2020年を彩るのは東京五輪だけではない。日本書紀が完成して1300年という節目の年でもある。古事記成立1300年だった去年は数多くの関連本が出版され、ブームの観があった。7年後はどうなるか▼記紀神話ゆかりの地はそれぞれ知恵を絞る。奈良県の手がける事業は20年までぶっ続けである。古(いにしえ)を旅する人向けの道案内「名所図会(めいしょずえ)」はなかなか立派だ。倭(やまと)は国のまほろば。シルクロードの終着点。様々に形容される古都は気合が違う▼「記」の節目が過ぎ、さあ次は「紀」かと思いきや、そうでもないらしい。担当者によると、来年までは記を中心に展開する。15年ごろから紀に比重を移し、万葉集にも目配りする。最後の2年で集大成のイベントを企画するという▼天孫降臨神話の地、宮崎県も9年越しの事業を進めている。準備不足やPR下手も指摘されるが、奈良県はゴールまで一緒にやりたいと考えている。職員の人事交流などをしながら手を携える▼島根県は去年、「神話博」を催したが、20年をにらむ構想はないと聞く。因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)で有名な出雲神話は、記の上巻の4分の1を占める。ところがなぜか紀の本文には出てこない(三浦佑之〈すけゆき〉『古事記を読みなおす』)。これでは張りあいもないか。二つの書の違いに興味が湧く▼記紀つながりでいえば、伊勢神宮のある三重県が東京の日本橋に近く情報発信の拠点を開く。奈良と島根のショップも近所。お国ぶりを比べながら神話の世界に遊ぶのも楽しそうだ。