aの0乗

● aの0乗 ●

 ネパールに住んでいる藤田さんから質問のメールをいただきました。

 それにしても、日本語のホームページなので、
てっきり日本でだけ見てもらっているものと思っていたら・・・。

 さすがインターネット!! ネパールですか〜。おどろきです。

 さて、こんな質問です。

     aの0乗=1 というのの意味がわからない

とのことです。

 そうなっていると暗記しているだけで、よくわからないというのですね。

 たぶん、教科書なんかでも、

     aの0乗=1 と定義(ていぎ)する

と書かれていますから、むりもないと思います。

 定義って、「・・・ってことにしましょうね」ってことですから、
そんな約束したくないって、言いにくいですよね。

 でも、どうして aの0乗=1 ってことにするのでしょう。
 じっさい、ひそかに 「1」でなくて「0」、つまり

     aの0乗=0 ってことにしたらダメなの

って、思っている人が多いのです。

 そういう人は、こう言います。

     aがないんでしょ。なんにもない時は0でしょ。

 そう、小学校で習いました。何にもないのに 0 と書く。
「0の発見」というくらい大事なことで、頭にこびりついていますね。

 では、どうして何にもないのに 0 としてはいけないのでしょうか。

 


● かけ算 ●

 さて、トランプをするとしましょう。

 「七ならべ」をしましょうか。それとも、「ババぬき」をしましょうか。

 そんなことも決めないで、カードをくばったりはしませんね。
 (くばられたカードを見てから、ちがうゲームをしたくなることはありますが・・・)

 では、トランプではなくって、計算をしましょう。

 「たし算」をしましょうか。それとも、「かけ算」をしましょうか。

 えっ、どっちでもいいのかって?

 とんでもありません。aの0乗の話をしているのですよ。

 aの3乗なら、

     a=a×a×a

ですから、もちろん今は「かけ算」をしているのです。

 もう、ゲームは始まっているのです。
 とちゅうで、「たし算」をしたいな〜って思っても、もうダメなのです。
 この「何乗」って話は、最初から「かけ算」のゲームだったのです。

 


● 0 と 1 ●

 さあ、「かけ算」です。どんどんかけましょう。

     a=a

     a=a×a

     a=a×a×a

 では反対に、どんどんへらしていきましょう。

     a=a×a×a

 ここで、aを1個へらすには、「かけ算」の反対の「わり算」をします。

        a×a×a
     a=---------- =a×a
          a

 続けてやっていきましょう。

        a×a
     a=------ =a
         a

 そうすると、

         a
     a=------ =1
         a

と約束するのが自然というものです。

 さらには、

         1
     a-1=----
         a

         1       1       1
     a-2=--- ÷a= ------ = ------
         a       a×a     a

          1          1         1
     a-3=------ ÷a =---------- = ------
         a×a        a×a×a     a

と約束するのが自然ですね。

 「たし算」で何にもたさなかったら、「」です。

 でも、「かけ算」で何にもかけなかったら、「」なのです。

 よく、「0からのスタート」っていいますね。
 これは、「たし算」の世界でのお話です。

 「かけ算」の世界では、「1からスタート」です。

 最初は(?)、aが何にもかけてなくて、つまりaが0個かけてあって、
これを「a」とかいて、「1」とします。

     1よりもaが1個多くかけてあるのが、「a

     1よりもaが2個多くかけてあるのが、「a

     1よりもaが3個多くかけてあるのが、「a

 反対に、

     1にするにはaが1個かけたりないのは、「a-1」つまり「1/a」

     1にするにはaが2個かけたりないのは、「a-2」つまり「1/a

     1にするにはaが3個かけたりないのは、「a-3」つまり「1/a

と、こんなぐあいに約束するのです。

 これって、とっても自然でしょ。

 


● 指数法則 ●

 これまでは、ちょっとわかりやすさをねらったこじつけ(?)だったので、
もう少し続けてお話しましょう。

 ふつうの社会でも、これまで通りやっていけるのなら、
なかまに入れてあげるってことありますよね。

 数学だって、これまで通りやっていけるのなら、
なかまはなるべく多いほうがいいって考えるのです。

     aの乗、aの乗、aの乗、・・・ 

のような正の整数だけでなく、

     aの乗とか、aの-1乗、aの-2乗、aの-3乗・・・

のように、0や負の整数だってなかまに入れたいのです。

 さらには、

     aの0.1乗、aの3分の1乗、aの/乗・・・

のような実数(じっすう)だってなかまに入れたいのですが、
今回はやめておきましょう。

 さて、これまで通りやっていきたいものって、いったい何でしょう。

 それは、指数法則(しすうほうそく)とよばれるものです。

 たとえば、aを2回かけたものとaを3回かけたものをかけると
aをあわせて5回かけたことになりますね。

     a×a=a

 つまり

     a×=a

 こんな法則が、「a」でもやっていけるのなら
なかまに入れてやろうというのです。

 そうしたら、「a」はどんな数だとなかまに入れてもらえるでしょうか。

     a×=a

 そうすると、a=1 でないとなかまに入れてもらえなくなりますね。

 だから、どんなに a=0 にしたくてもダメなのですよ。

 


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