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『裁判官生活、退官、信仰について考えたこと』レポート

聖書には、『人を裁くな』と書いてあるのに、クリスチャンである前田さんはどうして裁判官になったのですか?とよく聞かれるそうです。
VIP定例会も154回を迎え、今回の参加者は6割近くが法曹関係者という顔ぶれ。
10代の学生さんから70代までの老若男女が集まり、前田さんのお話に興味津々で耳を傾けました。


第一部・・・裁判所関係者による『ピュアな賛美』
「今日は前田先生の露払いをさせていただけること、感謝しております。私のはじめての赴任先が旭川で当時、札幌高裁の事務局長をされていたのが前田先生でした。おかげさまで大自然のなか夢の三年間送らせていただきました。その節はありがとうございました」
と、谷有恒さんが挨拶。

『ピュアな賛美』と題して、谷さん率いる法曹関係者が3曲披露されました。

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1.聖歌582番 神の御子にますイエス
2.スピリット ソング
3.聖歌118番 神の賜う愛

ピアノ、歌/谷有恒(大阪地裁)
キーボード/小林正和(東大阪簡裁)
フルート/直江泰輝(大阪地裁)
ピアノ/網田圭亮(大阪地裁)

間奏では、優美なフルートが加わり、神聖な雰囲気を醸し出しました。

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第二部…「裁判官生活、退官、信仰について考えたこと」

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大阪江戸堀公証役場公証人 前田順司氏のプロフィール
1951年 札幌市で生まれる。
1973年 東北大学法学部卒業
1975年 大阪地方裁判所において判事補として任官
2011年 東京高等裁判所部総括で退官
2012年 大阪江戸堀公証役場公証人任命

裁判官時代は、主に民事事件を担当した民事裁判官、その中でも東京地裁において一時医療訴訟を専門に扱う。結婚している二人の息子の父、息子夫婦もクリスチャンホーム、孫1人。1973年受洗、日本同盟キリスト教団松戸福音教会会員、現在は、武庫之荘めぐみ教会に出席。趣味は、釣りきち、下手なテニス、近くの公園の土地を借りての園芸。


映画・TVドラマに見る裁判官のイメージ
皆さんが持っている裁判官に対するイメージはどんなものでしょうか?
私は36年間の裁判官生活を送り、2年前に退官しました。
裁判官は、憲法で独立が保障され、判断の自由も保障されていますが、
そのぶん仕事の責任は重く、生活のありようにも規律が求められます。
もしかすると、裁判官は堅苦しく冷たい人格という印象を持っているのかもしれません。
『Shall we ダンス?』で有名な周防正行監督による映画『それでもボクはやっていない』では、
痴漢冤罪がテーマに取り上げられ話題を集めました。名脇役の小日向文世さんが裁判官として登場し、憎々しいというか、本当に嫌らしい裁判官を演じておられました。
NHKでは『ジャッジ』という連続ドラマが放映され、西島秀俊さんが若き裁判官を演じました。大阪の裁判官が南の島に転勤になるという物語で、裁判官としての奮闘と成長、そして家族愛が描かれたあったかいドラマでした。このように、裁判官はいろいろな描かれ方をしています。現実の法律家のなかにおいても、理路整然とした人、人情豊かで涙もろい人など他の職業人と同じようにさまざまな個性を持った人がいます。


「信仰」と「裁き」について
2009年5月から国民が刑事裁判に参加して、裁判官といっしょに刑をどうするかを決定する裁判員制度が実施されています。聖書には、「人を裁くな」とあるのに、クリスチャンである前田さんはどうして裁判官になったのですか?とよく聞かれることがあります。
聖書の中に、姦淫を犯した女性を石打ちの刑に処そうとしたユダヤ人に対し、
イエス様が「罪のない者が最初に石を投げなさい」(ヨハネ8:3−11)と言われると、一人去り、二人去って、結局石を投げる者が誰もいなくなったという一節があります。
また一方で、イエス様がパリサイ人から当時ローマの属州であったユダヤ人がカイザルに税金を納めるべきでしょうか?と問われた時、イエス様は、ローマ帝国の硬貨のカイザルの絵を見せて「カイザルの物はカイザルに、神の物は神に返しなさい」と、答えられました。
私は、聖書が裁判という世の中の仕組みを否定しているとは思いません。むしろ、神様を信じ自分の罪を自覚した者が裁判官になることが神様の御心にかなうと考え、裁判官の道を選びました。

クリスチャンが裁判員の候補に選ばれた時、どうすればいいのか?
イエス様が十字架の死によって私たちの罪をつぐなわれた救い主であり、その後、復活されたというのは聖書の根本であります。その他の問題は、その人の信仰の姿勢や深度によってさまざまだと考えています。例えば、マザー・テレサのように献身的に人を愛し、仕えた人は、人に対して死刑はおろか、刑を科すことになる裁判員にはならないように思います。
もし、自分が候補に選ばれたのであれば、自分のクリスチャンとしての信仰を証して辞退を希望する道もあるでしょう。しかし、重大で卑劣な事件が起きるたびに、「あのような犯罪人は死刑にするべきだ」と思うような方なら、裁判員として国民の義務をはたすべきだと思います。


裁判官のプロ意識について
裁判官の基本的な考え方も時代により、ずいぶん変わってきました。
私は1970年代に裁判官になるための研修を受けたのですが、当時の指導教官からは、
「裁判官は、世の中の人々の考え、マスコミの反応に左右されてはならない。裁判とは、法律と法廷で提出される証拠だけに基づき淡々と行なうものであり、それが裁判官の心である」と教えられました。

十数年前から、裁判官が担ってきた司法権も憲法に基き、国民主権によって国民から負託された権力であり、裁判も国民の意見や考え方を尊重するように行なうべきであるとの考えに変わってきています。もちろん裁判も時代によって変わっていくものですが、それが極端に走ると、裁判の結論を国民に迎合する結果に導こうとするポピュリズムを招くことにもなりかねません。法律に従った社会を貫徹することは民主主義にとって重要なことですが、私自身にとって裁判官時代の後半は、これら2つの考え方をどのように調和すればいいのか難しい問題でありました。

戦後、闇米の売買を行なった者を「食糧管理法違反」の刑事裁判で裁くため、自らは食糧管理法による配給食だけを食べて栄養失調により死亡した山口裁判官がいらっしゃいます。これは、自らの命をかけてまで裁判を行なうという精神です。私のような戦後生まれの裁判官には考えられないプロ意識と言えます。私が現職だった頃、当時の最高裁判所長官が裁判官がプロ意識を失ってサラリーマン化することを恐れ、「裁判官の在り方研究会」なるものを発足し、全国の裁判官の職業意識を高めるための協議会が持たれました。
クリスチャンとしてお話すると、「神様は、神様への捧げものとして最も良い物を持ってきなさい。傷のある物を持ってきてはいけない」と命じられています。私の気持ちとしては、神様から与えられた仕事に対して最も良い物を捧げるという姿勢で仕事にのぞんできました。


裁判官生活での私の楽しさ
裁判官には約3年ごとに転勤があり、それを「官費旅行」と呼ぶことがあります。
私たち家族も全国各地を点々とし、その地方の風情を味わうことができました。
裁判官としての何よりの喜びは、裁判官の年齢にかかわらず一票を持ち、判決を決める際には自分の意見を堂々と述べ、決定することができるというところにあります。また、裁判所は法務省の監督を受けることのない独立したところであり、いかなる拘束も受けません。
私の裁判官生活のなかで最も充実していたのは、東京地裁の裁判長として医療過誤事件を集中的に取り扱う「医療集中部」を立ち上げた頃のことです。どのような医療過誤事件の審理が望ましいか弁護士や大学病院の医師の方々と協議を重ね、いろんな意見をうかがいました。裁判官の仕事はどうしても法廷での審理という狭い世界だけに身をおきがちですが、この時は外との接触が多く、新鮮な経験をさせてもらいました。


自由な生活に憧れて
2011年8月に36年間務めた裁判官を退職し6か月間、無職の生活を送りました。
この期間に1ヶ月間の気ままなイタリア旅行や、長男夫婦が赴任するチリへ遊びに行ったりしました。裁判官というしがらみを離れ、さあイタリア人のように陽気で自由な生活を楽しもうと思っていたのです。しかし、現実はどこにも帰属していないことへの漠然とした不安が募り、「みんなが働いているのに、遊んでばかりでいいのか」という後ろめたさに悩まされました。聖書には、クリスチャンは全ての事柄から自由であるとありますが、今まで積み重ねてきた世俗的な考え方にどっぷり浸かっている自分に気づかされる日々だったのです。それから抜け出すことは今なお難しいことです。

これまでを振り返ってみると、私は裁判官として順調でクリスチャンとしても祝福され、職場関係や家族関係、そして経済的にも恵まれてきました。それゆえ神をほめたたえることができていたのかもしれません。聖書の「心の貧しい者は幸いです。悲しむ者は幸いです」といっている本質的な事柄をよく理解していなかったのです。
今はあまり順調だとは言えませんが、それゆえ聖書の原則に立ち返って物事を考える大切さを教えられています。しかし、神様は,全てのことを益と変えてくださるお方です。裁判官の退職は、自分がクリスチャンとして何を大切にして生きるのか、どういう価値観で生きるのかを考え直す良い機会であったと思います。


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テーマ:聖書


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