極左、暴力団が蠢く「貧困ビジネス」の闇...西成マザーテレサ不審死事件【短期連載1】

2013年08月14日 タブー 事件 西成 警察 貧困ビジネス

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「どこまで調べたんや?」

 これが西成の住民の第一声であった。そこで今まで調べた事を思い出し概略を説明した。

「全然事件の本質から遠いわ」

 それを聞いて驚いていると、彼は語った。

「女医さんの事件では警察発表以外3人殺されてる、それも身元不明でな」

 2009年11月16日1時20分に、大阪府西成地区の木津川で一人の女性の遺体が発見された。女性は矢島祥子さん(当時34歳)。マザーテレサを尊敬し、インドまで会いに行ったこともある。その献身的な姿を称して「西成のマザーテレサ」と呼ばれるようになった女性医師である。

 この事件は各局でも報道されたので記憶に残っている方も少なくないだろう。何より、当初は警察が自殺と判断したのにも関わらず、遺族がその判断に異を唱え、殺人として捜査することなった珍しい事件として知られている。

 まずは不可解なことが多い事件の概要を説明したい。

 2009年11月13日22時、診療所の他の医師が死亡女性医師の診療所勤務を確認。

 2009年11月14日4時15分(天候:強い雨)、女性が警備システムをカードで作動させ、診療所を離れる。診療所のある商店街アーケード設置防犯カメラ(全8台)には女性は映っていない。

 2009年11月14日4時16分、診療所警備システム警報が作動。  

 2009年11月14日4時50分(警報作動から約30分後)、警備会社警備員が到着。診療所は無人。女性は知人にメールを送信。 

 同日、自宅近くの郵便ポストに、別の知人(男性、63歳、元患者、女性死亡後に自らを元交際相手と称する。)宛に絵はがきを投函。 

 2009年11月16日1時20分、第一発見者の釣り人が、着衣、立位、死後硬直状態の遺体を発見

 2009年12月、警察は死亡者の自転車を、住居、遺体発見現場双方と異なる市営団地(遺体発見場所の千本松渡船場から2.5km)で発見。自転車から指紋は検出されなかったと警察発表。

 2010年3月、西成警察署は「死体頭部の傷は生存中のもの」と発表。

 2010年9月14日、女性の遺族は大阪府公安委員会に対して再捜査要求、苦情申し立てを行う

 2010年10月14日、一周忌追悼会

 2011年2月3日、西成警察署は、死因は自殺と遺族に説明

 2012年8月22日、遺族提出の刑事告訴状が受理される

 2012年11月16日、死体遺棄罪での公訴時効が成立

 

【議論点】

●死亡時の負傷箇所

・首の圧迫痕

・頭頂部の瘤(こぶ):高さ3cm

・西成署による死亡診断(当初):「水死体引き上げ時に遺体を地面に置く際にできた。」

・遺族:「血流がある生存状態でのみ、こぶは出来る。」

・西成署による死亡診断(2010年3月):死体頭部の傷は生存中のもの。

・右顔面

・右手

 

●死亡推定時刻

警察作成の死体検案書では「2009年11月14日午前」、一方行方不明が確認された11月14日から15日14時30分まで、遺族は女性の衣服ポケットで発見された携帯電話にかけ続け、呼び出し音を確認。

・2009年11月14日8時30分、女性自宅から話し声がしたという証言

・2009年11月14日10時、女性死亡の報を受けたという証言者の存在

 

●遺体の状態

・死体検案書死因:溺死 ←女性は泳ぎが得意

・死後硬直:←水死体は関節が動くために死後硬直しない。

・着衣

 

●死体発見後の状況

・女性医師の自宅(診療所から自転車で5分の距離)の鍵は開いていた。 

・女性宅の郵便ポストが破壊されていた。

・部屋の中(テレビの裏、本棚の天板、ドア敷居の上、書籍等)に 埃(ほこり)が無く、現場検証では指紋非検出(西成署発表)

・洗濯機の中に衣服

(ウィキペディアより) 

 

 自殺にしては不審な点として遺族は大阪府公安委員会に異議を申し立てた。そして、西成署はまた捜査を開始していく。そこで西成の闇の深さを思知らされる。結果から言えば「これ以上、取材しない方がいい」と何人もの人間から忠告されることになった。 

 地元西成の警察関係者によると当初、警察は極左同士の利権争いでの内ゲバと見ていたそうである。しかし、手を入れにくい貧困ビジネスの絡みもあり、なかなか本腰を入れなかったらしい。だから初動捜査も遅れたんだという。

 釜ケ崎における「貧困ビジネス」とは何なのか。まず何が問題かと言えば、生活保護受給者が他地域と較べて多過ぎるということ。このことが西成に大きなビジネスを生んだ。他地域では有り得ないほど「医療・不動産・娯楽」業が活気付き、安定した市場を築いていくのだ。関係者にとって、貧困ビジネスとは不景気が進めば進むほどおいしい商売、つまり「莫大な収益が約束されたビジネス」ということになる。

 取材を進めるにつれて、この特別な地域独特の深い闇を知ることになった。怪しげなNPO法人から極左、暴力団が入り組む、社会のエアポケットを見た思いがした。そこには法を潜り抜ける最高の頭脳も投入されていた形跡があった。

 矢島さんはなぜ殺されなければなかったのか。地元のそれらしい人間にそれを質問すると皆、揃って口をつぐむ。矢島さんの部屋は綺麗に整理整頓されていた。指紋も出ない程に。指紋も出ない? そう、部屋の主の矢島さんの指紋も出なかったのだ。

 この謎に迫るべく西成に飛んだ。そして背筋がぞっとするような証言を聞くことになる。そして改めて「殺されたのかもしれない」と強く思うようになった。

(次週に続く)



【関連記事】「10万で頼まれた」ついに関係者の証言...西成マザーテレサ不審死事件【短期連載2】

Written by 西郷正興

Photo by Shi Yali

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