東日本大震災:福島第1原発事故 被災者支援法、線量基準定めず 福島33市町村に限定
毎日新聞 2013年08月30日 東京朝刊
一方、原子力規制委員会は28日、復興庁の要請を受けて専門家チームを設け、関係省庁を通じて支援対象地域の個人線量データ収集を始めた。住民一人一人の個人線量は空間線量より低く出る傾向がある。国はこの点に着目し、低いデータを基に住民に帰還を促すとともに、線量に基づかない対象地域指定を科学的に補う狙いがあるとみられる。
支援法は昨年6月、議員立法で成立。原発事故に伴う年間累積線量が一定の値以上で、国の避難指示区域解除基準(20ミリシーベルト)を下回る地域を支援対象とする。だが一般人の被ばく限度との整合性をどう取るか難しく、線引きによっては避難者が増える可能性もあり、復興庁は基本方針策定を先送りしてきた。福島県などの住民は早期策定を求めて東京地裁に今月提訴した。
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■解説
◇「広い支援」ゆがめられ
復興庁は「子ども・被災者生活支援法」の支援対象地域を確定する根拠となる放射線量の基準作りを見送り、福島県内の自治体単位で対象地域を決める方針に切り替えた。線量によらず支援範囲をまず限定する手法は本末転倒で、支援が不十分だった自主避難者らも含め広く支援するという法の趣旨をゆがめるものだ。