オリンピックの開催が決まりましたね。喜ばしいことだと思います。
オリンピックとホームレス問題
ホームレス支援を行う「ビッグイシュー」に関わっている関係で、オリンピックがホームレス状態にある方々にどんな影響を与えるのかが、気になっています。
あまり知られていないことですが、五輪を始め、大規模なスポーツイベントの開催にあたって、開催地からホームレスが追い出されることがあります。
たとえば米国のフットボールの祭典「スーパーボール」。ダラス市の議会は、開催地付近での物乞い行為を期間限定で非合法化し、ホームレスの人々を別の場所に追いやることを決定しました(参考:The Super Bowl’s Homeless Problem)。
同様の「排除」はアトランタ、シドニー、北京、ロンドン五輪においても行われました。シドニーにおいては、一時的な居住施設に移行してもらうという配慮が行われましたが、そこでは暴力事件や盗難、食品の汚染などが多発しているという悪評があったため、ホームレスの方々から「あんなとこに行くなら、路上の方がよっぽど安全だ」という声も上がったそうです(参考:Sydney’s homeless to be removed for Olympics – World Socialist Web Site)。
日本のホームレスたちはどうなる?
さて、当然気になるのは日本における、ホームレス状態にある人たちの扱いです。
難しいのは、「脱法ハウス」や「ネットカフェ難民」という表現に見るように、日本においては住まいの貧困に陥っている人が、必ずしも「わかりやすいホームレス状態」にあるとは限らないことです。ホームレスというと路上で寝泊まりしているイメージがありますが、特に若いホームレスに関しては、必ずしもそうではないことが指摘されています。
「どこで寝るかは懐次第。ネットカフェに泊まれなくなると、ファーストフード店、それも無理ならコンビニをハシゴして明け方までやり過ごす」(29 歳男性)という具合だ。
また、「女性のホームレス」たちも、その立場と安全上の理由から、「身を隠す」ことに必死になっていると言われます。
「だけど、ホームレスはみんな男性で、女性ホームレスなんて見たことがない」という人もいるかもしれない。が、数こそ少ないものの、「見えづらい」だけで女性ホームレスは確実に存在する。
(中略)さまざまな事情があって実家には頼れず、ルームシェアをしていた友人との関係悪化から住む場所を失い、所持金も尽きて路上生活となってしまった女の子。夜間はとにかく「身を隠す」ことに必死になっていたという。
そもそもホームレス問題は、日本においては関心度・理解度が高いとはいえない問題です。要するに、大半の人にとってホームレス問題は「他人事」だと思われます。それに加えて上で見たように、実質的にホームレス状態にある人々の一部は、ネットカフェやファーストフード店、違法なシェアハウスなどに「隠れて」います。
五輪の実施に合わせてホームレス問題にまつわる議論も行われるのでしょうけれど、単純に路上生活者を排除し、外国人に「見えないようにする」という近視眼的な措置に留まらない、俯瞰的・長期的な視座に立った対策が行われることを望みます。
排除から包摂へ、それこそが、まさに「クールジャパン」ではないでしょうか。「たまたま弱者に陥ってしまった人たち」を「自己責任論」で排除することなく、市民全体で「お互い様だよね」と抱きとめる。東京五輪は、そういった次世代の市民社会のあり方を、世界に誇る機会とする最良の機会です。