【コラム】 ウェブページの証拠化についての一私見
執筆 弁護士中澤佑一
インターネットの普及に伴い、裁判の場でホームページ・ウェブページが証拠として提出される機会も増えてきました。また、インターネット上での名誉毀損・ドメインの不正使用など、ウェブページが最も重要な証拠となる訴訟の類型も誕生しています。
しかし、ウェブページを証拠として裁判の場に提出する方法については、あまり議論は進んでおらず、法曹界全体での統一的なルールの様なものも未だ存在していないように思います。そこで、現在訴訟の場で行われているいくつかの方法と、その問題点を整理し、今後のあるべき証拠化の方法についての私見を述べさせて頂きます。
1 証拠として求められる要素と、ウェブページの特殊性
もちろん訴訟の種類や、争点によって立証すべき事項は異なるのですが、大きくいえば、ウェブページを証拠として提出する場合、それによって立証しなければならない事実は以下の2つです。
① ウェブページに書かれた情報の存在および内容
② その情報と事件の結びつき
この2点を念頭に置いて頂き、話は少し変わりますが、これまでも現在も、裁判で使われる証拠は大体が「物」です。「物」というと、裁判に詳しい方は、「証拠物」と「書証」の話を思い浮かべるかもしれませんが、ここでいう「物」とは、実体のあるもの、「データ」の対義語としての「物」とお考え下さい。例を挙げますと、契約書は、「書証」ですが、その「紙」が実体として存在しているという意味で、「物」であります。
通常の紙の契約書を証拠として提出する場合を考えて見ましょう。
この場合、裁判官は契約書を読み、その契約の内容が裁判の資料となるのですが、同時に、契約書自体を「物」として見て、署名の筆跡や印鑑などから、事件に関係のある契約書であるかということも判断します。
つまり、上記の①の部分は契約書の字面を読ませることで、②の部分は「物」を見せることで行ってきたのです。
これに対して、ウェブページはデータであり、「物」ではありません。よって、②の部分については通常の「書証」とは異なる別途のフォローを行う必要があるわけです。
この②の部分については、URLとの結びつきを示すことで行います。URLを出発点にして、当該情報の発信者を特定できるからです。
ウェブページの証拠化について述べている判例(知財高判H22.6.29 平成22年行ケ10082号)も以下のように述べ、URLの記載のない証拠の価値を否定しています。
「インターネットのホームページを裁判の証拠として提出する場合には,欄外のURLがそのホームページの特定事項として重要な記載であることは訴訟実務関係者にとって常識的な事項である」
よって、まとめますと、ウェブページを証拠提出する場合には、
A ウェブページに書かれた情報の存在および内容
B その情報とURLの結びつき
の双方を示せる形で行う必要があります。
2 裁判の場で行われているウェブページ証拠化の方法例
以下、裁判での証拠提出方法の実例を挙げ、上記の観点から検討を加えます。
(1)ウェブページをプリントアウトした紙を提出する方法
ブラウザで表示したウェブページをそのまま印刷し、その印刷した紙を証拠として提出する方法です。
簡易勘弁な方法であり、インターネット上の紛争以外も含んだ全訴訟を見れば、おそらく一番多く行われている方法ではないでしょうか。私も、当該ウェブサイトの存在自体には争いが無いときなどにはこの方法を使うことがあります。
【問題点】
URLとの結びつきが弱いです。
最低限の対策として、印刷する際にヘッダー等にURL情報が記載されるようにしなければなりませんが、URL表示を簡単に書き換えることができる以上、相手が本気で争ってきた場合には証拠としての価値を維持できるかは不明です。
ウェブページの日時が争いになる場合には、公証役場で確定日付を得るなども有効ですが(そこまでやらなくとも、郵便局の窓口で消印を押してもらうだけでもいいです)、URLとの結びつきの問題は残ります。
(2) 画面キャプチャ PrintScreen
ブラウザで表示している画面を、画像データとして保存する方法です。裁判所には、その画像データを印刷した紙を提出するか、万全を期す場合にはデータをCD-R等に入れて提出します。
前述の知財高判H22.6.29の指摘と、ブラウザから印刷する方法の問題点を考慮し、URLが明確に表示され、また画像データでありテキストデータよりもURLの偽装もしにくいと一般にはいわれている方法です。
弁護士の中にも、この方法での証拠化を勧める人もいますし、一応現在の所、裁判上問題なく通用している方法ではあります。
【問題点】
実は、URLの偽装がブラウザから印刷する場合よりもむしろ簡単です。
今ご覧になっている当事務所のHPのURL欄をクリックして適当に打ち直してから、エンターを押さずに他のところをクリックしてみて下さい。この状態でキャプチャをすれば・・・
今のところ、画面キャプチャで証拠化する方法に、上記のような観点から文句をつけている人はあまりいないようですが、私が担当している事件で相手側からこの方法で証拠が出された場合には、その問題のサイトを裁判所のHPのURLに打ち直してキャプチャしたものを「URL偽装が容易なこと」という立証趣旨で提出するかもしれません。
そこまでの事態になった場合に、証拠の価値がどのように判断されるかは今のところ不明です。
(3)動画で保存する方法
「ブラウザにURLを入力し実行、すると~~のページが表示された」という所を全てビデオカメラで撮影するなど動画で保存する方法です。裁判所には、動画をCD-R等に入れて証拠として提出します。
この方法は、URLの偽装が行いにくくURLとの結びつきを強固に示すことができる優れた方法です。
【問題点】
証拠を作るのが若干手間であるということ以外に特に問題はありません。ただ、動画であるとページ内容が読みにくいので、別途印刷したものも証拠として提出すると裁判所に対して親切かと思います。
実行可能な場合には一番安全な方法です。
(4)事実実験公正証書
前記(3)の方法を、公正証書で行う方法です。
それなりに費用が掛かりますので、(3)で十分な以上、現実的ではありません。
(5)検証
裁判官にURLを伝え、そのURLにある内容を裁判官に見てもらう方法です。
一応、制度的には考えられる方法ではありますが、裁判所の手間の問題等もあり、実際に行われた例はあまりないと思いますし、少なくとも私は知りません。
【問題点】
裁判の期日までにサイトが消されてしまうおそれがあります。
ウェブ魚拓等のシステムと組み合わせて、裁判期日までサイトを保全する必要もあるでしょう。
小活
一応、現在行われているの証拠化の方法については思いつく限りですがまとめました。
参考にして頂ければ幸いです。
今後への提案については、長くなりましたので後ほど。
