5月21日、普通の市民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」が施行されて丸3年が経過した。これまで、裁判員候補者として選定された約31万人のうち、裁判所から「呼出状」を送られた人は約23万人。だが、選任手続の日に出頭した人はその半数以下の約11万人に留まっている。
裁判員制度は「国民の義務」。「70歳以上」「学生」「病気や家族の介護」「重要な仕事に支障がある」など正当な理由がなく、選任手続きに出頭しない場合は「10万円以下の過料」という罰則規定まである。それでも、事前に辞退を認められた人を含め、呼び出しを受けた人の半数以上が選任手続きに出頭しなかったことになる。
さらに、ある裁判員裁判では、呼出状が送られた100人近い候補者のうち、選任手続きの日に出頭したのがたったの18人。このうち9人の辞退が認められ、残る9人全員が裁判員6人、補充裁判員3人に選ばれた裁判もあったという。
こうした事態に、『裁判員制度はいらない』(講談社プラスアルファ文庫)の著者である高山俊吉弁護士は「裁判員制度は、市民が裁判所に行くことで成り立っています。その前提が崩れているのですから、裁判員制度はいつ崩壊してもおかしくない」と指摘する。
今年1月から2月に最高裁が実施した「裁判員制度の運用に関する意識調査」(回答数2000人)によれば、「裁判員として刑事裁判に参加したいか」の質問に対して、42.3%が「あまり参加したくない」、41.1%が「義務であっても参加したくない」と回答している。つまり、国民の約83%が「裁判員をやりたくない」と思っているのだ。
前出の高山弁護士はこう語る。
「『裁判員法』が成立したのが2004年5月です。それから約8年。また、制度施行から3年近くたった今年初めでも、なお国民の約83%が『裁判員をやりたくない』と考えているのです。国策として推進される制度として、こんなに長い間、国民の間に定着しない例はほかにないと思います」
しかし、最高裁判所長官の竹崎博允氏は、5月3日の憲法記念日に発表した談話の一部で、「比較的順調に運営されてきたということができると思います」(最高裁ホームページより抜粋)と裁判員制度に一定の評価を与えている。はたして裁判員制度はどこへ向かうのか。
(取材/西島博之)
■週刊プレイボーイ24号「裁判員制度ってホントに必要なのか?」より