ロシア・サンクトペテルブルクで行われた20カ国・地域(G20)首脳会合は6日閉幕した。焦点のシリア問題は首脳宣言で言及されなかったが、米国など11カ国が「力強い国際的対応を求める」とする共同声明を発表し、日本もこれに加わった。ただ、安倍晋三首相は対シリア武力行使に明確な賛意を示さない“あいまい戦略”を取っており、国内外の事情をにらんだ深謀遠慮がうかがえる。
11カ国の共同声明では、シリアでの化学兵器使用疑惑について「シリア政府に攻撃の責任があることを証拠は明白に示している」と指摘。米国の立場を支持した。
G20サミットでは、米側の強い意向で日米首脳会談が実現。共同声明への参加は、オバマ米大統領の熱意に応じた形だ。ただ、首脳会談で首相は「大統領の考えは十分理解している」と述べるにとどめ、軍事介入への支持は表明しなかった。
背景には、日本維新の会の橋下徹共同代表や自民党内にも軍事介入に慎重論が根強く、「無条件の対米追従」というイメージを回避したい思惑がある。
さらに、軍事介入に反対するロシアとは北方領土問題を抱えており、「突出した対米支持は避けたい」(首相官邸筋)事情もある。日本時間8日には2020年夏季五輪開催地を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会を控えており、この時点で立場を鮮明にすることは、一定の票を逃す可能性があることも考慮したとみられる。