(cache) ファシズムと放射能汚染の中の東京五輪

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ファシズムと放射能汚染の中の東京五輪 - IOCの買収

昨日（9/8）のサンデーモーニングで、2020年の東京五輪が決まった件について、寺島実郎が、「これで戦争のできない国になった」と感想を述べていた。7年後に五輪開催を控えた立場になったから、近隣国との軍事衝突は起こさないだろうという、五輪安全ブレーキ論の見方だったが、あまりに発想が楽観的すぎるように思われる。1980年のモスクワ五輪の経験がある。1979年のアフガン侵攻を踏み止まらせる拘束装置として機能しなかった。2020年の東京五輪が、戦争のためにボイコットを受ける事態は十分考えられる。仮に中国と交戦状態に入っていたとき、戦闘が尖閣周辺で限定される状況であれば、ボイコットは中国と北朝鮮の2国に止まり、多くてもそれにアフリカの数か国が加わる程度だろう（台湾と韓国は不確実要素だが）。今から7年後を考えると、日本は改憲の壁を突き破っている蓋然性が高く、今よりももっと極右の全体主義国家になっている。五輪は、寺島実郎的な平和の方向へ誘導するのではなく、むしろ、五輪が日本のファシズム化を推進させる梃子となるのではないか。つまり、私の中の2020年の東京五輪は、かぎりなく1936年のベルリン五輪に近いイメージで、ファシズム国家が国威発揚と戦意鼓吹のために催行する狂気の政治祭典が目に浮かぶ。7年後に開催される東京五輪の看板は、この国の右翼ナショナリズムをエンカレッジさせ、さらに獰猛に増幅させるに違いない。

五輪をめざして「国民が一つになる」運動の盛り上げが、政権の右翼路線への国民の統合と翼賛を棹さすことになる。中国・韓国を敵視する排外主義の傾向を強め、逆にそれへの反省や批判の意識を弱め、反戦派を異端化・孤立化に導き、抑圧・排除する方向に作用することは確実だ。（中国との）戦争はその延長上に起きる。だから、寺島実郎の言う「東京五輪＝平和装置」論は、願望が口から出ただけの安易な認識で、政治学的にリアルで正確な診断とは言えない。昨年のロンドン五輪の後、NHKを始めとするマスコミは、神経衰弱になるほど、日の丸を打ち振る大衆の映像を見せ、東京五輪を待望する熱狂的気運を演出し、五輪招致のプロモーションで画面を埋めた。その結果、東京五輪への国内支持は急速に上昇した。その国民的気運の高揚は、尖閣をめぐる中国との対立激化とパラレルであり、中国に対する反感と憎悪の奔流とセットの社会現象として進行した。そうして、安倍晋三の右翼自民が選挙で圧勝し、橋下徹の極右維新が台頭した。東京五輪は「国民が一つになる」シンボルであり、その成功への道程は、さらに過剰に「国民を一つにする」運動の日々である。東京五輪を成功させるため、国民は、政府とNHKの訓導に従って「一つになる」行動を要請される。日の丸を振って騒ぐ集団行動を督励される。個人は、その場に嬉しそうな顔をして参加し、興奮して喚声を上げる行為を催促される。

それはまるで、北朝鮮の人民群衆が沿道で指導者の車列を迎え、両手にボンボンを持って打ち振り、熱狂的に奉祝する絵のようで、まさにナショナリズム発揚の機会であり、国家の全体行事に個人を統合し動員する政治だ。最近のNHKは、そういう放送ばかりが無闇に多い。さて、深刻なのは汚染水の問題である。マスコミ報道は、安倍晋三がプレゼンテーションで汚染水問題について首尾よく説明したから、IOC委員たちが納得し、東京が選考で勝利を収め得たのだと言っている。懸念されていた汚染水問題を克服し、不安を払拭したのは安倍晋三の手柄だとして褒め称え、安倍晋三を英雄扱いして賛美している。私はテレビを見ながら蒼白になったが、9/8のマスコミはその翼賛報道一色だった。汚染水問題は、安倍晋三や猪瀬直樹が言っているように、「何も問題なく安全なのに、風評が立って迷惑している」問題となった。マスコミ報道が、「汚染水は福島原発湾内で完全にブロックされていて、外洋には漏れ出ていない」という安倍晋三の嘘八百の主張を正当化し、それを既成事実化して固めた。山本浩を筆頭に。ネットの中では、安倍晋三の嘘吐きを非難する声も上がっているけれど、マスコミ報道では、会場の質疑での安倍晋三の反論によって、IOC委員の汚染水問題への「誤解」が晴れ、東京への支持に結びついたという認識になっている。そういう「成功物語」になった。これは恐ろしいことだ。本来、ブエノスアイレスで問われたのは、2020年の五輪開催地でなかった。

それは福島原発の汚染水問題だった。太平洋の放射能汚染が歯止めなく深刻に進んでいる問題。それに対して日本政府が有効な対策を示さず、世界に無責任な態度をとり続けている問題。それこそが世界の人々の真摯な関心事で、首相はじめ何人も閣僚が出席する国際会議の場で、世界が日本政府に説明を求めて対応をコミットさせなければならない問題だったのだ。本来、五輪開催地決定は二の次の問題だった。日本の招致団に、記者会見で各国プレスが汚染水問題の質問を浴びせたのは、この焦眉の緊急問題に、日本から何も正確な説明が与えられず、情報の発信がなかったから、日本代表たる彼らに説明責任が求められたのである。東京の五輪誘致がかかり、世界が注目する場であれば、責任ある説明が得られるだろうと記者は期待したのであり、言わば、世界の市民の関心と不安を代弁して質問がぶつけられたのだ。ところが、安倍晋三と猪瀬直樹は、それに対して、「汚染水問題は根拠なき風評である」という門前払いの結論で臨んだ。東京を敗北させようとする者の謀略だと言わんばかりの態度で、風評を信じるなと一蹴する策に出た。これには呆れ果てたが、もっと驚いたのは、IOC委員が、「了解しました」とばかり、選考で東京に票を流し込んだことだ。手の込んだ出来レースを直観し、その裏にある壮絶な贈収賄を想像せざるを得ない。あのプレゼンテーションの場で、安倍晋三は嘘八百を並べて、「安全、安心」を保証している。だが、少しでも汚染水の現状に関心を持つIOC委員なら、「湾内に完全にブロック」などという断言が信用できないことは簡単に分かるはずだ。

二回目の投票で、欧州の票（一回目にマドリードに入れた）はことごとく東京に流れ込んだ。欧州のIOC委員こそ、最も放射能汚染に懸念を持ち、影響の悲惨さを理解している環境意識の高い者たちである。彼らが、NATOの一員でありEU加盟を準備中の、言わば仲間であるトルコのイスタンブールではなく、欧州の市民がテレビ中継で競技観戦するには最も都合の悪い東京を選んだのは、報道で解説されている表面上の理由 - コンパクトな計画だとか、財政的に万全とか、プレゼンの内容が佳作とか - からだけではないだろう。昨夜（9/7）、NHKの7時のニュースを見ていたら、実に意外なことに、記者から堂々と招致成功の裏話が披露されていた。英国人コンサルタントを雇い、IOC委員の人脈に切り込んだことが、成功の第一の要因だと記者は語った。その男は、下馬評はパリで決まりだった2012年大会をロンドンに逆転勝利させ、ソチやリオの招致も成功に導いた凄腕のキーマンだという紹介だった。名前も顔も詳しく出た。つまり、この男を通じて莫大なカネをバラ撒き、買収で招致を奏功させているのだ。9/6の報ステだったか、マドリード猛追の情勢が言われる中、日本の関係者が絶対の自信を示していた事実が報道され、聞きながら、何か妙だなと私は不審に思った。普通なら、こういうとき、外国の内情に疎く、情報を取れずに振り回される日本の関係者は、狼狽して焦燥を口にするものである。ところが、この招致関係者は絶対の勝利予想で応じた。何か根拠がなければ、そういう票読みの確信はできない。カネだ。

疑って深読みすれば、最終プレゼンテーションまでレースの行方は見えないという話とか、終盤のマドリード猛追劇とか、福島原発の汚染水問題の騒ぎとかも、何やら「出来レース」全体の周到な演出のような気がしてくる。二回目投票での、東京が60票でイスタンブールが35票という大差は、そうした生臭い推理によってでしか合理的な解の仮説を得られないものだ。今回の決定は、日本だけでなく世界に禍根を残すものである。欲に目が眩んだIOC委員が、地球の海洋環境と世界の人々の健康を売り渡した悪行だ。許されない卑劣な行為である。誰でも予想できることだが、このことによって、日本政府は徹底的に福島の汚染水問題を情報統制する。厳重な報道管制を敷き、正確な現状と実態が外に出ないようにする。安倍晋三がコミットした「アンダー･コントロール」を、権力で強引に「実現」する。マスコミに出す線量値を捏造する。隠蔽工作する。そもそも、タンクの汚染水漏れも、海への汚染水流出も、東電が発見して東電が発表している「事実」である。東電が7月から汚染水問題を騒ぐようになったのは、一つは、政府に早く予算を出せと迫る思惑と、もう一つは、汚染水を海に棄てる環境（＝世論の容認）を徐々に地均しする目的である。その二つの意味がある。東電が、国民のために、国民のことを考えて、汚染水情報を出しているわけではない。政府を脅し、世論を宥め、嘘を言って問題解決に当たっているよう偽装しているだけだ。記者は福島原発に張り付いて取材しているわけではない。マスコミは、ただ東電と政府の発表を流しているだけにすぎない。ということは、現場を仕切る東電が情報を隠匿すれば、「安全、安心」のままなのである。

規制庁の田中俊一は、9/2の外国人特派員向けの会見で、「今後、基準値以下の低濃度汚染水は、海に流さざるを得ない」と公言した。この発言の恐ろしさに気づくためには、「低濃度」の意味をよく理解しないといけない。つまり、タンク中の高濃度汚染水に真水を混ぜて、すなわち低濃度汚染水にして、それをどんどん海に放出するという意味だ。単位容積当たりの濃度は低いが、量に制限を設けないから、放射性物質は全量が海に投棄されるのである。真水（地下水）で薄めて、それを太平洋に放出するという意味だ。テレビのニュース映像で、汚染水タンク群を上空ヘリから撮影した絵がよく登場するけれど、タンクの上蓋に赤い錆が出ていて、酸化腐蝕が進んでいるのが分かる。タンクからの汚染水漏れは、週を追う毎に、一基また一基と新たに発生しておかしくない。その情報が止まることは、実際には、事実が隠蔽されていることを意味するだろう。例の遮水壁工事も、単に9/7に五輪招致選考会があるから、それに合わせてエクスキュ－ズで出してきた代物の印象が強く、科学的（化学的・土木工学的）な実効性はまるで不明である。普通に考えて、原子炉建屋の四方の地盤をあれほど派手に掘削工事すれば、遮水壁の構造体を埋め込む前に、その周辺から地下水が建屋下に流れ込むか、流れ込む経路ができてしまうのではないか。いずれにせよ、事実は現場だけが情報を知る得るのであり、一次情報は常に現場を押さえる東電の専有物で、そこから国（経産省・規制庁）に伝えられ、国から二次情報がマスコミに流されて一般への報道となる。東電と政府が情報を止めればそれきりだ。

TWを見ていると、今後は世界が汚染水を監視しているから、政府は国際公約を果たすためにも、厳重な管理と対策をするだろうなどという声がある。脱力させられる。政治の認識が甘すぎると言わざるを得ない。これこそが、まさに民度の低さの証明であり、また右翼的バイアスの為せる悪弊であり、ファシズムを培養する温床なのである。

by thessalonike5 | 2013-09-09 23:30 | Trackback(1) | Comments(4)

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Tracked from 御言葉をください２ at 2013-09-10 11:07

タイトル : わたしもベルリンオリンピックを思い出していました
ファシズムと放射能汚染の中の東京五輪 - IOCの買収　わたしもヒトラーの時代のベルリンオリンピックを思い出していました。...more

Commented by にょスケ at 2013-09-09 20:07 x

さっそくネットでは素直に喜べない人を罵るような言説がはぼこってますね。誰も喜んでる一般人を批判したりしていないのに敏感に反応してしまうのは彼らも白々しさに気づいているからでしょうね。

Commented by 代理店 at 2013-09-10 05:42 x

Ａ>今後は世界が汚染水を監視しているから、、、するだろうなどという声
>これこそが、まさに民度の、、、
そのとおりです、そのとおりになって欲しいと、政府は国民に冀っているでしょう。さらに言えば、Ａの声とは政府そのもののツイでも全然不思議でない。上からの御上品な笑顔のファシズムとしてもピッタリです。これのバリエーションが溢れているかもしれません。ネット右翼のかなりは「戦争広告代理店」製で、舶来仕込みですねｗ　“過激な主張が極端にならぬうちにその中に浸潤し介入するＮudgeそっと気付かせる”理論の御上品さ。とんだ「リベラル」ですが国家がそれをやれば国家主義だし、外国への軍事介入が正当化される理論とさえなる。
オバマのブレーンのCassSunsteinは経済理論から進んで政府の大衆意識の政治操縦理論分野に進出したので、アメリカのゲッペルスだと悪罵されているとか。その嬶はコソボ、リビア、今度はシリア涎の、人道問題軍事介入主義のサマンサ・パワー国連大使だそうで、ビックリ。現在日本の最大の弱点は、主唱の欠如、統一戦線の欠如ですが、辺見庸言わなかったのでしょうか。

Commented by かまどがま at 2013-09-10 09:40 x

ネット内をあちこち見ていて、圧倒的な支持を得た東京開催は、買収もあっただろうが、原発を輸出、推進したい世界中の先進国が今後顕著になってくるフクシマとその周辺に及ぶ健康被害の実態を隠ぺいすることを望んでの、東京支持だったのではないかと思えてきました。
選手や訪れる人たちの安全より、原子力発電の繁栄を優先した。

Commented by 旅マン at 2013-09-10 22:31 x

爆笑した。実はあなたのblogを逆に読んだため、寺島批評を知らずにコメしたのだが、今こっちを読むと見事にシンクロしていたんで（笑）。
せっかくなのでもう少しコメします。
NHKの動きは、あなたの思い過ごしやバイアスではないですね。大越のアレ、露骨すぎる。
本来なら北海道地方版でもおかしくない駅と地域の触れ合いネタを｢愛国駅から幸福駅へ｣と特別に流す。伝説の宣伝大臣の手口に忠実で、正直キモかった。一見、和やかなニュース。幸福駅が主役なのに、ほんと枝葉な愛国駅をテロップに流し続ける。押し付けがましくない刷り込み。
産経などのデキアガッタ奴らより普通ぶったメディアの方がよほど恐ろしい。

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