一番間抜けなのは、特許庁がインターネット上で公開している文書に、当該技術の開発部門や技術者の実名が記されていることです。これはあたかも中国側に、ここへ向かってピンポイントで、サイバー攻撃を仕掛けてくれと言っているようなものです。少なくとも、ヘッドハンティングの貴重な情報を与えていることになります」
前出の北京在住の日本人弁護士も続ける。
「多くの日本の大手企業は、中国企業に金型を渡して生産してもらっています。しかし最近は、こうした日本企業の内部事情を知る中国の提携企業からサイバー攻撃を受けて、日本の本社の重要機密を盗み取られるという事件が頻発しているのです。
日本企業は、提携の契約を交わせば、同じ釜の飯を食う仲間だと思い、気が緩みがちです。だが中国企業からすれば、当然ながら提携先の日本企業よりも、中国共産党の方が、はるかに重要な相手なのです」
前出の柏原氏は、最新情報として、「医療関係の日本企業を重点的に狙うよう、習近平政権から指令が出たようだ」と語る。該当企業は、要警戒だろう。
日本企業としては、中国スパイに対してどのような対策を講じるべきなのか。
「本社採用の中国人社員数というのは、それほど多くはないのだから、本人から提出された履歴書だけでなく、どういう人物なのか、徹底的に調べることが大事です」(前出・特許事務所所長)
官邸情報もすべて筒抜け
ところで9月5日には、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれるG20で、いよいよ安倍晋三首相と習近平主席が、初顔合わせする。だが両首脳は、とても握手する環境にはないという。外務省関係者が解説する。
「元CIA職員スノーデンの亡命やシリア問題で、米ロが一触即発と言われていますが、日中関係も同じレベルです。この1ヵ月間というもの、日本と中国は互いに、G20で相手がどういう手に出るかという情報戦に明け暮れたのです。
つまり、首脳会議の席上で、習近平主席が日本に対して批判を浴びせてくるのか。G20の期間中、習近平がどの国の首脳と会談し、日本に対するどのような非難を述べるのかという情報収集です。当然ながら、中国側も同様の情報収集に躍起になっているものと思われます」
こうした日中の神経戦は、首脳会議にとどまらず、"番外編"もあるという。
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