福島第1原発からの汚染水漏れを理由に韓国政府が青森、岩手、宮城、福島を含む8県の水産物輸入を全面禁止したことに、東北の水産業関係者の間には6日、怒りと落胆が広がった。矛先は、汚染水の海洋流出を当初認めなかった東京電力や、対応が後手に回った国にも向かった。
汚染水問題で試験操業を中断している相馬双葉漁協(相馬市)の佐藤弘行組合長は「政治的背景が色濃く、日本への嫌がらせと感じる」と気色ばんだ。国内の消費者離れにつながる恐れもあり、「きちんと検査して出荷する体制を貫く。外国に惑わされず受け入れてほしい」と理解を求めた。
宮城県は東日本大震災前、韓国向けにホヤ、スケソウダラ、サバなどを輸出していた。宮城県漁協の菊地伸悦会長は亘理町で記者会見し、「風評被害を乗り越えようと頑張ってきた努力が駄目になった」と落胆した。
気仙沼市で漁業を営む芳賀千鶴男さん(68)は「東京電力に対応を任せっ放しにしたため情報が出てこなかった。国は税金で汚染水対策に取り組むのだから、しっかり情報開示してほしい」と注文を付けた。
石巻魚市場(石巻市)の須能邦雄社長は「韓国は科学的データに基づかない感情的な判断をした」と指摘。「日本の汚染水対策の不十分さに対する近隣国のいら立ちが原因」と政府の対応の遅さを批判した。
自治体トップも困惑を隠さない。村井嘉浩宮城県知事は国産水産物が厳しい検査基準を満たしている点に触れ、「韓国政府は過剰反応しすぎだ。国民感情として納得いかない。おそらく他国はこういう対応をしない」と不快感をあらわにした。
韓国にホタテやイカを輸出する三村申吾青森県知事は「国を通じて安全性を担保していることを伝え、輸出可能となるよう働きかけたい」と語った。達増拓也岩手県知事は「岩手県は品目や場所ごとに安全を確保している」と強調した。
一方、林芳正農相は都内で記者会見し、「科学的根拠に基づき冷静な対応を取ってほしい」と述べ、外務省を通じ韓国側に申し入れる考えを示した。政府全体で汚染水問題に適切に対応することの必要性も強調した。