安倍首相:原発比率低減表明、エネルギー政策への影響は
毎日新聞 2013年09月09日 21時25分(最終更新 09月09日 22時24分)
安倍晋三首相は7日夜(日本時間8日朝)、2020年夏季五輪の東京開催決定を受けた記者会見で「(エネルギー供給体制に関して)原子力比率を引き下げる。今後3年程度の間に再生可能エネルギー普及と省エネルギー推進を最大限加速させる」と表明した。国際オリンピック委員会(IOC)による五輪開催都市審査をめぐっては東京電力福島第1原発の汚染水問題への対応も問われた。首相発言はそのことを意識したようにも映り、東京五輪決定が原発再稼働も含む今後の安倍政権のエネルギー政策にどう影響するか注目される。
経済コスト抑制の観点からこれまで原発再稼働に積極的な姿勢を示してきた安倍首相。今回、原発比率低減をアピールしたのは「安倍政権として福島第1原発事故の教訓をしっかり受け止めている姿勢を示そうとしたのでは」(霞が関筋)との見方もある。
業界では、首相発言を受けて「再生エネ支援策が一段と拡充される」との期待感が出ている。再生エネで発電した電気を電力会社に固定価格で買い取ることを義務づける制度導入をきっかけに、太陽光発電設備は需要が急拡大。昭和シェル石油グループのソーラーフロンティア(東京都)では太陽電池の受注が前年の約1.8倍にのぼり、「来年前半までの製品はすでに予約済み。生産が追いつかない」という。
ただ、運転までの期間が短く、利益が出やすい太陽光に比べ、風力やバイオマスなどの導入実績はケタ違いに少ない。電力の安定供給の一翼を担うには再生エネで発電した電力をためる蓄電技術の革新も不可欠で、安倍政権の取り組みが注目されそうだ。【浜中慎哉】