ、招致を自ら放棄せよ」(中央日報)などと、大手メディアが東京開催に異を唱え続けている。本紙が本国と民団との温度差をただすと、呂副団長は「どういう意見をいおうが、僕らは賛成です」ときっぱり。この会見を母国メディアがどう報じるかも見ものだ。
「靖国神社に来るような極右の議員には、何をいわれるかわからない」と呂副団長は苦笑いするが、たとえ底意が“我田引水”であれ、母国の反感を買うリスクを承知で「東京招致に賛成」と表明した勇気は、一定の評価に値するといえよう。
■「サッカー女子W杯も共催したい」
会見の席上では民団側から、サッカー女子ワールドカップ(W杯)を「日韓で共催したい」という仰天プランまでブチ上げられた。
「なでしこジャパン」の2011年ドイツ大会の優勝に刺激を受けた崔会長は、大韓体育会に「ぜひ韓国でも女子サッカーの振興を」と申し入れ。その過程で持ち上がった話だという。
15年大会はカナダで開催予定。その次の19年大会について「韓国の女子サッカー協会にも、男子が(02年日韓大会で)共同開催したんだから、ぜひ女子も共同開催することで話し合いをしてください」と要請し、現在も協議中だというのだ。
一方の日本側は02年大会の共催に不満もあり、「今度こそ単独開催を」というのが本音。“日本の中の韓国”という、思わぬところから降ってわいた共催案にどう応えるのか。
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