ヤクルト−広島 1回裏2死一塁、左中間に54号2ランを放つバレンティン。捕手石原=神宮球場で(北田美和子撮影)
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◇広島9−3ヤクルト
広島の前田健が6イニング3失点でリーグ最多に並ぶ13勝目。打線は0−2の2回に石原の2点左前打で追い付き、3回に木村の適時打と石原の3ランで4点を勝ち越した。ヤクルトはバレンティンの54号2ランで先制したが、松岡が崩れた。
高々と上がった打球がバックスクリーン左の最前列に飛び込んだ。1回2死一塁、ヤクルトのバレンティンが前田健から54号2ラン。歴代4位のバース(阪神)に並び、聖域といわれてきた王貞治(巨人)、タフィ・ローズ(近鉄)、アレックス・カブレラ(西武)の持つ年間55本塁打の日本プロ野球記録にリーチをかけた。
「手を出してはいけない高さ。ラッキーとしか言えないが、バックスピンが効く高さにバットを入れることができた」とにっこり笑った。手が出たのはいわゆる『クソボール』。5球目。捕手の頭の高さに来た151キロのストレートだった。そのままスタンドに打球が吸い込まれると球場は敵味方関係なく驚きと興奮に包まれた。
52号を放った後は5試合にわたって足踏み。8日の中日戦(ナゴヤドーム)で一発が飛び出し、プレッシャーを踏み越えたように2試合連発が出た。「54号が出た後、偉大な3人にあと1本で肩を並べると思ったら、ひしひしと緊張感が高まってきた。ここまで来たら絶対達成したい」と再びギアがトップに入った。
願ってもないニンジンが目の前にぶら下がった。クラブハウスに引き上げると、サプライズが待っていた。衣笠球団社長から「新記録を達成したらボーナス500万円! 頑張れ」。出来高契約には入っていなかったご褒美で激励された。
休養日だった9日は、午前中に髪を切り、昼は球場近くのレストランで同郷の楽天・ジョーンズと一緒にランチ。夜には大阪で行われた米国人ラッパー、ピットブルの日本ツアー公演を楽しんだ。最終の新幹線で帰京するという強行軍ながら「コンサートは素晴らしかった」。いいリフレッシュになった。
記録挑戦に力んでしまい、大振りやボール球に手を出してスイングが崩れかけた。が、そこで修正。「気付いて元のコンパクトなスイングに戻せたのが良かった。後は冷静に、自分の気持ちをコントロールするだけ」。日本タイ記録の55号、さらに日本球界では前人未到となる56号の新記録樹立も時間の問題だ。(竹村和佳子)
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