特集ワイド:強まる表現規制 問題の核心は「知る権利」 日本漫画家協会理事長・ちばてつやさんに聞く
毎日新聞 2013年09月05日 東京夕刊
■社団法人日本漫画家協会の意見書「本当に守るべきもの」(要約)
最近、表現規制につながりかねない出来事が続いていることは、本当に憂慮すべきことだ。東京都の青少年健全育成条例や児童ポルノ規制法案(児童買春・ポルノ禁止法改正案)などで検討されているのは「不健全」な表現をあぶり出し、それらを規制することだ。「はだしのゲン」の「閉架」措置も、それを決めた大人たちの無自覚な傲慢さと尊重すべき子供の感性への過小評価を強く疑わせる。「風立ちぬ」から喫煙推奨のメッセージを受け取ってしまうのも主題を見失った残念な鑑賞の仕方だ。このような規制が続くと薄暗く住みにくい国の形成が見えてくる。この国は「マンガ」をクールジャパンと持ち上げておきながら、片方で表現を規制し足を引っ張るようなことをする。「規制」は発想を阻害し表現の幅をせばめ、文化的土壌を貧しくする。もっと文化的な多様性を前向きに評価し、その自由さを保障する表現の手段について可能な限り寛容でおおらかでいてほしいと、強く、強く願う。それこそが本当に起こってはならない「現実」への警鐘となり得る、と我々は信じているから。
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■人物略歴
◇ちば・てつや
1939年東京生まれ。2歳で家族と旧満州・奉天(中国遼寧省瀋陽市)に渡る。56年プロ漫画家としてデビュー。主な作品に「ちかいの魔球」「紫電改のタカ」「おれは鉄兵」「のたり松太郎」など。2005年から文星芸術大学(宇都宮市)教授を務める。
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