人面土器:縄文晩期、まわし飲み用?青森・五所川原で出土
毎日新聞 2013年09月03日 18時43分(最終更新 09月03日 19時40分)
青森県五所川原市教委は3日、同市相内の五月女萢(そとめやち)遺跡で、底部が人の顔の形をした縄文時代晩期の土器が見つかったと発表した。顔の上部は欠けていて、幅約12センチ、高さ約7センチ。鼻の部分が出っ張っているため平面に置くことができない。調査した弘前大人文学部の関根達人教授(考古学)は「祭祀(さいし)や儀礼の時に、酒や動物の血などの特殊な液体をまわし飲みするような特別な器だったのではないか」と推測している。関根教授によると、人面付き土器は全国的にも報告例がないという。【伊藤奈々恵】
同遺跡は津軽半島北西部の十三湖北岸にある縄文時代後期〜晩期(3500〜2300年前)の遺跡。市教委が2010年から発掘調査を続けてきた。
人面付き土器は今年7〜9月の調査で、土器の破片やヤマトシジミの貝殻などが積もった遺構から出土。2600〜2500年前ごろのものと見られる。表面には赤色の顔料が残っていた。この顔料は漆と混ぜて塗られることが多く、この土器にも漆が塗られていたと見られる。
関根教授によると、人の顔を模した土製の仮面の「土面」は各地で見つかっているが、器の底が人面になった土器は報告例がないという。「顔の表現は土面や土偶に似ている。精巧に作られており、一級品だ」と評価している。
今回の調査ではほかに、埋葬された人骨2体、かんざしなどの骨角器、イヌやイノシシ、クジラの骨なども見つかった。また、首飾りに使用される玉の原石(緑色凝灰岩)や、未完成品も見つかっている。市教委は「この遺跡周辺で玉作りをしていたと考えられる」としている。
市教委は8日午後1〜3時、一般向けの現地説明会を開く。問い合わせは五所川原市教委・十三湊発掘調査室(0173・35・2111、内線4030)。