ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
幸福大国デンマークのデザイン思考
【第2回】 2013年2月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
大本 綾

デンマーク人は本当に幸せなのか?
住んで初めてわかった「幸福感」の違い

previous page
6
nextpage

平等に価値を置く国民の就職活動

 褒め言葉や「最高」という言葉がジャンテロウのメンタリティーに反し、平等ではない懸念すべき状況を作ってしまうのであれば、時には自分が人よりも優れていると証明しなければいけない就職活動のときはどうなるのでしょうか。コペンハーゲンのメンタルクリニックで管理課長として仕事をしているトーラさん(30歳女性)に聞いてみました。

トーラさん

 デンマークで就職活動をするときにどうやって自分を売り込みますか?

 「私はこの仕事にとても興味がある、と言うわ。それから有言実行で一生懸命働きますから、信じて下さいとね。あ、でもそれはきっと他の人も言うわね。あとはその組織が意識している問題について話すわね……」

(米国留学の経験から)アメリカでは「他の誰もやらなかったけど、私が一生懸命頑張ってプロジェクトの成功に導きました!」と自信満々に言う人が時々いますが、デンマークではどうですか?

 「私たちはそんな風には絶対に言わないわ。そんなこと言ったら、きっとジャンテロウで、自分のことを考えすぎじゃないかしら、ちょっと落ち着きなさいよ、言う前に見せて、と言われるでしょうね。自分のことを売り込むのはとても大変なの。仕事を探しているときは苦労したわ。

 他にもたくさん頭のいい人がこの仕事をほしがっているというのに、なぜ彼らが私を選ぶべきなのかってね。とても大変だったし、嫌いだった。友達もみんな嫌いって言ってたし、同じように苦労してたわ」

 あなたにとっての成功とはなんですか?

 「とても難しい質問ね。……幸せでいることだと思う。それって難しいことだから。どうやって幸せになるの?お金持ちで、世界一クールな仕事に就けるかもしれない。でも、幸せを感じられないなら、それは成功じゃない。成功と言えるのかもしれないけど、永遠に続くものではないし、いい人生を生きているとは言えないわ」

次のページ>> 幸せの未来を描く
previous page
6
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
キーワード  留学
戦略参謀

戦略参謀

稲田 将人 著

定価(税込):1,680円   発行年月:2013年8月

<内容紹介>
紳士服チェーン「しきがわ」の営業マン高山昇は、陰謀家の阿久津専務の逆鱗に触れ、新設の経営企画室に異動に。だが、高山は持ち前の正義感と行動力を武器に、室長の伊奈木とコンサルタントの安部野の助力を得ながら、社長の補佐役として成長。社内の地雷を踏みまくりながら経営改革に取り組姿を描くビジネスストーリー。

本を購入する

DOLSpecial



underline
ダイヤモンド社の電子書籍



大本 綾 [おおもと・あや]

1985年生まれ。立命館大学産業社会学部を卒業後、WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドに入社。大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わる。プライベートでは、TEDxTokyo yz、TEDxTokyoのイベント企画、運営に携わる。2012年4月にビル&メリンダ・ゲイツ財団とのパートナーシップによりベルリンで開催されたTEDxChangeのサテライトイベント、TEDxTokyoChangeではプロジェクトリーダーを務めた。デンマークのビジネスデザインスクール、The KaosPilotsに初の日本人留学生として受け入れられ、2012年8月から留学中。


幸福大国デンマークのデザイン思考

ビジネスデザインスクール留学ルポ

世界で最も刺激的なビジネススクールとして注目されるデンマークの「The Kaospilots」に、初の日本人留学生として受け入れられた大本綾さん。彼女が世界のデザインスクール最前線での学びをリアルタイムで書き記す「留学ルポ」連載。日本ではまだ馴染みの薄いデザイン思考だが、近年、欧米ではビジネスや社会に変革を起こす発想法として、俄然注目を集めている。
また、デンマークは幸福大国として知られているが、その実態はあまり日本人には馴染みがない。彼らの価値観から教育、公共デザイン、ライフスタイル、社会福祉、家具、ファッション、広告、食事、子育てまで、現地で取材しながらレポートしていく。月1回掲載予定。

「幸福大国デンマークのデザイン思考」

⇒バックナンバー一覧