韓国司法:日本側の理解超える判断繰り返し…摩擦の根に
毎日新聞 2013年09月01日 14時39分(最終更新 09月01日 15時22分)
ソウル高裁は今年1月、靖国神社への放火を「政治犯罪」だとして、韓国で捕まった中国人容疑者の日本への引き渡しを拒否。さらに、2月には中部・大田地裁が、対馬から盗まれて韓国へ持ち込まれた後、韓国の仏教界から「もともとは韓国のものだ」という主張が出た仏像の日本への返還を当面差し止める仮処分決定を出した。
一方、韓国の司法による特異な判断は日本関係に限らないとの指摘もある。
憲法裁は今年3月、70年代の独裁下で政治的集会などを禁じた大統領緊急措置3件について「違憲」決定を出した。この時に判断基準とされたのは、87年の民主化で制定された現行憲法。当時は存在しなかった法律を遡及(そきゅう)適用したことになる。
韓国事情に詳しい小此木政夫九州大特任教授は「日本との法文化の違い」が背景にあると指摘。「韓国では、道徳的に問題かどうかという国民の情緒が重視される。半世紀前に結んだ条約でも正義に反しているなら正すべきだという考えが出てくる」と話している。
◆「価値観の共有」遠く
日本での対韓認識は、李明博(イミョンバク)前大統領の竹島上陸(昨年8月)で悪化した。だが、最近は日本政府内から「韓国も法治国家になったと思っていたが、違ったようだ」(法務省幹部)という声が出るほどだ。悪化した日韓関係を韓国の司法判断がさらにあおる結果となっている。
対韓外交に関係する外務省幹部は、日韓関係の重要性を説明する際に必ず使われてきた「基本的な価値を共有している」という表現について「もう使うのをやめようという声が官邸内で出ている」と話す。「理解不能な判断を繰り返す韓国の司法を見ていると、法の支配という基本中の基本で違うという不満が強いから」だという。
一方の朴大統領は「正しい歴史認識」を日本に求める「原則」姿勢を崩さない。さらに、大統領に近い韓国政府高官は「首脳会談に応じないことなどで、日本には強い圧迫を加えている」と話す。
陳昌洙(チンチャンス)世宗研究所日本研究センター長は「10月の例大祭でも安倍首相が靖国神社を参拝しなければ、関係改善へ向けた水面下の協議は始まるだろう。だが、その時には集団的自衛権の解釈変更が問題となりそうだ」と、早くも懸念している。