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4─6月期の実質GDP、年率3.8%に上方改定:識者はこうみる

2013年 09月 9日 11:13 JST
 
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[東京 9日 ロイター] - 内閣府が9日に発表した2013年4─6月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は、1次速報値から上方改定。前期比はプラス0.9%(1次速報値プラス0.6%)、年率換算ではプラス3.8%(1次速報値プラス2.6%)の高成長となった。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●予定通り消費増税の可能性高まる

<RBS証券 チーフ債券ストラテジスト 福永顕人氏>

消費増税絡みで見ると、数字が重要だったが、2013年4─6月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は1次速報値から上方改定となり、年率換算でプラス3.8%となった。1次速報値プラス2.6%でも十分とみていただけに、一段と現行案通りの引き上げ幅で消費増税が実施される可能性が高まったとみていいだろう。設備投資、在庫投資ともにおおむね予想通りで、強めだ。

円債相場は、東京の五輪決定で株価が強含みで推移しやすく、この株高と円安が続くのであれば債券には下押し圧力がかかりやすい。しかし、新発10年債利回り(長期金利)は押し目買いを見ながら0.8%近辺でもみあう相場展開を想定している。

●消費増税の後押し、外需はやや弱い

<IHS シニアエコノミスト 田口 はるみ氏>

4─6月期法人企業統計で示されたように民間の設備投資と在庫が伸びたようだ。消費税増税の後押しにもなろう。ただ、アジア経済の減速で輸出部門の改善が鈍い。製造業の収益は好調なのだから、設備投資を促すような政策が求められる。

2020年夏季五輪の東京開催決定は7年も先であり、経済波及効果もそれほど大きいわけではない。個人消費を持続的に高めるにはベースサラリーの底上げが不可欠。有効な成長戦略が求められよう。

●ドル95─100円のレンジ内にとどまる

<三井住友銀行 市場営業推進部 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

4―6月期実質GDP2次速報は大幅に上方修正された設備投資の寄与が大きく、在庫については、マイナス0.2%とマイナス寄与の縮小は限定的で期待外れとなった。

東京五輪開催決定と合わせ、GDPへの為替市場の反応は限定的なものとなり、視線はシリア問題や米量的緩和縮小が完遂できるのか否かに注がれていくことになるだろう。五輪の景気浮揚効果については、今後長期間にわたってじわじわ効いてくるものだが、短期的には大きな影響はなさそうだ。

消費税率との関連では、今回のGDPでほぼ確実視され、引き上げの判断材料としては「最後のダメ押し」として9月の日銀短観が最終確認の指標となる。

短観では円安によるメリットを享受した業種の改善により、前回の予想値である9月の数字と同じような数字が出てくれば、消費税率引き上げは既に決まった事項として認識され、事前の駆け込み需要や、引き上げ後「崖」に備える補正予算の額に注目が集まりそうだ。

ドル/円は基本的に依然95―100円のレンジ内にとどまっていると考えられ、上限に張り付いているものの、それを大きく抜けて105円を目指す流れにはなっていないとみている。

●消費増税ためらう理由なくなりつつある

<富国生命投資顧問社長 櫻井祐記氏>

2013年4─6月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は1次速報値から上方改定となり、来春の消費税率引き上げをためらう理由はなくなりつつある。もっとも、円安による化石燃料価格の上昇など、並行して打つべき対策もある。消費者物価指数(CPI)上昇は輸入インフレに近い。賃金を上げていくのに企業に何かインセンティブを与える必要がある。

東京への五輪招致でマインド面に働きかける効果はあっても、経済全体へのインパクトはそれだけでは見込みにくい。日経平均はひとまず好感の動きを見せているが、短期的な上昇にとどまる可能性もある。GDPを短期的ではなく、持続的に上げていくには本腰を入れた成長戦略が必要になる。

●消費増税判断の「決め手」にはならず

<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

4─6月期実質国内総生産(GDP)が2次速報で上方修正されたことは、2014年4月の消費税率引き上げを予定通り実施すべきだと主張している向きにとって追い風となるが、個人消費は「背伸び」の限界が見え始めている。

雇用者報酬の伸び以上に家計が支出する、いわば消費の「背伸び」を支えてきたアベノミクスへの期待感は、春闘でベアが実現しなかったことや、悪い物価上昇の広がり、株価下落などから、足元ではかなり沈静している。

7月実質輸出が前月から大きく下がったことも気になる。

安倍首相は日銀短観9月調査など一連の経済指標の内容を見極めてから、消費税問題についての最終決定を10月上旬に行う構えだ。したがって、消費増税の行方を市場が予想する上で、今回のGDP2次速報は「決め手」にはならなかったと判断している。

日経平均.N225は東京オリンピック開催決定を受けて上昇して始まったが、やはり頭打ちだ。もう1回動きがあるかもしれないが、材料としては毎日使うようなものでもない。

消費マインドの高揚感はいつまで続くかわからず、GDPも消費増税の決め手にならないとすれば、「見えない」という部分ではこれまでと同じ。株は買い一巡後に頭が重くなるという想定通りの展開になっており、焦点は引き続き、米国を中心とする海外の動きになるだろう。

 
 
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五輪効果には疑問符

2020年夏季五輪の東京開催決定による日本への影響は、経済効果というよりは、主に心理的な好影響にとどまるだろう。
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9月9日、 内閣府が発表した2013年4─6月期実質GDP2次速報値は、1次速報値から上方改定。写真は2月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)

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*統計に基づく世論調査ではありません。