社説:使われぬ復興予算 連携不足の解消を急げ

毎日新聞 2013年09月08日 02時31分

 東日本大震災の発生から間もなく2年半になり、復興住宅の建設や住民の集団移転などの事業は正念場にさしかかっている。来年度予算案では復興関連で復興庁を中心に新たに3.6兆円を概算要求した。

 安倍内閣の下、復興予算枠は2011年度からの5年間で19兆円から25兆円に拡大された。かなりの部分が使われたような印象を与えがちだが現実には多くの予算がせっかく計上されながら、現地で生かされずにいる。政府は実態を直視し、対策を急ぐべきだ。

 概算要求と並行して復興庁は復興関連予算で各省がつくった基金が被災地外で「流用」されていた問題の中間報告も公表した。政府が都道府県などに返還を求めた未執行分1017億円のうち、返還の道筋がついたのは718億円にとどまった。

 民主党政権時に復興予算の流用が発覚したため安倍内閣は使途の厳格化を掲げたが、基金を抜け道とした流用が改めて問題化した。もっと早く手を打てばより多くの返還が可能だったとみられるだけに、後手に回った感は否めない。

 一方で、復興予算をめぐり表面化しているのが、計上された予算が予定通り使われない問題である。

 12年度に使う予定だった9.7兆円のうち3.4兆円が手つかずに終わり2.2兆円は繰り越し、1.2兆円が使用のめどがたたず「不用額」と判定された。がれきの搬入ができない、放射性物質の除染作業が進まないなどの事情による。復興庁によると13年3月までに実際使われた復興予算総額は約15兆円。被災地外への流用や東京電力に求償できる分を除けば国の支出はさらに圧縮する。

 集団移転や復興住宅などに用いる復興交付金を使った事業の進捗もはかばかしくない。復興庁が11、12年度分に配分した5809億円のうち自治体が事業者と契約を結ぶなど支払いが確定したのは2976億円で全体の約5割どまりだ。

 交付金の使用が進まないのは一部市町村が予算確保のため実際より早めのペースで申請したことや、慎重に住民の合意手続きを進めている側面もある。だが、職員不足や手続きの複雑さによる用地確保など作業の難航や、全国的な公共事業の増加で資材や人員が不足し、入札に応じる企業がない問題が指摘されている。

 本当に優先度が高い課題に交付金が認められにくい事情もあるのではないか。国と被災地の連携がなお不足していると言わざるを得ない。

 今年度分の復興予算約6.6兆円が順調に使われるか、これではこころもとない。政府は制度、運用両面にわたる後押しについて明確なメッセージを発してほしい。

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