【コラム】IOCが東京を選んだ理由

【コラム】IOCが東京を選んだ理由

 2020年夏季五輪は日本の首都・東京で開催されることが正式に決まった。18年に韓国の平昌で冬季五輪が開催されるのに続き、その2年後には東京で夏季五輪が開催されるわけだ。世界のスポーツ界でアジアの立場がそれだけ強まったことは前向きに評価できるし、韓国選手たちにとっても時差のない隣国で五輪が開催されるという点は有利に働くはずだ。また五輪直前に外国選手たちの合宿が韓国で行われるようになれば、経済的恩恵に預かることも期待できるだろう。

 しかし心の片隅では何かしっくりこないものがある。今回の招致競争における共通のテーマは「ハンディキャップの克服」だった。日本の東京、トルコのイスタンブール、スペインのマドリードの3都市はいずれも致命的な弱点を抱えていた。日本は東日本巨大地震に伴う福島第一原発での放射能汚染水漏れの問題、スペインは欧州財政危機、トルコは内政の不安定に加え隣国シリアでの内戦など周辺情勢に不安があった。

 今回アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された総会を最後に、これまで12年務めてきた会長職を辞任する国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長は先週の記者会見で、三つの都市が抱えるこれらの問題についての質問攻めにあった。ロゲ会長は「投票を目前に控えた今の時点ではコメントできない」と外交的な決まり文句で具体的な言及は避けながらも、最後に「20年五輪は今年ではなく7年後に開催される。大会が成功を収めるには、今から7年の間に起こるかもしれないあらゆる状況を考慮しなければならない」と述べた。

 これはある日本人記者が「五輪招致合戦でスポーツ以外の問題が注目されるのは悲しいことではないか」と質問したのに答えたものだ。ロゲ会長の答えには「五輪において政治的問題は徹底して排除すべきだが、招致の過程では政治・経済・社会的要素などあらゆる問題が考慮されるべき」との見方が含まれているようだ。

 東京開催決定直後、外信各社は「IOCは、数多くの国際大会を開催した経験があって財政面でも最も安定した東京を、2020年五輪の開催地に選んだ」と評価した。

 IOCは最近になって、14年にロシアのソチで開催される冬季大会、16年にブラジルのリオデジャネイロで開催される夏季大会の双方で頭を痛めている。ソチは500億ドル(約4兆9800億円)以上とされる巨額の資金が投入されたことで「五輪後」を心配しなければならない状況だ。またリオデジャネイロも費用面で不安を抱えている上に、想像以上に準備が遅れていることも深刻に受け止められている。そのためIOC委員らは最終的に、現時点では小さく見える放射能汚染水の問題よりも、実際に目に見える政治・経済的な問題の方が五輪ではより深刻なリスクと考えたのだ。

 ボールは今や日本にある。今この瞬間にも福島第一原発では放射能汚染水が海に流れ出し、世界中に広がっている。日本が五輪招致の「公約」を忘れ、今のように自国の経済再生にのみ焦点を合わせて放射能問題へのずさんな対応を続けているようでは、7年後に世界から「放射能五輪」という非難を浴びるのは避けられないだろう。

姜鎬哲(カン・ホチョル)スポーツ部次長
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