「習近平政権は、『21世紀のスパイの役割は、技術的な後れを埋め合わせる機密情報の入手にある』と規定しています。中国は'10年に日本を抜いて世界第2位の経済大国に躍り出たものの、科学技術力は大きく後れをとっています。そのことはよく認識しており、最先端技術を敵国・日本の企業から盗むことは、正当な手段であるという論理構築をしているのです」
日本の被害額は年4兆円超
経済産業省OBで中国の産業スパイの動向に詳しい特許事務所所長も証言する。
「政治目的や軍事目的の諜報活動には、中国で養成されたプロのスパイが暗躍しますが、産業スパイの場合は、アマチュアが主流です。そのため、なかなか発見されにくいのです。
中国当局の手口として、よくあるパターンは、東京の中国大使館が、年に数回開いている、在日中国人の集まりを利用するものです。その場で、日本の大手企業に勤めるエリート中国人をピックアップし、まずは身上調査を行います。そして、産業スパイに仕立てていけそうだと判断すれば、再度呼び出しをかけるわけです」
中国人社員による日本企業の産業スパイ事件と言えば、'07年に発覚した「デンソー事件」が有名だ。トヨタ系で日本最大の自動車部品メーカー・デンソーの楊魯川係長(当時)が、「量産図面参照システム」と呼ばれるシステムから、社内の重要機密を盗み出し、中国側に渡していたとされる事件である。
また、昨年3月には、工作機械大手のヤマザキマザックで、同様の事件が発覚した。同社の中国人社員、唐博容疑者が、工作機械用図面情報約2万3000点を、不正取得して持ち出していたことが発覚したのだ。
前出の特許事務所所長が続ける。
「デンソー事件のように、技術そのものを盗んで本国に渡すパターンは、日常的に起こっています。アメリカ連邦議会の『米中経済・安全保障再考委員会』報告書によれば、中国の産業スパイによるアメリカ企業の被害額は、年間4兆円に上ると推定しています。しかしモノ作り技術の防衛は、アメリカより日本の方が甘いので、被害額はアメリカ以上と捉えるべきです」
同所長によれば、単純な技術資料持ち出しとは別のパターンも、最近増えているという。
「それは、優秀な日本人技術者の情報を収集するという産業スパイです。中国の大手国有企業などがヘッドハンティングする際の、参考資料にするわけです。実際、この手法によって、日本の大手企業の工場長クラスが、どんどん中国企業にヘッドハンティングされています」
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