これ良い記事なんですが、妙な絡み方をされているので言及しておきますかね。
日本への諦めと×お金へのあきらめマトリクスで理解する―若者の働き方4タイプ | 大石哲之のノマド研究所
「お金を否定しシェア経済を信奉する」?
降りる生き方は、②に位置する。かれらは資本主義には懐疑的であるので、グローバルで戦うという発想にはならず、衰退を受け入れ、これ以上の経済成長は望まず、限りあるものをどうシェアしていくかということが基本的な考え方だ。
同時に、日本で肯定されているような会社、正社員といった社会にたよらず、フリーランスやネット、ゲリラ的な方法での生き方を思考する。資本主義に懐疑的でシェア経済を思考し、同時に日本も信頼していない。日本的枠組みを攻撃し、お金を否定しシェア経済を信奉するイケダハヤト氏はこの立場の最も極端な立場だ。
大石さん、頭いいはずなのですが、他者批判をする際にはその慎重さが一気に無くなる方ですね…なんというかもったいない。「年収150万円で〜」で書いている通り、ぼくはお金を否定してません。むしろ、お金はすばらしいと思っています。でなければ、スタートアップのマーケティングや、NPOの寄付集めなんて手伝いませんがな。
お金は変化を生み出す
とはいえ、批判するなら著作を読め、というのも不親切なので、ぼくのお金に対するスタンスを書いておきましょう。
お金というのは、社会にプラスの変化を生み出すエネルギー源です。ぼくはそう理解しています。
もっともわかりやすいのがNPOにおけるお金のあり方。たとえばビッグイシューという組織は、「ホームレス問題」という日本の社会的課題にタックルしています。スタッフの数はそれほど多くなく、雑誌も爆発的に売れているわけでもなく、寄付も同様に爆発的に集まっているわけではありません。
一方で、ホームレス問題は解決にはほど遠いのが現状です。直接伺ったことはありませんが、想像するに、ビッグイシューの経営陣は「人員を増やして、さらなる課題解決に乗り出したい」と考えていると思われます。
が、人を増やすためには当然人件費が掛かります。雑誌が馬鹿売れし、寄付もバカスカ集まればいいですが、そう簡単ではありません。ビッグイシューに限らず、「もっと人がいれば課題解決を加速できるのに、お金がないから人を雇えず、インパクトがなかなか出せない」という状況に、多くのNPOが苦悩しているように見えます。
(ついでに宣伝。ビッグイシューのすばらしいコンテンツは「ビッグイシュー・オンライン」で立ち読みできるのでぜひ)
ベンチャー企業におけるお金というのも、ぼくはすばらしいと感じています。
たとえばインキュベーション。賛否はあるとは思いますが、「いいからやってみろ!」数百万円の事業資金を出資し、プロダクトを世に出していくのは、まさに価値の創出です。シンプルに、インキュベーションは「お金がなくて実現できなかった事業アイデア」を世に出すという機能を果たしているのです。いやー、お金ってすごいじゃないですか。
ちょうどクックパッドが10億円でCytaを買収しましたが、ベンチャー企業が成長し、その資金で新たな価値を創出するというのもすばらしいですね。Cytaはこの資金で、ますます事業拡大していくことでしょう。
お金についてネガティブなことがあるとしたら、「心身の健康を損ねてまで、お金のために働いてしまう人々がいる」ことでしょう。ブラック企業しかり。この場合は、むしろお金を生み出すことは、社会にとってマイナスの影響を与えているとすらいえます。
お金を生み出すことによって、社会に問題が溢れるようになるというのは、「経済」の原義から言って本末転倒でしょう。
その上で、ぼくが「年収150万円で〜」に書いたのは、「よくよく考えてみれば、独身ならそんなに生活コスト掛からないんじゃね?もしも150万円で暮らしていけるのなら、300万円程度のために自分をぼろぼろにするのは、バカらしい話じゃないですか?」というメッセージです。生活態度の話をしているだけで、別に「お金を否定」しているわけじゃございません。
お金に頼らなくても社会はつくれる
ただ、「お金を否定する」はいきすぎですが、「お金を相対化する」ことは大切だと考えています。自分の人生ひとつとっても、別に大金がなくても幸せになれたりしますから。
社会全体で見ても、お金に100%依存せずに、安定した社会をつくることは可能だと考えています。たとえば自分たちで道路を造っちゃった下條村なんて、象徴的な存在ですよね。コミュニティの力を使えば、お金に対する依存度を下げることは十分可能です。
これから日本経済が縮小していくことは明らかだ、とぼくは諦めているので、「規制緩和してバリバリ経済成長だ!」という方向よりも、「お金に頼らない方法」で社会をいかにしてつくっていくか、に強い関心があります。
まとめますと、
・お金は変化を生み出すエネルギー源です
・しかし、お金のために心身を壊してまで働くのはおかしい
・お金に100%依存せずとも、個人は暮らせるし、社会もつくることができる
なんてところがぼくの「お金観」です。「日本的枠組みを攻撃し、お金を否定しシェア経済を信奉するイケダハヤト氏」という評価は的外れであると言わざるをえません。捉え方によっては、むしろぼくのような考え方は日本的だとも思います。
ということを、ぼくは2012年の11月に書いているのです。 未読の方で、関心がある方はぜひ。レビュー欄が賛否両論で我ながら面白いです。