「そのタチウオを返せ。こんな値段では売れない。売らない方がましだ」(漁民)
「そんな値段で買い取って、ソウルに送っても誰も買わない。そのまま腐らせるつもりか」(水協職員)
5日午前、済州道南部の西帰浦水協(漁協)では、競りが終わるや否や、漁民10人余りが販売本部に押し掛けた。漁民はタチウオの落札価格が暴落したことに興奮していた。ある漁民は「これでは漁船の燃料代も出ない。タチウオを抱えて死んだ方がましだ」と泣き叫んだ。
前日まで1箱(10キロ入り)が平均26万ウォン(約2万3600円)だった落札価格は38%も暴落し、平均16万ウォン(約1万4500円)で競り落とされた。14万ウォン(約1万2700円)でようやく買い手が付いたケースもあった。日本の福島第一原発で汚染水流出が明らかになり、水産物の消費が急激に減少したためだ。
同日午後、水産物センターで知られる済州市二徒洞の東門市場にも客の姿はほとんどなかった。たまに訪れる客も野菜や果物を買っただけで帰っていった。市場の至る所に「水産物の原産地を絶対に偽装しません」「日本産水産物は絶対に売りません」と書かれた横断幕が掲げられていたが、客は水産物に目もくれなかった。市場関係者は「高くても常に売れた済州島のタチウオがこれだけ値下がりしても売れないのは初めてだ」と話した。
■韓国水産業界にも影響拡大
韓国の水産業界は、福島第一原発の放射能汚染水問題による直撃を受けている。水産物の消費が減り、落札価格が急落している。西帰浦水協では今が旬のタチウオ、アマダイ、サバなどが前年同期に比べ30%以上安値で取引されている。昨年は入荷が足りずに売りたくても売れなかったが、現在は競りに掛けられた量の70%しか売れない。韓国政府が「韓国の領海、近海には放射能汚染水は流入していない」と説明したにもかかわらず、消費者の不安をぬぐい去るには至っていない。