115年続いた婚外子(非嫡出子)の相続差別がようやく解消された。最高裁は4日、国民の家族観が多様化している現状を重視し、格差を定めた民法の規定を違憲と判断した。先進各国が「個人の尊厳」を優先して、結婚や家族を巡る諸制度の見直しを進める中、日本でも同様の議論が盛り上がる可能性もある。
厚生労働省の人口動態統計によると、全出生数に婚外子が占める割合は1995年の1.2%から2011年は2.2%まで増加。最近では毎年2万人以上が婚外子として生まれている。
■95年には合憲
最高裁は4日の決定で「婚外子の増加のほか、晩婚化や非婚化、少子化、子を持つ夫婦の離婚の増加などで、結婚や家族の在り方、それに対する国民の意識が大きく多様化した」と指摘。社会の変化の一つ一つは違憲の決定打にならなくても、総合的に判断すれば「家族という共同体の中で、個人の尊重が明確に認識されてきたのは明らかだ」と明言した。
95年に大法廷が合憲と判断して以降、最高裁は小法廷でも合憲の判例を積み重ねてきた。ただ毎回反対意見が付き、4日の決定は「(最近は)合憲の結論をかろうじて維持していた」「相続制度の合理性は時代とともに変遷する」と指摘。社会の変化が歴史的な判例変更を後押ししたとの見方を示した。
もともと1898年施行の明治民法で婚外子差別が導入されたのは、法律婚を重視する家族制度が根底にあったためだ。欧米でも宗教上の理由で、かつては婚外子への根強い差別があった。
■他制度に影響も
その後欧米では事実婚の増加などから、60年代以降に差別撤廃が進んだ。韓国や社会主義の中国にも区別はなく、主要先進国で規定が残るのは日本だけ。国連はこれまでに計10回、日本に是正を求める勧告をしており、いわば外堀も埋められた形になっていた。
家族制度を巡っては近年、夫婦別姓制度や同性婚の是非、女性に限って離婚後180日間の再婚を禁じた規定の合理性などが議論になっている。いずれも賛否両論の対立が解けておらず、制度改正に向けた手続きは膠着したままだ。
最高裁が今回、日本社会で個人の尊重が進んでいると明確に指摘し、社会情勢や国民感情の変化と照らして法律の合理性を吟味したことは、こうした状況に一石を投じる可能性がある。個の尊重と旧来の社会制度との折り合いをどうつけるのか、改めて議論が活発になりそうだ。
婚外子差別、厚生労働省
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