戦後70年の2015年を目標に全面的なリニューアルを進める平和博物館「大阪国際平和センター」(ピースおおさか、大阪市中央区)の基本設計案(中間報告)がわかった。第2次世界大戦中の旧日本軍の行為に関する展示を大幅に縮小するとしており、改めて議論を呼びそうだ。
ピースおおさかの現行の展示は、展示室A「大阪空襲と人々の生活」▽展示室B「15年戦争」(満州事変〜日中戦争〜太平洋戦争)▽展示室C「平和の希求」で構成。Bは南京大虐殺や朝鮮人強制連行を展示し、保守系の団体や議員が「自虐的」と指摘していた。
朝日新聞が入手した基本設計案によると、戦時下の大阪の暮らし▽大阪大空襲の被災▽復興――の展示を増やす一方、日中戦争や太平洋戦争での旧日本軍の行為の展示を縮小する。一方で、大阪が戦前「軍都」と呼ばれたことや科学技術の発展と軍事のつながりを新たに展示。「15年戦争」の表記は使わず、日清戦争から太平洋戦争に至る半世紀を「世界中が戦争をしていた時代」とし、「日本の戦争」を世界的な位置づけの中で展示するという。
現行展示の見直し理由として、運営法人は「子どもに難解」「身近な地域で起きた空襲のほうが戦争と平和を自分の問題として考えやすい」などと説明。基本設計案では、どの展示をなくすかは明示されていないが、岡田重信館長は取材に「南京の展示がなくなる可能性が高い」としている。
ピースおおさかの展示更新は1991年の開館以来初めてで、総工費は約2億5千万円。基本設計案は橋爪紳也・大阪府立大21世紀科学研究機構特別教授(建築史)ら監修委員4人がまとめ、出資する大阪府・市の議会に近く報告する。監修委員の一人、もず唱平さん(75)は「中国やアジア・太平洋地域、植民地下の朝鮮・台湾の人々に多大の危害を与えたことを忘れない、とする設置理念は変えない」と話している。(武田肇)
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〈日本の戦争責任資料センター研究事務局長の林博史・関東学院大教授の話〉 ピースおおさかは開館以来、日本による戦争加害の側面を本格展示する数少ない公的博物館として知られてきた。今回の設計案に沿って展示が大幅に変更されてしまうと、海外に「日本は加害の歴史に向き合っていない」と受け止められる可能性がある。設計案は限られたメンバーで拙速にまとめたという印象がぬぐえない。議論を公開し、慎重に練り直すべきだ。
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〈国立歴史民俗博物館などの展示に関わった原田敬一・佛教大教授の話〉 大阪大空襲が展示の中心になったとしても、工夫次第では先の戦争で日本に被害と加害の両面があったと来館者に考えてもらうことは可能だ。ただ、日本が戦争をした責任と反省をあやふやにしてしまっては、「そういう時代だったから仕方ない」というメッセージになりかねない。どんな歴史認識で戦争を伝えるのか。今後、展示方法を詰めていく中で最も重要になる。