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『医療の巨大転換を加速する』 電子版が販売開始
こんばんは

『医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する』
糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
東洋経済新報社

2013年9月6日より電子版が販売開始となりましたので、
お知らせいたします。

以下の東洋経済新報社サイトの電子書籍配信先からお求めいただけます。

http://www.toyokeizai.net/spc/editorial/category/e-books-bk/

kindle版も以下のようにご購入いただけます。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00EY3CIE0


医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する: 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
東洋経済新報社



アマゾンでも購入できますので、是非ご一読を。


以下は
医療の巨大転換を加速する- 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
の「はじめに」です。
「はじめに」は私が書いて
「おわりに」は、夏井睦先生が書いておられます。
夏井先生の「おわりに」、メチャクチャ面白いですよ。


はじめに

夏井先生との対談  出会いと流れと

湿潤療法を初めて知ったのはネットである。そのときは夏井先生の名前は確認せずにそのサイトにある記述と画像をみて、即座に本物と思った。早速要点をプリントアウトして病棟や外来に配った。テニスを1~2週に1回しているので、幸い?転倒して手足を擦り剥くことは時々あった。それまではイソジンで消毒してガーゼを貼って、絆創膏で固定して包帯。翌日ガーゼを消毒のために剥がすとき、たいていは傷口とくっついていて、「痛てててて!」とか言いながら何とか剥がして、再びしみて痛いのを我慢してイソジンで消毒して・・・。
いやはや今から思えば、とんでもない行為であり、自分で自分に拷問しているようなものであった。湿潤療法のサイトを見てからは水道水で洗ってティッシュで拭いてワセリンを塗って上から市販のドラッグストアで打っている被覆材を貼っておしまい。「傷は湿潤な環境にして、余剰の水分は吸収させるか逃がす。」という原則だけ守っていれば、そのままシャワーを浴びてもOKだし、何の痛みもなく治った。外来患者さんでもちょっとした擦過傷や火傷には湿潤療法の説明をして実践してもらい、痛みなく治るので随分感謝されたものである。そんな頃2010年、高雄病院に脇元洋果先生が、糖質制限食や漢方を学ぶために赴任してこられた。私が湿潤療法に興味を持っていることを彼女に話すと、即「それなら本家の夏井先生を呼びましょうよ。」と提案された。脇元先生は夏井先生の外来について湿潤療法を勉強したことがあり、私などよりはるかに詳しい知識をもっていたのである。そこからは、とんとん拍子に話はすすんで、夏井先生に連絡をとって段取りを整え、2011年1月14日、夏井先生を高雄病院に招いて湿潤療法の講演をしてもらった。この高雄病院での講演会が夏井先生との初対面であった。私はサービス精神旺盛なので「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」「我ら糖尿人、元気なのには理由がある!」の2冊を謹呈した。大歓迎の意を込めて、河豚のフルコースで宴会をした。4時間くらい食べて呑んで、地球の歴史、原初の生命、生命の進化の話、宇宙のこと、音楽のこと、パソコンのこと・・・いっぱい話した。結局私は酔いつぶれてしまって後半はよく覚えていないのであるが、とりあえず夏井先生の博学な知識に圧倒されたことだけはよく覚えている。この人と(素面で)対談したらきっと楽しいだろうなとこのとき漠然と思った。作家宮本輝氏との対談以来久しぶりの興味深い企画である。ところで夏井先生は私が謹呈した本を全く読んでいなかったそうである。たまたま2011年9月のネットの日経メディカル特集記事「糖質制限食」に江部康二という名前が載っているのをみて、どっかで聞いた名前やなと思い出して、やっと面白そうやなと、私の本を読む気になったそうである。きっかけは大事である。そこからは早かった。夏井先生のブログで最初に糖質制限食を2011年11月に取り上げていただいて以降、次第に盛り上がっていき、ついには連日のように糖質制限食の話題が湿潤療法のサイトに登場するようになった。私の本の宣伝も連日のようにバッチリしていただいた。おかげで本の売り上げが急速に伸びて感謝感激である。夏井先生のサイトの読者は、自分の頭で考える進取の精神を持つ医師が多く、糖質制限食にもまったく抵抗がなかったようである。糖質制限食を早速自ら実践してその効果を体験し私のブログにも訪れるというパターンで、随分アクセス数が増えて、またまた夏井先生には感謝である。「海老で鯛を釣る」ならぬ「河豚で夏井睦という大魚をつり上げた」ようである。もう2~3回は河豚を奢らねばなるまい。夏井先生とブログ読者、江部康二とブログ読者、かっこよく言えば理論的、普通に言ったら理屈っぽいおじさんとおばさん、あるいはお兄さんとお姉さん・・・。兎に角理屈がわかる人、自分の頭で考える人には、すぐに理解できる普遍性のある理論が「湿潤療法」と「糖質制限食」である。
ところで湿潤療法に抵抗なく、すっと入り込めたと思っていたが、実際には常識の壁を突破することを一度体験していたことが大きかったのかもしれない。すなわち、1999年に、兄江部洋一郎が糖質制限食を高雄病院に初めて導入したときは、全く信じておらず2年間凍結していたが、私自身の糖尿病患者さんに糖質制限食を導入して劇的改善を目の当たりにして一気に常識の壁を乗り越えて、初めて兄(糖質制限食)を信じた経験があったのである。
さらに「傷は絶対消毒するな」で、「大腸癌の手術をして大腸粘膜は消毒しない(消毒できない)が腹の縫合部の皮膚は毎日消毒するという矛盾」との記述をみて、何でこんな簡単な事実に自分は気がつかなかったのかと目から鱗が落ちたのである。大腸の縫合部を日々通過していくのは生きた細菌を多数含む「UNKO」である。これで感染しないのなら、消毒は無意味ということは、理屈ですっと頭に入って理解して腑に落ちた。いままで100年間、世界中の誰も何故気がつかなかったのか?
ガイドラインに頼る医師は、自分で考えることを放棄した医師である。革命的に新しい治療法にエビデンスがあるはずがない。医師以外にも普通の人でも理屈が好きな人は自分で考え、納得して湿潤療法を実践すれば、「痛みなく傷が速やかに治る」のである。この快適な創傷治癒を一度体験すれば二度と消毒しようとは思わない。糖質制限食も又然りである。いくら大学のお偉い糖尿病専門医が、ご飯をしっかり食べてと指導してもSMBG(血糖自己測定器)を糖尿人がもっていて実験したら食後血糖値が軽く200mgを超えることはすぐにわかる。このことが解ったら、カロリ-制限食(高糖質食)という、最低でも一日3回、食後血糖値が200mg/dlを超えるような食事療法を、いったい誰がするであろうか?
本書は、夏井先生と私が、医学界のパラダイムシフト(湿潤療法と糖質制限食)という大きなテーマを縦軸に、あとは理屈っぽい二人が、縦横無尽に医学界の問題点を取り上げて舌鋒鋭く(自画自讃)迫ったという、なかなか骨太の対談本である。
ところでユングの言う共時性とでもいうか、脇元医師がたまたま高雄病院に来ておられ、その出会いが夏井先生との新たな出会いを形づくってくれた。
物事がサクサクと進むときは、このような出会いと流れが大きな意味と持つことが多い。私は理屈っぽい無神論者であるが、「Something Great」は好きである。


2013年6月
高雄病院
江部康二
コメント
京大病院・疾患栄養治療部(1)
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/department/center/nutrition.html
糖尿病患者の栄養指導を、年間3770例も実施している。ところが管理栄養士のトップは、低炭水化物食に、とても批判的だ。

(Diabetes Strategy 2013年8月 号より)
幣 憲一郎
京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部副部長
1986年 甲子園大学栄養学部栄養学科卒業
    伊丹市立伊丹病院栄養士
    香川医科大学医学部附属病院管理栄養士
2001年 京都大学医学部附属病院病態栄養部
     栄養管理室長
2005年 京都大学医学部保健学科非常勤講師(併任)
2013年 京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部副部長
    現在に至る
主要研究テーマ:糖尿病治療における実践的栄養指導法の研究、糖尿病透析予防に関する横断的調査

 この人物の正体を、著作より解明してみる


【1】総合臨床56(1)58-60, 2007年1月
『低インスリンダイエットを科学する』
幣 憲一郎 (京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部室長)
清野 裕 (関西電力病院院長)
P59
 この『ケトン体』は脳でも心臓でも利用できる大切なエネルギー源ですが、多過ぎると血液を酸性に傾けることになります。

 炭水化物の1日の摂取量は、健常人においては第六次改定日本人の食事摂取基準[3]によると「総エネルギーの少なくとも55%以上であることが望ましい」とされています。また、糖尿病患者の場合ADAのNutrition Recommendations and Intervention for Diabetes-2006によると[4]、「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行ううえでは必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっています。

3) 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2005年版)、(日本人の栄養所要量―食事摂取基準―策定検討会報告書)、平成16年10月。厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室、東京、2005
4) ADA: Position Statements: Diabetes Care 29:2140, 2006
http://care.diabetesjournals.org/content/29/9/2140.full

<批判>
「第6次改定日本人の栄養所要量-食事摂取基準」は1999/6/28答申、2000~2004年度適用であった。
www1.mhlw.go.jp/shingi/s9906/s0628-1_11.html
 次の第7次改定に向けての策定検討会は、名称を新たに「日本人の食事摂取基準」(2005年版)とし、2004年10月25日に決定し、11月22日に公表され、2005~2009年度に適用された。
www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2a.html
 ここでは食事摂取基準(Dietary reference intakes: DRIs)の概念が全面的に導入された。第6次では推奨量と目安量を一括して栄養所要量としていたが、両者は明確に分離された。炭水化物の推奨量は設定されず、目標量50%以上70%未満が設定された。
 どうして前世紀の遺物の第6次改定がでてくるのか、理解できない。第6次改定と食事摂取基準2005とは全く別物であり、このような間違いをしていては、栄養科学生以下である
2013/09/08(Sun) 20:50 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(2)
【2】臨床栄養114(2)146-150, 2009年2月
『1型糖尿病患者の食事』
P148
 炭水化物の1日の摂取量は、健常人においては日本人の食事摂取基準(2005年版)によると「総エネルギーの少なくともエネルギー比率で55%以上であることが望ましい」とされており、糖尿病患者の場合でも、ADAのNutrition Recommendations and Intervention for Diabetes-2006によると「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行ううえでは必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。
6)厚生労働省。日本人の食事摂取基準(2005年版)(日本人の栄養所要量―食事摂取基準―策定検討会報告書)。平成16年10月。

<批判>
 食事摂取基準(2005)では炭水化物の目標量50%以上70%未満が設定された。この文章表現は第6次改定の内容である。管理栄養士の読者が多い同誌でこのような間違いをしては、相当な恥であろう。
 ADAは2008年以後、低炭水化物食と低脂肪食に関し、いずれも体重減少目的で1年間の有効性を認めている。炭水化物の推奨量130gとは、糖新生を含めない場合の必要量で、これより食事中の炭水化物が低くても脳への栄養供給は保たれる、と記載しだした。
2013/09/08(Sun) 20:52 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(3)
【3】日本臨沐68巻 増刊号2(2010)pp613-617
『食事療法 低炭水化物ダイエットの是非』
幣 憲一郎
P615
 この’ケトン体’は脳でも心臓でも利用できる大切なエネルギー源であるが、多すぎると血液を酸性に傾けることになる。

 特に、炭水化物の1日の摂取量は、健常人においては’第六次改定日本人の食事摂取基準’[9]によると’総エネルギーの少なくとも55%以上を摂取することが望ましい’とされている。また、糖尿病患者の場合ADAのNutrition Recommendations and Intervention for Diabetes-2006によると[10]、1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない’とエビデンスレベルで注意喚起されており、肥満治療の視点であっても食事管理を行う以上、必要量の炭水化物を摂取させることが必須の条件となっている。

9) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2010年版, 日本人の栄養所要量―食事摂取基準―策定検討会報告書。 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室, 2009
10) ADA: Position Statements. Diabetes Care 29:2140, 2006.

<批判>
 すでに前世紀の遺物となった第6次改定が再登場した。正式名称は「第6次改定日本人の栄養所要量-食事摂取基準」である。これが食事摂取基準2010とどういう関係にあるのか不思議である。また、食事摂取基準2005は「日本人の栄養所要量―食事摂取基準―策定検討会」で作成された。2005年版以後は“栄養所要量”という表現を、厚生労働省は用いていない。
 2010年版は「日本人の食事摂取基準」策定検討会で決定し、2009年5月に公表された。実にこっけいな誤りである。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0529-4.html
2013/09/08(Sun) 20:54 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(4)
【4】月刊糖尿病2(10)70-77, 2010年9月号
『食後血糖の管理・食事療法』 幣 憲一郎
http://www.igaku.co.jp/pdf/tonyo1009-4.pdf
P73
 低炭水化物ダイエットの短期的な血糖や血清脂質の改善効果はいろいろと報告されているが、長期間の効果は証明されておらず、健常人の炭水化物の1日摂取量は、第6次改定日本人の食事摂取基準によると「総エネルギーの少なくともエネルギー比率で55%以上であることが望ましい」とされており、糖尿病患者の場合でも、ADAのNutrition Recommendations and Intervention for Diabetes‐2006によると1の「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行ううえでは必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。

9) 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2005年版)。第一出版、2005。
10) ADA: Position Statements, Diabetes Care.2006:29:2140。

<批判>
 食事摂取基準2010は2009年5月に公表され、2010年4月より適用されている。この時期になってどうして第6次改定や2005年版が登場するのが理解できない。栄養科学生が笑う内容である。ADAは2008年より、1日130g以下でも容認している
2013/09/08(Sun) 20:57 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(5)
【5】糖尿病レクチャー2(1)77-82, 2011年5月
『カ―ボカウントの基礎と実際について教えてください』
回答:幣 憲一郎
P78
 第六次改定日本人の食事摂取基準[4]によると、健常人においては炭水化物の1日の摂取量は「総エネルギーの少なくともエネルギー比率で55%以上であることが望ましい」とされている点や 糖尿病患者においてはADAのNutrition Recommendations and Intervention for Diabetesによると[5]「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない」というエビデンスレベルの高い注意喚起もあり 食事管理を行ううえでは、必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっていることを間違えてはいけません

4)厚生労働省:日本人の食事撲取基準(2005年版)日本人の栄養所要量―食事根取基準―策
定検討会報告書平成16年10月 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 2005
5) ADA I Position statements Diabetes Care 29 1 2140 2006

<批判>
【4】と同じである
2013/09/08(Sun) 20:59 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(6)
【6】内分泌・糖尿病・代謝内科 35(4):367-373, 2012
『栄養サポートチーム』 幣 憲一郎

P370-371
 現在、日本における摂取基準としては、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準[2010年版]」[1]があるが、あくまでも健常者を対象としているため、疾患特異性をどのように反映させるかは明確な基準がないのが現状であり、各種疾患ごとに作成されている「診療ガイドライン」に準拠すべきとされている。

P372
<糖質必要量の求め方>
 糖質は最も速やかに利用されるエネルギー源として最も重要とされる成分であり、脳、神経、赤血球、腎尿細管、精巣などは、グルコースのみをエネルギー源としているため、1日100g以上の炭水化物(糖質)の摂取量を確保することが望ましいとされている。特に糖尿病患者であっても、糖尿病患者の場合American Diabetes Association (ADA)のNutrition Recommendations and Intervention for Diabete-2008[4]によると、「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない。」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行う上では必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。

文献
1) 厚生労働省。日本人の食事摂取基準(2010年版)。日本人の食事摂取基準策定検討会報告書。2010。

4) American Diabetes Association; Nutrition recommendations and interventions for diabetes: a position statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care 2008; 31: S61.


【批判】
 日本人の食事摂取基準(2010年版)は、2009年5月29日に公表された。109頁にはこのような記載がある。

『炭水化物の栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等 通常はぶどう糖しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである』
言いかえれば、飢餓時にはこれと異なるわけだ
 また、炭水化物の摂取量が1日100g未満となっても、糖新生が行われると明記されている。
 2008年以後ADAは、「炭水化物の推奨量130gとは、糖新生を含めない場合の必要量」だと記載しだした。現実にはこれ以下でも糖新生が行われうるわけである。極端な低炭水化物はビタミン・ミネラル等が不足するため推奨していない
2013/09/08(Sun) 21:00 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(7)
【7】Diabetes Strategy 3(3)132-133, 2013年8月
『わが国における栄養素摂取量の現況と極端な糖質制限の考え方への疑問』
P132
 国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ[1]、脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与しており、栄養学的にも大きな課題とされています。
 また、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」[2]では、推定エネルギー必要量を基礎代謝量kca1/日×身体活動レベルとし、炭水化物摂取量はおおむねエネルギー比50~70%、炭水化物の最低必要量をおよそ100g/日と推計しており…


1) 厚生労働省: 6. 栄養素等摂取量。平成22年国民健康・栄養調査結果の概要、19-21, 2010
2) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2010年版、第一出版、東京、2010

<批判>
1) 平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果(H24年5月)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h22-houkoku-10.pdf

174頁106表 栄養素等摂取量の年次推移

‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
脂質総量‐‐‐‐57.4g‐‐‐‐53.7g
穀類エネ比率‐‐41.4%‐‐‐42.5%

176頁108表 食品群別摂取エネルギー比率の年次推移

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
穀類総量エネ比‐‐‐‐41.4%‐‐‐42.5%
動物性食品総量エネ比‐25.0%‐‐‐23.5%

 このように、近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している

2) また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている
 食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」との記載があったが、2010年版では削除された。
2013/09/08(Sun) 21:04 | URL | 精神科医師A | 【編集
京大病院・疾患栄養治療部(8)
【8】第2回日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015820.html

資料2(幣構成員提供資料)
『糖尿病の発症予防と重症化予防の観点から、日本人の食事を考える』
www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000015823.pdf

P2 エネルギー摂取量と糖尿病患者数の変化
エネルギー摂取量の減少とは逆相関して、糖尿病患者数は増加の一途

P3 国民健康・栄養調査2008
3大栄養素エネルギー比=炭水化物62.4%, 脂質21.5%

P9 ADAのガイドラインの解説
*エネルギー:体重減少のためには、低炭水化物と低脂肪のどちらでも短期間(1年間まで)の中で効果がある
*タンパク質:エネルギー比15-20%とし、長期的なエネルギー比20%以上の食事は推奨されない
*炭水化物:中枢神経系の需要量のため、最低炭水化物量は130g/日は摂取


<批判>
◇国民健康・栄養調査(2011年)
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h23-houkoku-03.pdf
P44 図20-1 糖尿病が強く疑われる者の割合の年次推移
 2009年と2011年を比較すると、減少傾向である。幣氏の作図には、2011年の数字がごまかされている。結論的には、2009年から2011年にかけて、総エネルギー摂取量も糖尿病患者も減少している

◇国民健康・栄養調査(2008年)の84頁に記載あり
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h20-houkoku-01a.pdf
 炭水化物と脂肪のエネルギー比率はそれぞれ60.4%、24.9%である

◇ADAガイドライン2013
care.diabetesjournals.org/content/36/Supplement_1/S11.full#sec-18
 2011年以後、低炭水化物食、低脂肪食とも体重減少目的で2年間の有効性を推奨している。タンパク質に、2009年以後は上記のような記載はない。炭水化物の摂取量が130g未満でも、脳への栄養供給は保たれる

◇ADAガイドライン2008
care.diabetesjournals.org/content/31/Supplement_1/S61.full
Nutrition Recommendations and Interventions for Diabetes
Diabetes Care January 2008. vol. 31 no. Supplement 1, S61-S78

For individuals with diabetes and normal renal function, there is insufficient evidence to suggest that usual protein intake (15–20% of energy) should be modified. (E)
 腎機能正常の糖尿病患者には、通常蛋白質摂取量(エネ比15-20%)を変えるだけの十分なエビデンスはない(evidenceE)。

High-protein diets are not recommended as a method for weight loss at this time. The long-term effects of protein intake >20% of calories on diabetes management and its complications are unknown. Although such diets may produce short-term weight loss and improved glycemia, it has not been established that these benefits are maintained long term, and long-term effects on kidney function for persons with diabetes are unknown. (E)
 高蛋白食は、現時点では体重減少目的では推奨できない。カロリーの20%を超える蛋白質摂取の長期的効果は不明である。このような食事で短期間の体重減少をきたし高血糖を改善しても、これらの利点が長期間続くか確認されておらず、糖尿病患者への長期間の腎機能への影響は不明である(evidenceE)。

…つまり、幣氏は2008年のADA見解を、現在の見解のように書いているだけである。その後数多くの研究論文が発表され、ADAも見解を修正している。また、evidenceEとは、はっきり言って最低クラスである。

 NEJMに掲載されたShai(2008)=DIRECT Study は、低炭水化物群のみが、蛋白質のエネ比21%強を2年間維持した。その後4年間のfollowを経て、低炭水化物群のみがLDL:HDL Ratio の有意な改善を得ている。

【結論】
 幣憲一郎氏は、日本人の食事摂取基準や国民健康・栄養調査の内容を理解しているとはとても言えない。これでは栄養科学生以下である。
 京大病院の糖尿病患者は、このような人物の栄養指導は断るべきである。そして、甲子園大学の学生がゼミで考案した、糖質制限のお好み焼きを食べるべきである。
 今秋には食品交換表の改定が予定されているが、またおかしな事を言い出さないように監視を強めるべきである。
2013/09/08(Sun) 21:06 | URL | 精神科医師A | 【編集
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