柔道界が負のスパイラルから抜け出せない。全日本柔道連盟は4日、天理大学柔道部で起こった部員による暴行問題の徹底究明に着手した。暴力根絶を進める最中の不祥事に怒りが収まらないが、それ以上にショッキングなのが世界選手権リオデジャネイロ大会73キロ級優勝の大野将平(21=天理大)が暴力現場に居合わせていたことだという。天理大は大野が暴力行為に関与していなかったと強調。それでも、全柔連には大野を“無罪放免”とはできない「ある事情」があり、頭を抱えている。
全柔連は5日に、天理大柔道部の藤猪省太(ふじい・しょうぞう)部長(63=天理大教授)らに都内の講道館で聞き取り調査を行ったが、近石康宏専務理事(64=トヨタ自動車顧問)は「暴力根絶をやっている最中なので非常に憤りを感じている」と怒りを隠さず、元大阪府警本部長としての手腕をフル活用して“取り調べ”にあたった。
4月に暴力根絶プロジェクトを立ち上げ、再発防止に取り組んでいたところの暴行発覚。全柔連はこれだけでも頭が痛いが、追い打ちをかけたのが大野問題だ。天理大の山田常則副学長は「その場にいた責任は問われるかもしれないが、彼が手を出したわけではない」と大野の暴力行為は否定したものの、5月中旬の暴行現場にいたことを認めた。その後、大学側が暴行の事実を把握した7月下旬に、主将としての責任を痛感した大野は被害者と家族のもとに謝罪に出向いたという。
大野は世界選手権ではオール一本勝ちで優勝。2016年リオ五輪でのエース候補に一躍、名乗りを上げた。天理大は5日、藤猪部長、土佐三郎監督とともに大野主将を解任したが全柔連としては簡単に“無罪放免”とするわけにはいかないのだ。
全柔連は7月2日付で、インターネット上に「暴力の根絶についてのお願い」とする文書を暴力根絶プロジェクトのリーダーを務める山下泰裕理事(56=副会長)の名前で発表した。その中で暴力を働いた柔道家の処分について「連帯責任は取らせず、処分は当事者に限定する」と明記している。問題はこの「当事者」の解釈の仕方だ。
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