検証・大震災:福島第1原発 汚染水対策、漂流2年半
毎日新聞 2013年09月07日 東京朝刊
「地下水は海へ一方向に流れており、陸側に遮水壁を設けても汚染水が(しみ出て)海に漏れるリスクは変わらない」。11年10月末、東電はこう説明し、建屋への地下水流入を防ぐ陸側遮水壁の建設を見送る。建設を決めたのは海側だけだった。
東電は建屋周辺に井戸=図中<4>=を掘り、流入前にくみ上げて海に放出する「バイパス計画」を提示。経産省資源エネルギー庁も「陸側遮水壁を大規模にやろうとすれば高線量の中、作業が大変でお金もかかる。バイパス計画と海側遮水壁があれば効果があるだろう」と受け入れる。
東電の発表に先立つ9月19日にウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の総会で、細野担当相が事故収束に向けたステップ2完了(原子炉の冷温停止)時期を当初予定の翌年1月中旬から「年内に前倒しする」と宣言。10月11日にあった政府・東電の会議では、中長期対策チームが経産省原子力安全・保安院幹部や、原子力委員らメンバーを前に「地下水による海洋汚染拡大には、当面、海側遮水壁で対応する。細野担当相にも了解を得ている」と報告し、了承されていた。
経産省幹部は「高濃度汚染水が海に漏れないよう何とかできるんじゃないかというムードがあった」と振り返る。