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幸福大国デンマークのデザイン思考
【第2回】 2013年2月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
大本 綾

デンマーク人は本当に幸せなのか?
住んで初めてわかった「幸福感」の違い

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幸福大国の国民の不思議

 心地よい空間を作るのが上手なデンマーク人。基本的にいつも落ち着いているのですが、そんな彼らでも普段からとても気にしていることがあります。そこに気づいたのは、日常会話の些細なことからでした。

 始めにおかしいなと思ったのは、彼らを褒めたときです。通常の会話で日本なら友達を褒めることはよくあることでしょう。アメリカに留学していたときは、自信を持っている人が多いので褒めると、とても嬉しそうにどうして上手くいったのか話してくれます。

 ただし、デンマークではまったく違いました。先日、デンマーク人のチームメイトがリーダーシップをとって、チーム構築を行う上で大事なことを話し合う機会を作ってくれました。そこで学校が終わってから「素晴らしいリーダーシップだったね!」と声をかけたのですが、そんなに嬉しそうな顔もせずに「ありがとう」、の一言だけで会話が終わってしまったのです。

 たまたまかと思っていたら、別の人とも同じようなことが起きました。それはまるで、褒めたら会話が途切れてしまうような不思議な感覚でした。一度疑われているのかと思い、「I mean it!(本当よ!)」と言ってもその思いがなかなか通じません。

 また、こんなこともありました。あるときクリエイティブリーダーシップの授業を受けていたときのことです。「最高の自分を目指しなさい」と講師が言った途端、多くのデンマーク人の手があがりました。

 ある女性は、「最高という言葉は、勝者と敗者を作ってしまうので問題ではないかと思う」、と言います。驚くほど過敏に反応するので、授業が終わって別のデンマーク人に聞いてみると、「ベストという言葉は好きじゃない。ストレスだもの。十分という言葉が好き。最高にはなりたくない」と言うのです。

 日本では、「最高」という言葉は日常的によく使う言葉です。「最高を目指しなさい」と言われても、ある程度聞き慣れているので、過敏に反応する人はあまりいないでしょう。特に学歴社会だと、最高を目指すことが幸せにつながると考える人も多いと思います。

 デンマーク人の不思議な行動には違和感を感じていました。ある日、仲の良いノルウェー人の友人が「最近どう?」と学校で話しかけてくれたので、思い切って気になることを打ち明けました。すると、彼があることを教えてくれたのです。

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キーワード  留学
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<内容紹介>
紳士服チェーン「しきがわ」の営業マン高山昇は、陰謀家の阿久津専務の逆鱗に触れ、新設の経営企画室に異動に。だが、高山は持ち前の正義感と行動力を武器に、室長の伊奈木とコンサルタントの安部野の助力を得ながら、社長の補佐役として成長。社内の地雷を踏みまくりながら経営改革に取り組姿を描くビジネスストーリー。

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大本 綾 [おおもと・あや]

1985年生まれ。立命館大学産業社会学部を卒業後、WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドに入社。大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わる。プライベートでは、TEDxTokyo yz、TEDxTokyoのイベント企画、運営に携わる。2012年4月にビル&メリンダ・ゲイツ財団とのパートナーシップによりベルリンで開催されたTEDxChangeのサテライトイベント、TEDxTokyoChangeではプロジェクトリーダーを務めた。デンマークのビジネスデザインスクール、The KaosPilotsに初の日本人留学生として受け入れられ、2012年8月から留学中。


幸福大国デンマークのデザイン思考

ビジネスデザインスクール留学ルポ

世界で最も刺激的なビジネススクールとして注目されるデンマークの「The Kaospilots」に、初の日本人留学生として受け入れられた大本綾さん。彼女が世界のデザインスクール最前線での学びをリアルタイムで書き記す「留学ルポ」連載。日本ではまだ馴染みの薄いデザイン思考だが、近年、欧米ではビジネスや社会に変革を起こす発想法として、俄然注目を集めている。
また、デンマークは幸福大国として知られているが、その実態はあまり日本人には馴染みがない。彼らの価値観から教育、公共デザイン、ライフスタイル、社会福祉、家具、ファッション、広告、食事、子育てまで、現地で取材しながらレポートしていく。月1回掲載予定。

「幸福大国デンマークのデザイン思考」

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