社説[ハンセン一部返還]負担軽減?いやがらせ?

2013年9月8日 09時30分
(38時間30分前に更新)

 米軍基地の返還にあたっては、跡利用に十分配慮し、地元自治体や地権者と調整の上、実施すべきだ。防衛省の対応は、地元から見れば「いやがらせ」か「弱い者いじめ」にしか映らない。

 日米合同委員会は、名護市喜瀬、許田、幸喜の3区にまたがるキャンプ・ハンセンの一部162ヘクタールの返還に合意した。幸喜区内の55ヘクタールを2014年6月30日に、喜瀬区と許田区の残り107ヘクタールを17年6月30日に、2段階で返還する計画である。

 返還予定地は傾斜地になっていて、細切れで返還されても使い道がない。三つの区に分けて段階的に返還する手法では、共同体としてのつながりを保持している3区の地域コミュニティーが混乱する-稲嶺進市長はそんな理由から返還期限の延長を要請した。

 過去に3回、返還が延長されていることから、防衛省は今回は延長要請に応じない方針だ。

 気になるのは小野寺五典防衛相と武田博史・沖縄防衛局長の説明である。

 小野寺防衛相は「常日ごろ、(米軍基地の)面積が沖縄に集中しているという話をいただいている。少しでも返還できるよう努力したい」と述べた。

 武田局長は、使わない土地は返還するという日米地位協定の規定に基づいて返還に合意したことを強調した。

 全国の米軍専用施設の約74%が沖縄に集中しているとの県の指摘を意識し、ならば比率を減らしましょうというわけだが、この言い方は丁寧なようで誠実さに欠ける。

    ■    ■

 負担軽減につながる返還や、スムーズな跡利用が見込める返還なら大いに歓迎だ。しかし、数字を下げることを自己目的にした「使い道のない土地の一方的細切れ返還」では困るのである。

 辺野古移設計画への非協力的態度に対する処置であれば、政治的いやがらせだ。

 必要がなくなったら後は野となれ山となれという「使い捨て返還」や、有害物質を処理しないままの「毒付き返還」は、あってはならない。

 基地面積の比率を減らすという小野寺防衛相の説明は、米軍基地の全国対比の数字に政府が過敏になっていることを示している。政府も米軍も、過重負担の印象を薄めようと、数字を下げることに躍起だ。

 だが、数字の取り繕いはしょせん、数字の取り繕いである。「抑止力の維持・向上」と「負担軽減」という相反する政策を沖縄の中だけで完結させようとすることが、そもそも無理な話だ。

    ■    ■

 沖縄には、太平洋地域における米空軍の中枢(ハブ)と位置づけられ約100機の軍用機が常駐する嘉手納基地が存在する。外来機の飛来も頻繁だ。市街地のど真ん中に海兵隊の飛行場があり、オスプレイが飛び交い、民間地域と隣接して演習場が広がる。

 これらの部隊が連日、訓練を繰り返し、事件・事故が頻発し、日米地位協定が問題になるのは沖縄だけだ。そこに根本的なメスを入れない限り過重負担を軽減することはできない。

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