僕なりのアームレスリング理論 中級アームレスラー程度?
(全てライトハンドで説明しています)
僕はよく「左手はどうやってグリップを持てばいいですか?」とか「足はどこに置けばいいですか?」といった質問を初心者の人から受けます。
答えだけを聞いてその人は納得するのでしょうか?
「でも僕はこうした方が力が入る」大抵の人はそう答えます。なぜならアームレスリングのフォームで一番大切なのは「重心」と「体軸」と「二つの三角形」をバランスよく上手に使う事だからです。
自分にぴったり合ったグリップの持ち方や足の置き方などは、あくまで上半身(体幹)の部分が決まらなければあまり意味をなさないと思います。どうぞご本人の一番力の入るようにしていただいて結構だと思います。
スタートで自分充分の体勢になり、攻めて行けるのだけど詰めのときに相手に粘られる人や逆転をされることが多い人は、「重心」と「体軸」と「二つの三角形」をバランスが理解できていないか、もしくは途中でバラバラに崩れてしまっていると思っていいと思います。
ではまず重心について説明したいと思います。
ここで言う重心とはいわゆる下っ腹の事だと理解しておいてください。ここが肘や拳の位置に対してどの高さにあるかが重要です。スタートの時の位置関係と比べ攻めているときに大きく下がってはいませんか?ただし単に垂直方向に高い低いではありません。体軸に対してです。この高さの差がスタート時点より大きくなっていると言うことは、自らの体重が相手の拳ではなくアーム台のパッドに乗ってしまっていると言えるでしょう。スタート時点に比べ右の脇も開いているでしょう。こうなってしまうと後は腕力でしか勝負ができません。ゆえに詰めの段階で粘られたり逆転されたりすることが多くなります。
重心の高さはスタートの構えの時に最も体重が安定して右拳に乗る高さをよく考えて決め、勝負が終わるまで重心を下げない意識を持ち続けて練習を繰り返すことを勧めます。
続いて体軸について説明します。体軸は頭の位置と重心の位置を線で結んでみたもので、当然重心が動けば体軸も動きます。この体軸に右肘や右拳が近いほうが体重が乗せやすくなります。しかしアーム台の上でセンターに拳を合わせた状態だとある程度は離されます。それは相手も同じ条件です。つまり、スタートの位置よりわずかでも自陣側に引き寄せた方が有利だということは誰でもわかることでしょう。そのときに先ほど説明した「重心」の事を忘れてはいけません。拳を自陣側にほんの数p動かそうとして重心が10pも20pも動いてしまっては、その分体軸が動いてしまうので逆に体軸と拳や肘を離してしまう結果になってしまいます。この状態で重心に注意しながら体軸を左方向に倒すと最後まで体重を生かせた攻めができます。あくまで体軸で攻める意識をもつことです。
続いては肩の三角形です。右肩・左肩・ヘッドの三点を意識でつなぐこと。まあ右肩と左肩は骨でつながっていますから要はヘッドと右肩・ヘッドと左肩と言うことになります。ヘッドと右肩が離れることを「割れる」と言い、ヘッドと左肩が離れることを「身体が開く」と言います。「割れる」と右拳が体軸から離れて行きます。「身体が開く」と右肘が体軸から離れて行きます。どちらも攻撃を腕力頼みで行わなければならなくなることは説明したとおりです。さらにいわゆる「右の壁」と言うものが一発で無くなってしまい、相手の攻撃をまともに受けることも出来ずに負け、力を使いきれた感じがしないことでしょう。「右の壁」については後に説明させていただきます。
左肩はヘッドとしっかり意識をつないで、攻撃で体軸がどのように倒れてこようとも常に拳の行く方向いなければなりません。
次は眉間と右腕の三角形です。要は何度も説明しているように体軸と右拳や右肘を離さないようにするために、しっかりと意識をつないでこの三角形の距離を離さないようにすることが大事なのです。
さて、先ほど出てきました「右の壁」ですが、これほど身体が理解するまで「なんのこっちゃ?」なアーム用語はないんじゃないと思うくらい初心者には難解です。「自分の右側には壁があって、絶対にその壁より右には倒れない!」と言う意識で固めることなのですが、じゃあそれはどうやってやるの?となると難しいです。
きっとTOPクラスの選手は皆もっとすごい意識で壁を作っていると思いますが、あくまで僕なりの壁の作り方を説明します。
まず右肩の壁です。これは相手から右サイド方向に受ける圧力に対して肩周りの筋力全面を固め、体軸を中心とした体幹でぶつかり撥ね返します。
次に右肘の壁です。相手も自陣で勝負しようとこちらの腕を引き倒しにきます。それに対して引かれないように右肘をみぞおちの方向に引き跳ね返します。
これはそんなに大きく動かすと言うよりは逆に相手の力に負けないように固めると言ったほうがいいかもしれません。
手首の壁。これは手首を立てて固めておく意識です。親指から手首にかけて太い腱が通っているんですが、こいつをしっかり固めて相手の攻撃で手首を寝かされないようにします。
親指の壁。親指が寝かされると外を向いてしまい、掌や手首の「腹」が上を向いてしまいます。これでは相手の力を完全に受けてしまいます。ですから親指は相当意識をして自分の眉間方向に固めます。もしその時に指のフックをせず、親指を立てていたらまるで自分を「俺!」と指差しているような感じです。
最後にトップで作る壁。これは右方向と言うよりは縦方向の壁です。スタートし、自陣に相手を引き込もうとするとき、トップの高さを下げてはいけません。下げるという事は今まで説明してきた通り、相手の行きたい方向に対する反発力を持たない行為だからです。相手は1oでもいいからこちらの上に乗り体重を利用して引き込んでやろうとしてきています。だからトップは下げてはいけません。これも単に垂直方向ではなく体軸に対しての高い低いです。
以上僕なりのアームレスリングの基本技術のようなものを説明してきましたが、これを実践した場合、最初に書きましたグリップの握り方や足の置き方などは自然に決まってくるのではないでしょうか?
上級アームレスラー達はこれらの基本的な事などを踏まえた上で各パーツを強化するトレーニングをしたり、自分の長所をより生かす戦術をあみだしたり、攻撃や防御に重点をおいたアームへと発展させているのです。「誰々さんが何キロのウエイトでやってるから」とその練習の意味も理解しないで真似だけしていてはだめです。