ちょうど先日、ビッグイシュー創始者のジョン・バード氏と若手社会起業家たちによるディスカッションイベントに参加してきました。
「社会的企業はビジネスの上級編」—注目の若手社会起業家が語る、ソーシャルビジネスのあれこれ | BIG ISSUE ONLINE
流通のあり方を変える
イベントの中では、社会的企業と生産コストにまつわる専門的な議論が展開されました。これ、とても難しい問題なのです。
たとえば「エシカルジュエリー」のHASUNAは、「搾取的な労働によらない素材」を仕入れ、それらの材料でジュエリーを生産しています。
市場にはもっと安価な素材もありますが、それらの素材は、倫理的(エシカル)とはいえない手段によって生産されている場合があるのです。社会を変えることを志すHASUNAは、高かろうが、素材の品質は同じだろうが、公正なやり方で生産された素材を用いるのです。
が、高い素材を用いれば、それだけ商品単価も高くなってしまいます。価格が高すぎれば、それだけ売れ行きも悪くなる可能性があります。でも、ブランド哲学上、安価な素材は使えない。さてどうするか。…社会起業家と呼ばれる人々は、この種のジレンマに向き合うことになるのです。
ジョン・バードさんがこの種の問題に関して強調していたのが「ディストリビューション」、つまり流通を切り口にした問題解決策です。流通のあり方を変えれば、生産コストが高くても、モノは売れると語ります。
#bi_10aniv ジョンさん「世界では、今モノの買い方が変わってる。最近の社会起業家たちは、モノが人に届く方法についてイノベーションを起こしている。ディストリビューションのあり方次第で、高いコストでも商品が売れる時代。」
— The Big Issue Japan (@BIG_ISSUE_Japan) September 4, 2013
そんな話を聞いた矢先、ファクトリエというスタートアップを発見しました。これ、まさに流通のあり方を変える、問題解決のあり方ですね。
ファクトリエは高品質のアパレル商品を提供するオンラインストア。流通のあり方が特徴的で、ようするに、中抜きを排除し、安価に提供することに成功しているわけです。
シンプルなブランドメッセージ。
また、私たちは流通をシンプルにするとともに、
インターネットを活用することで店舗における
施工・維持費、人件費、教育費、その他光熱費等をかけません。
そのすべてをクオリティとデザインに注ぐことで、最高品質で
デザイン性の高いモノを作ります。
一般的には、ブランド自体が商品を作っているわけではないそうです。へー。
ファクトリーブランドを端的に言うと、工場がオリジナルで手掛けているデザインブランドです。
世のショップで並んでいる洋服の”モノ自体”は、タグのブランドが直接、作っていないケースがほとんど。
事実、Factelier(ファクトリエ)で取り扱っているラインナップにはあの世界的有名ブランドから生産を委託されている工場も少なくありません。
この種の流通側面のイノベーションって、多様な商品・サービスで実現可能ですよね。
先日紹介したフリーランス化するウェディングプランナーというのも、流通のイノベーションと捉えることができます。式場という中抜きを排して、直接プランナーとやり取りする。それによってフレキシブルな挙式を実現。
リアルな商品はもちろんですが、個人的にはサービス業におけるイノベーションに興味があります。サプライチェーンの構造上、フレキシブルさが失われているもの、「中抜き」によって価格が高くなってしまっているものなんかは、相性が良さそう。美容院なんかも、直接美容師に切ってもらえるようになればサービスの内容・価格が変わるかも?
こうした流通面のイノベーションは、インターネットの得意技だとも思います。
社会起業家と呼ばれる人たちも、テクノロジーを活用すれば低コストで良質なサービスを提供できるようになるかもしれませんね。実際、ジョン・バード氏は「我々はAmazonを見習うべきだ」といった主旨の話も語っていました。
流通を切り口にしたイノベーション。みなさんも何か事業アイデアを考えてみてください。ワークショップとかやりたいですね。