年齢を重ねた人が若い人に知恵を伝え、また若い人が年齢を重ねた人へと新しい情報をもたらす。強者が弱者を、余裕のある人がない人を扶(たす)ける。健常者が障害のある人を扶(たす)け、女性が働きやすい職場をつくる。互いに助け合う東京をみんなでつくろう。
東京発の電力エネルギー改革を力強く進め、低コストで安全、クリーンな電力供給のために全力を尽くします。東京湾でフル稼働している老朽火力発電所を最新鋭の天然ガス火力に置き換えます。島嶼(しょ)部では、地熱・太陽光・風力などの活用を図ります。
地下鉄を一元化します。東京メトロと都営地下鉄を隔てる「壁」を取り払う「サービス統合」は、すでに始まっています。さらに経営統合を視野に、不便な乗り継ぎを解消し、混雑を緩和し、バリアフリー化を進め、運賃を値下げするため国と戦います。トンネル内での携帯メール送受信も、今年度中に全線で可能にします。
周産期医療およびリスクの高い小児医療の充実を図ります。保育所の東京モデル「認証保育所」に対して国の補助を拡充させ、子育てしながら働く女性を応援します。「言葉の力」再生プロジェクトを進め、こどもの思考力を高めます。「生きる力」「支え合う力」を教育再生の基本とします。若い人たちのシェアハウスなど共生の場を重視します。
副知事として発案した高齢者の「ケア付き住宅」は、「住宅か施設か」という従来型二者択一でない新しい発想でスタートし、2012年度で4500戸を実現。来年度を念頭に、早期に1万戸を目指します。「東京ER」体制を進め緊急医療ネットワークを充実し、24時間の安全を確保します。
国所管のハローワークに独占された職業紹介機能を東京に移管させ、就職先マッチングとすでに東京が行っている職業訓練をひとつの流れにします。高齢者や女性、若い人たちの雇用機会を増やします。中小企業と若者のマッチングも進めます。さらに高専に海外インターンシップを導入、ものづくり教育を強化します。
国際線発着枠は現在3万回。2014年春には6万回に増えますが、リムジンバスの拡充で深夜早朝時間帯(23時〜6時)の空港アクセス利便性を高めて、欧米便枠を含め、これを9万回まで拡張します。また羽田周辺に新産業を集積する「情報基地」構想を進めます。暮らしを便利にし、同時に海外からビジネスと雇用を呼び込みます。
2020年東京オリンピック・パラリンピックを招致し、この国の閉塞感を突破します。来秋に多摩・島嶼(しょ)部で開催される「スポーツ祭東京2013」は、国体と障害者スポーツ大会を同時開催し、多様なスポーツの裾野を広げます。11月2日、東京マラソンがボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークと並び六大メジャーマラソンに認定されました。緻密な運営能力に加え1万人のボランティアと170万人の沿道の観衆の力です。まさに人が輝いたからです。都民の健康増進により、医療費の負担を減らし福祉の充実に当てます。
東京の知的蓄積・ビジネスの蓄積を成長戦略に結び付けます。都内に集積が進むコンテンツ産業をはじめ、先端的なものづくりや東京発ベンチャーを支援します。低漏水率世界一である東京水道や技術力のある中小企業の海外進出をバックアップし、アジアの諸都市との連携を強化します。南鳥島近海のレアアース資源開発を支援します。
帰宅困難者対策条例を制定し、72時間分の食料備蓄を、民間企業に義務づけました。木造密集地域の不燃化、緊急輸送道路沿道の建築物耐震化を加速し、首都高などインフラの老朽化対策を急ぎます。東日本大震災では、ツイッターによる機敏な情報収集で、気仙沼中央公民館に孤立した住民を都が救いました。こうしたSNS活用をさらに進め、震災対策だけでなく、さまざまな施策に生かします。
1946(昭和21)年11月20日長野県生まれ。幼少の頃、父が狭心症で亡くなり、歌人の母の手で育てられる。県立長野高校から信州大学人文学部を卒業。出版社勤務などを経て、ナショナリズムの理論を学ぶため作家の三島由紀夫と論争した橋川文三教授に師事する目的で、明治大学大学院に、修士課程修了。作家として自立することを目指した。
1983年、「天皇の影法師」(朝日新聞社・現在、中公文庫)「昭和16年夏の敗戦」(世界文化社・現在、中公文庫)を発表、作家デビュー。1987年、「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。一貫して、日本近代の本質とはなにかという命題に取り組む。作家の役割とは何かを自ら問い続け、「ペルソナ 三島由紀夫伝」や「ピカレスク 太宰治伝」などを発表し、斬新な視点で話題を呼ぶ。
1996年度の文藝春秋読者賞を受賞した「日本国の研究」で、日本の権力構造を従来の永田町と霞ヶ関に加えて、虎ノ門(公団や財団法人などの政府系法人)という概念を含むトライアングルと、新たな視点を唱えた。これをきっかけに政府の税制調査会委員、行政改革断行評議会委員に就任。この過程で道路公団民営化の提案をしたことから、小泉純一郎首相(当時)にプランづくりを依頼され、2002年6月から2005年9月まで道路関係四公団民営化推進委員会委員となり、公団の分割・民営化を成し遂げる。
2007年6月、石原慎太郎東京都知事(当時)から要請を受け、民間人として初めて東京都副知事に就任。東京電力の改革、都営地下鉄・東京メトロの統合問題、高齢者の介護付き住まいプロジェクトなどに取り組む。「政策の説明責任を果たしたい」との思いから、在任中に5冊の新書「東京の副知事になってみたら」「地下鉄は誰のものか」「言葉の力」「決断する力」「解決する力」(2012年11月20日発行)を出版した。
【著書】
「ミカドの肖像」「土地の神話」「欲望のメディア」のミカド三部作、「ペルソナ 三島由紀夫伝」「マガジン青春譜 川端康成と大宅壮一」「ピカレスク 太宰治伝」の作家評伝三部作、「道路の権力」「道路の決着」「霞が関「解体」戦争」の国との戦い三部作、「昭和16年夏の敗戦」「東條英機 処刑の日」「黒船の世紀」(英訳版"The Century of Black Ships: Chronicles of War between Japan and America")の戦争三部作。「ペルソナ 三島由紀夫伝」は2012年12月英訳版発行予定。2001年から2002年にかけて「日本の近代 猪瀬直樹著作集」(全12巻・小学館)を刊行。ジャーナリズムのあり方を問う劇画「ラストニュース」(弘兼憲史・画、猪瀬直樹・作)も。