東日本大震災:福島第1原発事故 被災者支援法、線量基準定めず 福島33市町村に限定
毎日新聞 2013年08月30日 東京朝刊
ゆがみは他にもある。基本方針案に盛られた住宅支援策だ。県外への避難者向けの家賃補助について新規受け付けを認めず、一方で、自主避難者を多く出している福島県中通り地域で公的賃貸住宅の整備を進めるという。避難を事実上の権利として認める支援法の趣旨を骨抜きにしている。復興庁の要請に基づく個人線量データ収集も、関係者は「支援法には直接は関係ない」というが、帰還促進に重点を置くものだ。
基本方針案は復興庁がパブリックコメントで意見を聞いたうえで、閣議決定される見込みだ。しかし同法は被災者の意見を施策に反映させるよう規定している。成立から1年2カ月も放置し、密室で協議した末に突然決定するのは乱暴に過ぎ、そもそも法の趣旨に反する。広範な線量データに基づく複数の選択肢を示した上で、原発事故の被災者支援のあり方を国民で論じ合うべきだ。【日野行介】
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◇基本方針案 骨子
・従来対象だった福島県民に加え、近隣県でも外部被ばくを把握
・家族と離れて暮らす子どもへのスクールカウンセラー派遣
・公営賃貸住宅への入居の円滑化
・福島県の子どもを対象に県内外での自然体験活動を実施
・学校給食の放射性物質検査を充実
・避難者が多い地域の就労支援拡充