2009.05.31 Sunday
森田健作の天皇殺害を確認
という訳で、某所で『徳川一族の崩壊』を観て来ました。『柳生一族の陰謀』『赤穂城断絶』『真田幸村の謀略』に続く、東映大作時代劇の最終作!といえば聞こえはいいけれど、要は打ち切り作ですな。
幕末、貧困にあえぐ会津藩。4人の息子(伊吹吾郎、寺田農、大場順、島英津夫)の反対にも関わらず松平容保(萬屋錦之介、注:当時の容保は26歳)は成功の暁には藩の肥沃な地への国替えを願うつもりで、京都守護職の仕事を引き受ける。一方温暖で豊かな長州藩では、桂小五郎(松方弘樹)が百姓の下男(森田健作)とできた妹(白都真理)を追い出すと、孫が孝明天皇の次代天皇となる事が約されている中山忠能(中村鴈治郎)の息子・忠光(入川保則)らと結託し倒幕運動を進め、薩摩の大久保利通(梅宮辰夫)と同盟を結んで孝明天皇を大和行幸時に強奪する事を計画する。容保は院宮(千秋実)を恫喝し休廷クーデターを行わせ、行幸を中止し、倒幕派公卿を追放する事に成功する。激昂した長州藩は蛤御門に攻め込むが、容保の出させた勅令により薩摩藩は同士討ちをして動けず、長州藩は敗北する。しかし容保が首謀者の中山忠光の処刑を強行させ、さらに次期天皇を院宮とする事となり、中山忠能が激怒。岩倉具視(成田三樹夫)らの復権に力を貸す。孝明天皇が佐幕派である事を知り武力討幕の勅令が出ないと知った桂は、下男の森田健作に命を賭ける事になる依頼をする。風雨激しい深夜、忍び装束で御所に忍び込んだ森田健作は、女官の手引きで内部に侵入。ギャアアアーッという悲鳴と共に、襖に映る、倒れ込む貴人のシルエットに刃物を振り下ろす森田のシルエット。そして大量の血しぶきが襖にかかる。御所の庭に出て警護兵に取り囲まれた森田健作は、血塗れの包丁で左頸部を切って自害。さらに桂は森田と自分を結ぶ妹を殺害し、赤子の甥を連れ去る。これにより明治天皇の即位が決まり、院宮は倒幕派にひれ伏すが、家茂との政争敗北時に徳川慶喜(平幹次朗)との自身の婚約を潰し、今また転向する父親に怒った娘・姫宮(大谷直子)に殺害される。英明な慶喜への敵愾心を抱いていた家茂(岸田森、当時の家茂は20歳)は臨終時に、3歳の田安亀之助を後継者に指名していたが、花押が無い事を理由に容保がその遺言を偽りと断定、慶喜が将軍職に就く。慶喜は姫宮の身を案じつつ、大政奉還を行う。しかし薩摩長州は辞官納地の要求を決め、姫宮はそれを慶喜に知らせようと駕籠を走らせるが、新政府軍に加える条件に暗殺を依頼された紀州藩士が姫宮を襲撃、槍の穂先に刺さった姫宮の生首が晒される。時を3年稼いでくれと懇願する慶喜に応え、桂のいる紀州藩邸捜索の責を取らされ切腹した伊吹吾郎、襲撃された容保を守る為に斬り死にした寺田農、そして紀州藩士の騙し討ちに額を割られて気絶、姫宮警護が叶わなかった大場順は姫宮の生首前で切腹。3人の息子を失った容保に追い打ちをかけるように、愛する姫宮を失い、そして親族に裏切られた衝撃で慶喜は江戸に帰ってしまう。それを止めようとしたが果たせず、容保を京都守護職に引きずり込んだ事を詫びつつ、板倉勝静(山形勲)は切腹。容保は連れて来た藩士達に別れを告げ、四男の打つ鼓で死んだ息子達と舞う。翌朝戦装束で四男と寺の堂を出た容保の前に、「京都守護職」「会」と書かれた旗を掲げた藩士達が集結して来た。桂達倒幕派が固める御所で慶喜・容保追討令が下されていた瞬間、砲撃の音に御所内は騒然となる。そして爆煙の中疾走する会津軍団の姿で映画は終わる。
それにしてもかれこれ観るのは20年ぶりぐらいになるのでは無かろうか。以前川崎国際で観た時は例のシーンが切れたフィルムだったので、退色していたとはいえ、全編きちんと観られる上映フィルムが存在していた事に感心致しました。>シネマヴェーラさん。
柳生〜幸村に比べると低予算であり、昔観た時はとにかく地味でつまらない作品だったが、今観ると、身内を血に染めて謀略の権力闘争を繰り広げる二人の攻防戦がえらく面白かった。上に書いたストーリーでも分かる通り、物語が複雑怪奇に進んでおり、幕末史をある程度理解していないと何が何だか分からないし感情移入もできないしだろう。それでも幕末の動乱はもっと複雑怪奇であり、小栗は当然、新選組も西郷も龍馬も鳥羽・伏見の戦いも無視して刈りに刈り込んだとはいえ、まずはよくぞここまでまとめたと感心する。
というか、本作は実在の人物を使ったSFドラマである事を理解できないと、面白くも何ともないだろう。前作までに家光や家康の首が吹っ飛んだ事も驚きだが、病死となっている孝明天皇(御簾の向こうのロングショットしかない)の暗殺シーンには、やはり度肝を抜かれた。とはいえこれが問題なら、崇峻天皇の暗殺シーンがあるNHK番組とか漫画とか、弘文天皇が手塚作品で戦死するのも問題になりますよね? 日本は、これぐらいでソフト化できなくなるような脅迫が届くとか自粛せざるを得ないような暗黒社会じゃありませんよね?
閑話休題。とはいえ成田三樹夫や大谷直子が「ごきげんよう」なんてスールな挨拶をしているとかともかく、蛤御門の変を中盤の見所にして、クライマックスが盛り上がらずにスッと終わる作劇は不満。とにかく馬鹿みたいに人、人、人の見せ場だった幸村とまでは行かなくても、締めにボリューム感をもっと出せば化けたと思うんですが。龍馬や新選組ものが主流の幕末物で、この辺りをメインにした映画はなかなかないので、また観たいですな。
幕末、貧困にあえぐ会津藩。4人の息子(伊吹吾郎、寺田農、大場順、島英津夫)の反対にも関わらず松平容保(萬屋錦之介、注:当時の容保は26歳)は成功の暁には藩の肥沃な地への国替えを願うつもりで、京都守護職の仕事を引き受ける。一方温暖で豊かな長州藩では、桂小五郎(松方弘樹)が百姓の下男(森田健作)とできた妹(白都真理)を追い出すと、孫が孝明天皇の次代天皇となる事が約されている中山忠能(中村鴈治郎)の息子・忠光(入川保則)らと結託し倒幕運動を進め、薩摩の大久保利通(梅宮辰夫)と同盟を結んで孝明天皇を大和行幸時に強奪する事を計画する。容保は院宮(千秋実)を恫喝し休廷クーデターを行わせ、行幸を中止し、倒幕派公卿を追放する事に成功する。激昂した長州藩は蛤御門に攻め込むが、容保の出させた勅令により薩摩藩は同士討ちをして動けず、長州藩は敗北する。しかし容保が首謀者の中山忠光の処刑を強行させ、さらに次期天皇を院宮とする事となり、中山忠能が激怒。岩倉具視(成田三樹夫)らの復権に力を貸す。孝明天皇が佐幕派である事を知り武力討幕の勅令が出ないと知った桂は、下男の森田健作に命を賭ける事になる依頼をする。風雨激しい深夜、忍び装束で御所に忍び込んだ森田健作は、女官の手引きで内部に侵入。ギャアアアーッという悲鳴と共に、襖に映る、倒れ込む貴人のシルエットに刃物を振り下ろす森田のシルエット。そして大量の血しぶきが襖にかかる。御所の庭に出て警護兵に取り囲まれた森田健作は、血塗れの包丁で左頸部を切って自害。さらに桂は森田と自分を結ぶ妹を殺害し、赤子の甥を連れ去る。これにより明治天皇の即位が決まり、院宮は倒幕派にひれ伏すが、家茂との政争敗北時に徳川慶喜(平幹次朗)との自身の婚約を潰し、今また転向する父親に怒った娘・姫宮(大谷直子)に殺害される。英明な慶喜への敵愾心を抱いていた家茂(岸田森、当時の家茂は20歳)は臨終時に、3歳の田安亀之助を後継者に指名していたが、花押が無い事を理由に容保がその遺言を偽りと断定、慶喜が将軍職に就く。慶喜は姫宮の身を案じつつ、大政奉還を行う。しかし薩摩長州は辞官納地の要求を決め、姫宮はそれを慶喜に知らせようと駕籠を走らせるが、新政府軍に加える条件に暗殺を依頼された紀州藩士が姫宮を襲撃、槍の穂先に刺さった姫宮の生首が晒される。時を3年稼いでくれと懇願する慶喜に応え、桂のいる紀州藩邸捜索の責を取らされ切腹した伊吹吾郎、襲撃された容保を守る為に斬り死にした寺田農、そして紀州藩士の騙し討ちに額を割られて気絶、姫宮警護が叶わなかった大場順は姫宮の生首前で切腹。3人の息子を失った容保に追い打ちをかけるように、愛する姫宮を失い、そして親族に裏切られた衝撃で慶喜は江戸に帰ってしまう。それを止めようとしたが果たせず、容保を京都守護職に引きずり込んだ事を詫びつつ、板倉勝静(山形勲)は切腹。容保は連れて来た藩士達に別れを告げ、四男の打つ鼓で死んだ息子達と舞う。翌朝戦装束で四男と寺の堂を出た容保の前に、「京都守護職」「会」と書かれた旗を掲げた藩士達が集結して来た。桂達倒幕派が固める御所で慶喜・容保追討令が下されていた瞬間、砲撃の音に御所内は騒然となる。そして爆煙の中疾走する会津軍団の姿で映画は終わる。
それにしてもかれこれ観るのは20年ぶりぐらいになるのでは無かろうか。以前川崎国際で観た時は例のシーンが切れたフィルムだったので、退色していたとはいえ、全編きちんと観られる上映フィルムが存在していた事に感心致しました。>シネマヴェーラさん。
柳生〜幸村に比べると低予算であり、昔観た時はとにかく地味でつまらない作品だったが、今観ると、身内を血に染めて謀略の権力闘争を繰り広げる二人の攻防戦がえらく面白かった。上に書いたストーリーでも分かる通り、物語が複雑怪奇に進んでおり、幕末史をある程度理解していないと何が何だか分からないし感情移入もできないしだろう。それでも幕末の動乱はもっと複雑怪奇であり、小栗は当然、新選組も西郷も龍馬も鳥羽・伏見の戦いも無視して刈りに刈り込んだとはいえ、まずはよくぞここまでまとめたと感心する。
というか、本作は実在の人物を使ったSFドラマである事を理解できないと、面白くも何ともないだろう。前作までに家光や家康の首が吹っ飛んだ事も驚きだが、病死となっている孝明天皇(御簾の向こうのロングショットしかない)の暗殺シーンには、やはり度肝を抜かれた。とはいえこれが問題なら、崇峻天皇の暗殺シーンがあるNHK番組とか漫画とか、弘文天皇が手塚作品で戦死するのも問題になりますよね? 日本は、これぐらいでソフト化できなくなるような脅迫が届くとか自粛せざるを得ないような暗黒社会じゃありませんよね?
閑話休題。とはいえ成田三樹夫や大谷直子が「ごきげんよう」なんてスールな挨拶をしているとかともかく、蛤御門の変を中盤の見所にして、クライマックスが盛り上がらずにスッと終わる作劇は不満。とにかく馬鹿みたいに人、人、人の見せ場だった幸村とまでは行かなくても、締めにボリューム感をもっと出せば化けたと思うんですが。龍馬や新選組ものが主流の幕末物で、この辺りをメインにした映画はなかなかないので、また観たいですな。