山梨のうどんといえば、ご存知「ほうとう」です。地元では、“うまい”ものを表現する、「うまいもんだよ、カボチャのほうとう」という決まり文句があるほど、愛され続ける郷土料理です。
ほうとうの起源として有力なのは、奈良時代に中国から伝来した、うどんの原型とも言われる「餺飥(はくたく)」です。ほうとうは、この「餺飥」が音便化(はくたく→はうたう→ほうとう)したものとされることから、うどんの原型を引き継いでいるとも考えられます。
戦国時代には、武田信玄が野戦食として用いたという逸話があり「武田汁」とも呼ばれます。水田の少ない甲州で、貴重な米の代わりに麺に着目したというわけです。
歴史には未だ不明な点も多いですが、冬は厳寒の山梨において、手間もかからず、身体を芯から温め、栄養も満点なほうとうは、農村の知恵が生み育んできた郷土料理なのです。
ところで、ほうとうの特徴って何でしょう。幅広い麺? モチモチとした食べ応え?実はそれだけじゃないんです。讃岐うどんと比較してご紹介します。
【1】「塩」
【讃岐うどん】コシを出すために、小麦粉に3%以上の塩を加える。
【ほうとう】塩を使わず、モチモチとした食感に仕上げる。
【2】「熟成」
【讃岐うどん】のど越しのために2時間以上の熟成をする。
【ほうとう】熟成をせず、食べ応えのある麺にする。
【3】「調理法」
【讃岐うどん】麺を茹でる。
【ほうとう】麺を下茹ですることなく打ち粉ごと煮込む。
見た目は似ていますが、製法や食べ方はかなり異なっているのです。
ほうとうは、たっぷりの野菜が摂れることも魅力のひとつ。白菜、ねぎ、にんじん、きのこといった普通の鍋物の野菜だけではなく、かぼちゃ、里芋、ごぼうなども入れ、じっくり煮込んで野菜の甘み、旨みをひきだすのです。
ほうとうの代表格「かぼちゃほうとう」は、煮込んだかぼちゃが、甲州味噌とだしをきかせたつゆに溶け込んで、とろとろになったところをいただくのがポイント。麺を打ち粉がついたまま煮込むので、つゆにもとろみがついて、麺との絡みは抜群。これからの寒い季節には、身体の芯からあたたまる1品です。
<プロフィール>
東京都生まれ、山梨県在住。
食べ物好きが興じて食品会社へ就職。家庭や外食での食事の在り方について興味を持ち、栄養学や調理技術を勉強中です!
【保有資格】
フードコーディネーター3級/食生活アドバイザー/ジュニア野菜ソムリエ
【太さ】かなり太め/幅3cm、厚さ6mm(調理後)
【コシ】ほとんどありません。モチモチとした食感。厚みがあるので食べ応えがあります。
【だし】煮干しが基本。(最近は、鶏ガラ、鰹なども使用。)
【味】本式は、甲州みそ(米・麦の調合味噌)を使用しますが、現在は、赤、白味噌をお好みで調合しているケースが多いようです。
特に必要ありませんが、お好みで七味など。
打ち粉をしたまま具材と煮込み、味噌で味付けをします。
麺や具材がとろとろに溶けてきたほうとうを、翌日は、再加熱してご飯にかけていただきます。また、おじやにしても美味しいです。
【カレーほうとう】
カレー味の洋風ほうとう。味噌とカレー粉で煮込みます。お子さんや若い人に人気のほうとうメニューです。
【あずきほうとう(粉ほうとう)】
あずきで味付けをした甘いほうとうで主食となります。「汁粉」の粉をとって、粉(こな)ほうとうとも呼びます。昔は正月やお盆などハレの日行事食でした。
【おざら】
夏に食べる、冷やしたほうとう料理です。麺を細めに切り、少し温かい汁に付けていただきます。つゆは一般的に濃いめの味で野菜や肉類などの具材が入っています。