逆風の東京を“最終兵器”がアシスト。いよいよ日本時間8日未明、2020年五輪の開催都市が決定する。56年ぶり2回目を狙う東京、初開催をアピールするマドリード(スペイン)とイスタンブール(トルコ)が、国際オリンピック委員会(IOC)総会(ブエノスアイレス)での投票に向けた最後の追い込みに入った。欠席者がいなければ1回目投票の“有権者”は97人。最低でも3分の1は確保したい東京は、ここにきて汚染水問題で窮地に。だがその舞台裏で、かつてのドンが“神風”を吹かすべく大量票をもたらそうと動いていた――。
現地時間7日に3都市のプレゼンテーションと記者会見が行われた後、午後3時45分(日本時間8日午前3時45分)から投票に入り、過半数獲得がなければ、最下位を除外して決選投票を行う。結果は午後5時(同午前5時)にジャック・ロゲIOC会長(71)が発表する。
立候補都市の国の委員は、自国の都市が残っている間は投票できない。日本、スペイン、トルコの委員は5人。会長も参加できないため、現在のIOC委員103人から6人を引いた97人が1回目に投票できる。49票を獲得すればそこで勝利。逆に3分の1にあたる33票を割れば初戦敗退となりかねない。
3都市がかつてない激戦を繰り広げているといわれるなか「1回目でトップに立ちたい」と東京招致団の有力メンバーは話す。一方で基礎票については「40票には届いていないのではないか。まずは33票を固めたい」と気持ちを引き締める。
東京招致委員会理事長で日本オリンピック委員会(JOC)会長も務める竹田恒和氏(66)は今年、延べ50か国を回って支持を呼び掛けた。激烈な選挙戦で、6月に“最終兵器”と期待され、JOC最高顧問に就任した堤義明元同会長(79)が東京勝利を口にしたという。8月末に堤氏と会った元JOC幹部が明かす。
「10票ぐらいを目標に動いているようだ。『東京に決まるだろう』と、かなり自信ありげな様子だった。堤さんはIOC委員に顔が広い。詳しい活動は分からないが、人を介して、意のあるところをくんでもらおうとしているのではないか」
有価証券報告書の虚偽記載事件で有罪判決を受ける以前は、西武グループのドンとして君臨した堤氏。当時はアイスホッケー、スキーでも国内競技団体の会長を務め、それぞれの国際連盟のルネ・ファゼル会長(63)、ジャンフランコ・カスパー会長(69)らIOC委員たちと親しい。
もちろんこうした委員には東京招致委側も働き掛けているはずで、堤氏が10票を固めても、全てが新規獲得票になるとは限らない。とはいえ、なりふり構わぬ総力戦にあって、その存在は頼もしく映るに違いない。
97人の有権者を大陸別にみると、欧州の39人を筆頭に、アジア22人、北中南米18人、アフリカ12人、オセアニア6人と続く。アジアには外交関係が悪い中国・韓国・北朝鮮の委員が計6人。
「本来なら韓国や中国に、東京のために動いてもらうところだけれど、そういう状況ではない」(別の元JOC幹部)
まことしやかに語られる「24年大会は100年ぶりの開催を目指すパリで決まりだから、20年の欧州はない」との話も怪しい。「パリ五輪の話が盛り上がったのは昨夏の1か月間だけ。オランド大統領もその後は五輪の話をしていない。五輪の報道もない」(在欧州ジャーナリスト)
賭け屋のオッズでも1番人気とされている東京だが、優位は紙一重。ここにきての汚染水問題でますます状況は複雑さを呈してきた。
加えて、前回16年大会の落選時に「IOC委員はうそつきだ」と東京招致団幹部が漏らしたというように、その投票心理は読みにくい。義理もあれば打算もある。「イスタンブールは負けるだろうと同情して、1回目だけでもということで投票する人がいれば、どうなるか分からない」と冒頭の東京招致団メンバーは警戒心をのぞかせた。
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