2020年夏季五輪の東京招致に暗雲が垂れ込めてきた。3都市の中で「優勢」と伝えられてきたが、東京電力福島第1原発の汚染水問題が注目され、国際オリンピック委員会(IOC)内でも疑問の声が上がり始めたのだ。強力なロビー活動で猛然と追い上げるマドリード(スペイン)と、イスタンブール(トルコ)。安倍晋三首相はIOC総会で反撃の最終プレゼンテーションに挑む。「最後は運次第」ともいえそうだが、歴史を振り返ると今回は強運が味方につく。ポイントは「安倍一族」「2度目の正直」「戦争」の3つだ。
「IOC委員の中には東京ではなく、福島の状況をコントロールできていないことを問題視している人がいる。それに十分言及せずに支援は得られないのでは」
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた、東京招致委員会の記者会見。竹田恒和理事長に対して、海外メディアの記者はこう詰め寄った。
汚染水問題は各国メディアが注目している。
米CNNは「懸念材料のカタログに新たに加えられた」と表現。スペインのエウロパ・プレスは「原発の問題が未解決であることは、東京の五輪招致にも影響を与えるだろう」との元閣僚の発言を報じた。中国の新華社は「日本政府は危機を見くびり続けている」と辛辣(しんらつ)だ。
日本政府が打ち出した汚染水対策は、ロシアでのG20(20カ国・地域)首脳会合を途中退席し、政府専用機でブエノスアイレスに乗り込む安倍首相が最終プレゼンテーションで説明する。そのための英語スピーチも用意しているが、開催都市を決める7日夕(日本時間8日早朝)のIOC総会で、委員の疑念を拭えるかどうかは混とんとしている。
こうしたなか、東京五輪招致の成功を導くような「過去との類似点」が指摘されている。
戦後、日本が五輪招致を行ったのは、今回を含めて計10回。このうち、1964年東京、72年札幌、98年長野の3回が招致に成功した。注目すべきは、開催都市を決めるIOC総会が行われた年だ。