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【社会】

五輪招致委「250キロ離れ東京は安全」 福島県民「差別的」

 二〇二〇年夏季五輪開催を目指す東京招致委員会の竹田恒和理事長が、ブエノスアイレスで開いた記者会見で「福島とは離れている。東京は安全だ」と発言したことに、東京電力福島第一原発事故に苦しむ福島県民から「東京が安全ならいいのか」「差別的だ」と反発の声が出ている。

 竹田理事長は四日、原発事故について「東京は水、食物、空気についても非常に安全なレベル」「福島とは二百五十キロ離れている」と述べた。

 「『東京は安全』と強調するのは『福島の現状はひどい』と認めるということ。ならばなぜ、ひどい福島を放置してきたのか。ばかにしている」。福島市から東京都練馬区に自主避難している主婦二瓶(にへい)和子さん(37)は憤る。

 安倍晋三首相は五輪招致の訴えに臨むが、二瓶さんは危機的な汚染水問題を挙げ「先にやることがあるのではないか」と批判する。

 福島県民は今も約十四万七千人が避難している。第一原発でも一日約三千人が過酷な作業に当たっている。

 安倍首相(自民党総裁)は昨年の衆院選と今年の参院選で第一声を福島で上げ「復興」を強調した。だが、汚染水対策の基本方針を打ち出したのは五輪開催地決定が迫ってきた九月三日だった。

 試験操業が中断に追い込まれた相馬双葉漁業協同組合(相馬市)の佐藤弘行組合長も「『絆』や『復興』ときれい事を言っても、腹の中ではそう思っているということか。試験操業では二重三重に検査して安全なものを出してきた。東京だけ安全だというのはおかしい」と語った。

 全住民が避難したままの浪江町の駅前通り。避難先の福島市から、営業していた書店の様子を見に来た郡(こおり)有二さん(64)は「オリンピックの前に、やることがあるんでねえか」と、ため息をついた。

 

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