(cache) 校長室の春夏秋冬 | 神奈川県立湘南高等学校

学校概要

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校長室の春夏秋冬

2013年8月

二つのコンサート


 8月14日付『神奈川新聞』湘南版の「演奏で平和を祈念 あす湘南高でイベント」のヘッドラインと共に、次の記事が掲載されました。

 県立湘南高校(藤沢市鵠沼神明5丁目)で15日、「みんなで歌おう 福呼(ふっこ)う・平和祈念 くすのきコンサート」と銘打ったイベントが開催される。同校担当者は「地震などの災害で亡くなった人を思い、平和や愛について考えるきっかけにしてもらいたい」としている。経験豊かなソプラノ歌手やバンド、津軽三味線奏者などを招き、同校合唱部や卒業生の有志が、演奏を披露する。復興支援ソングとして知られる「花は咲く」を手話指導付きで合唱する。飛び入り参加もできる。会場は同校の多目的ホール(約360席)で午後4時半開場、同7時20分終了。無料で先着順。
 翌15日は、沢山の方にご来場いただきました。心より感謝申し上げます。その時の私の挨拶を次に記します。

 本日はご多忙の中、「福呼う・平和祈念 くすのきコンサート」にご来場いただき、心より御礼申し上げます。
 本校の校門の両側にあります楠は、昭和8(1933)年に、楠公生誕の地から苗木を取りよせて移植されたものです。当時の記録によりますと、校門の他にも校庭の周囲に防風林として150本を移植したそうです。校庭の周囲の木は枯れてしまいましたが、校門の2本はすくすくと育ち、湘南高校のシンボルとして在学生、卒業生の心の支えになっております。この楠が本日のコンサート名の由来です。
 楠が移植されて今年でちょうど80年になります。生徒達の成長や活躍、社会の様々な変化、自然災害、戦争など、80年の歴史には、良いことも悲しいことも、本当にいろいろなことがありました。

 自彊不息(じきょうふそく)と書かれた初代校長赤木愛太郎先生直筆の扁額が湘南高校の正面玄関ギャラリーに展示されています。これは、湘南高校5回生の和田忠夫さんが、ご結婚のお祝いに赤木先生から頂いたものです。しかし、幸せな結婚生活は長くは続きませんでした。和田忠夫さんは、今から68年前の昭和20年3月に、フィリピンのミンダナオ島で戦死されました。
 本校の職員からも「私の祖父は湘南高校の卒業生ですが、フィリピンで亡くなりました。私は生前の祖父の顔は知りません」という話を伺ったことがあります。80年の歴史というのは本当に重いものがあると私は考えます。

 本日のコンサートは、東日本大震災で大きな被害にあわれた方々や亡くなった方々を思い、平和や絆や愛について考えるきっかけになればとの思いで企画したものです。ご存知の曲があれば是非お声をあわせていただければと思います。和やかに、そして心のこもったコンサートになることを願っております。
 最後に、コンサート開催にあたり、卒業生の皆様はじめコンサートの趣旨にご賛同いただいた多くの皆様に心より感謝申し上げます。

 当日は次のプログラムで進行しました。
1 校歌斉唱
2 学校長あいさつ
3 手話練習 「花は咲く」
4 合唱
 ・「ここにいる」
 ・「さびしいカシの木」
 ・「HEIWAの鐘」
5 お話 「赤木先生と平和について」
6 津軽三味線とバンド演奏
 ・「津軽じょんがら節」
 ・「津軽甚句」
 ・「荷方節」
 ・“You’ve got a friend.” 他
7 お話 「赤木愛太郎先生の家に行った頃、戦争と平和について」
8 合唱
 ・「夏草や」
 ・「平城山」
 ・「遙かな友に」
 ・「ラクリモーサ」モーツァルト
 ・「アヴェ・ヴェルム・コルプス」モーツァルト 他
9 独唱
 ・「この道」
 ・「待ちぼうけ」
 ・「ラウラに寄せる夕べの想い」
 ・「万霊節」
 ・「ツェツィーリエ」
10 みんなで歌おう 「花は咲く」 他
11 閉会あいさつ
 8月24日(土)は、古川奈都子さんのコンサートに行ってまいりました。これは、本校の同窓会である湘友会の藤沢支部が「2013年度 夏のつどい」で企画をしたコンサートです。
 ニューオリンズ スタイル ピアノの第一人者である古川さんのプロフィールを読みますと「湘南高校では、ブラスバンド部でテナーサックスを担当、早稲田大学第一文学部哲学科在学中は、ニューオリンズジャズクラブに在籍。ジャズの原点であるニューオリンズトラディショナルジャズと出会う。ストライド、ブギウギといったトラディショナルスタイルのピアノ演奏を研究し、在学中より赤坂シェ-キーズで、当時日本音楽家ユニオン会長でバンジョー・ギターの浜坂氏と共演、同氏の推薦で卒業と共に恵比寿『ローズルーム』にレギュラーで出演、プロとしての活動を開始。
 1987年初めてニューオリンズを訪れ、音楽と共に歩むこの街の姿、生活と共に息づく音楽に心を揺さぶられる。以来25年間 毎年1ヶ月ほど定期的に滞在し、(中略)多くのミュージシャンと共演を重ねている。新宿トラッドジャズフェスティバルをはじめ、内外のフェスティバルやジャズクラブに出演、美しいメロディーと沸き立つようなリズムを、多くの人に楽しんでもらおうとライブ演奏を続け、4枚のリーダーアルバムをリリース。(後略)」とありました。

 当日頂きました古川さんの“What's New Orleans ?” を読んで、ニューオリンズジャズがほんの少しですが理解できました。古川さんによれば「アメリカ独自のアートフォーム、JAZZは1900年初頭にその形が出来上がってきたと言われています。その最も大きな舞台がルイジアナ州の港町、ニューオリンズ。ミシシッピ川の最も下流にある街です。1700年代からフランスによって入植が行われ、1803年、ナポレオンによってルイジアナがアメリカへ譲渡されたことでアメリカとなりました。ヨーロッパのさまざまな国からの移民と奴隷としてこの港に運ばれてきた西アフリカの人々で構成されていたこの街では、ヨーロッパのダンス音楽、アフリカのリズムとブルースのメロディ、軍楽隊の奏でるマーチ、教会の賛美歌の調べ、カリブ海のサウンドなどがカラフルに流れていました。
 それらの題材に『自分の声で感情を表現する』のがジャズの原点でした。口語体の音楽、とでも言ったらよいでしょうか。1900年前後にルイ・アームストロングを初め多くのミュージシャンがこの街に生まれました。(後略)」とあります。

 コンサートでは、Danny Boy(ダニーボーイ)、Old Folks at Home(スワニー河)、The Tennessee Waltz(テネシーワルツ)、Because of You(ビコーズ オブ ユー)をはじめ、私たちがよく知る曲を演奏していただき、ニューオリンズの紹介を交えてのあっという間の1時間でした。
 湘友会田辺克彦会長、湘友会加藤三尋藤沢支部長に心より感謝申し上げます。

 さて、先日イギリス在住の方が湘南高校にお見えになり、FORTNUM & MASON(フォートナム・アンド・メーソン)の紅茶をいただきました。実はこの会社にはちょっとした思い出があります。
 もう40年ほど昔になりますが、当時は、1ドルが約300円、1ポンドが約650円の時代ですので、輸入品の価格はどれも高額でした。私が指導を受けた教授の一人に大の紅茶党がいらっしゃって、院生たちと紅茶カンパニーを作って、イギリスから本場の紅茶を輸入していました。
 イギリスの紅茶会社にまとまった量を発注し、届いた製品を皆で分け合えば、運送費(船便)や税金を払っても、日本で購入するよりも安く手に入れることが可能だったからです。私も紅茶党でしたので、早速紅茶カンパニーの「社員」になりました。

 その時の私たちのカンパニーの相手が、FORTNUM & MASON社でした。緑の缶に入ったAssam(アッサム)、Darjeeling(ダージリング)、English Breakfast(イングリッシュブレックファースト)、Earl Grey(アールグレイ)等・・・。イギリスに行くことなど夢のような時代に、FORTNUM & MASONの紅茶は、大英帝国の香りと歴史を運んでくれた夢の缶でした。
 教授の研究室で、紅茶の中にジャマイカのラム酒をたらして(なぜか、ジャマイカなのです)、アレグザンダー・ハミルトンの原書を読んで討論したアカデミックな時代を思い出します。今の私からは想像できないと思いますが、そんな時代がありました。

 私が、初めて海外の地に足を踏み入れましたのは、当時イギリスの植民地だった香港です。まだ航空運賃が高いので、船で横浜港から出発しました。そこで真っ先に購入したお土産は、FORTNUM & MASONの紅茶です。イギリスの植民地なので、観光客目当ての店では紅茶は豊富にありました。円の価値がさらに上昇していたからでしょうか、学生時代に購入したときよりも安く手に入れることができたと記憶しています。
 円高のおかげで、イギリスに行くようになってからは、FORTNUM & MASONの本店で紅茶を購入し、スーツケースに詰め込んで帰国しました。本店の棚にずらりと並んだ製品を見て、紅茶の種類の多さに驚きました。昔は濃い緑色のパッケージでしたが、最近のものは、緑といってもパステルカラーに近い Bright Greenになり、カラフルな色のパッケージもあります。これも時代でしょうか。


 私は、毎朝ミルク・ティでスタートしますが、オレンジを絞って紅茶に入れるのも好きです。飲食にうんちくを傾けるのはどうかという考えもありますが、紅茶の楽しみ方は『おいしい紅茶生活』(磯淵猛 PHP文庫)が参考になります。67頁に、オレンジティーの入れ方が載っています。

 『イギリスの優雅な生活』(出口保夫 PHP文庫)は、イギリスの紅茶をイギリス文化としてとらえて解説しています。「要するにお茶には、それぞれの国の文化的背景があるけれども、われわれは自分のライフ・スタイルに合わせ、自由に喫茶を楽しむべきであって、そこに生活の真のゆとりが見出せるはずである」(199頁)には、同感です。
 日本で、ミルク・ティというと、コーヒーフレッシュと言うのでしょうか、ミルクのようなものが入ったプラスチックの小さな容器がついてきますが、それではちょっと興ざめです。出口保夫氏も次のように書いておられます。「英国紅茶はまずミルク・ティがふつうである。ミルクは温めないで、冷たいものを使う。イギリスの喫茶店で紅茶を飲もうとすると、ミルク・ティが出される。つまり、ミルク・ティが英国紅茶の基本なのである。ミルクはコーヒーに使うクリームを入れる人もいるが、これは間違いで、クリームを入れたのでは、おいしいミルク・ティにはならない」(202頁)


 先月の「校長室の春夏秋冬 7月」に、ジョン・F・ケネディの話題を取り上げましたが、『大統領でたどるアメリカの歴史』(明石和康 岩波ジュニア新書)は、歴代のアメリカ大統領でたどるアメリカ史の良書です。もちろんジョン・F・ケネディの記述もあります。湘南高校の図書館にありますので一読をお勧めします。


 写真は、「みんなで歌おう 福呼う・平和祈念 くすのきコンサート」のものです。



  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

 

 

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