原子力発電の「本当のコスト」を積算すると、従来型石炭火力以外のすべての発電手段より高額になる
従来型石炭火力発電と原子力発電は、淘汰されるべき運命にあり、大規模送電網もまた、その後を追うことになる
マーク・ビットマン / ニューヨークタイムズ 8月23日
発電コストについては発電手段によって、あるいは様々な条件によって多様に変化します。
そしてどのような発電手段であっても反対する人々が必ずいますが、実際には様々な発電手段が稼働しています。
しかしそれらの中で形式的にではあっても環境を守る、あるいは周辺住民の健康を守るための費用を、発電コストに計上している例はきわめて稀です。
こうした外部費用を加算した場合、原子力発電を行うための費用は、石炭を除く他のすべての発電手段よりも高額になります(気候変動問題に対処するため、真っ先に従来型の石炭火力発電がやり玉にあがる理由もここにあります)。
私たちに気候変動を阻止するという強い意志があったならば、従来型の石炭火力発電はこの20年間で全廃させられていたはずです。
そして次に続くのは原子力発電であったはずなのです。
しかし、地球温暖化や環境にとって脅威となる2つの発電手段、従来型の石炭火力発電と原子力発電に代わって、真の再生可能エネルギーがエネルギー需要に対する供給体制を万全なものにするまでの間、新たな原子力発電所の建設が行われなくなる可能性があります。
そうなれば、今度こそ本質的な方向転換が可能になるでしょう。
原子力発電の支持者たちは、原子力発電は従来型の石炭火力発電よりも優れた発電手段であり、これまで通り手厚い補助金を支給すべきだと主張しています。
従来型の石炭火力に代わるものが原子力発電しかないというのであれば、その主張にも正当性はあります。
しかし現実はそうではありません。
天然ガス(開発途上ですが、改良の余地は大いにあります)と風力発電は、エネルギー効率も含め、すべての面において原子力発電よりも安価な発電手段です。
太陽光発電に至っては、手厚い補助金を差し引いた後の原子力発電のコストをすら凌駕する経済性をすでに実現しています。
いくらかの研究結果により、再生可能エネルギーは現在の技術水準で、2050年にこの地球上で必要になる電力の80%を供給可能だとしています。
しかも発電部門における温室効果ガスの削減も、80%行うことが出来るのです。
地球温暖化防止策、そのために古くて危険な発電手段を復活させる理由にはなりません。
進歩が続く再生可能エネルギーをこそ選ぶべきです。
その方がより現実的な選択です。
しかし再生可能エネルギーは、まだまだ現実には利用されていません。
水力発電を除く再生可能エネルギーの昨年度の全発電手段に占める割合は5%に過ぎませんでした。
しかしその成長速度は目覚ましく、太陽光発電と風力発電による発電量はこの5年間で4倍に増えました。
アメリカの連邦エネルギー規制委員会の議長は今週、今後太陽光発電システムは2年ごとに倍に増えていくだろうとの予測を公表しました。
メインフレーム・コンピュータがパソコンに取って代わられたように、郵政事業が電子メールに取って代わられたように、発電会社は太陽光発電システムに今の地位を奪われてしまう事を何より恐れているのです。
技術の進歩が古くて危険な発電手段 – 従来型石炭火力発電と原子力発電を追いつめています。
従来型石炭火力発電と原子力発電は、淘汰されるべき運命にあります。
そして大規模送電網もまた、その後を追うことになるでしょう。
それは地球上に生きる私たちにとって、歓迎すべき事態なのです。
※マーク・ビットマン(Mark Bittman)は、オピニオン誌のコラムニストであり、タイムズ誌を代表する食に関するコラムニストです。
彼のコラム『Minimalist(ミニマリスト、ミニマリズム支持者)』は、タイム誌で13年間連載が続いています。
〈 完 〉
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2013/08/23/the-new-nuclear-craze/?_r=0
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
この記事の執筆者が『食』を専門とするコラムニストであるという点に着目して良いと思います。
エネルギー問題や環境問題の分野だけでなく、様々な分野の人々がそれぞれの立場から原子力発電の非なることを訴えていく。
こうした動きの広がりに期待をしたいと思います。
明日8日(日)は新規の掲載はお休みです。
新たな掲載は明後日9日(月)になります。
あしからずご了承ください。
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
【 傑作写真集 : 9月第1週 】
アメリカNBCニュース 9月4日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
飛んできたファウルボール。アメリカ大リーグ、ボストン・レッドソックス対ボルティモア・オリオールズのレギュラーシーズンの試合中のひとコマ。8月28日。(写真上)
インドのアシャ動物保護財団・動物病院で、保護されたショウジョウサギの雛を手のひらに載せるボランティアでやってきたイギリスの獣医。9月3日。
インドでは違法な森林伐採により100羽以上のショウジョウサギが死滅する中、アシャ動物保護財団は400羽以上のアショウジョウサギを保護しました。(写真下・以下同じ)
8月30日、国内の報道機関が体制側に牛耳られていることに抗議して、ブラジルのブラック・ブロックという名のグループがサンパウロ市内でデモを行いました。
9月1日、ポルトガルのゴンドマルの港の近くで森林火災が発生、桟橋から避難するため走る男性。
トルコの首都アンカラの眺めを眼下に、坂道を上る新婚カップル、8月29日。
9月2日に、反体制派の兵士が子供を連れて、破壊された橋を横断しようとしています。シリア東部、デリゾール。
9月5日、生まれつき両手両足が無いオーストラリアのニック・ヴュージシックがシンガポールの海の生命パークで、アクリル製の観察用容器に入り、サメと一緒に泳ぎます。
9月4日、アフガニスタンのカブールで、お茶売りの合間にフェンスによじ登って遊ぶ子供たち。
-
このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。サイトマップ
-
最近の投稿
@idonochawanツィート
健康関連リンク
アーカイブ