大分の“救世主”インタビュー 梶山陽平 J1逆転残留へ全てをかける
4年ぶりに復帰したJ1で1勝7分け16敗の最下位に苦しむ大分トリニータ。逆転残留への救世主として加わったのが、MF梶山陽平(27)だ。8月上旬にJ1FC東京から期限付きで移籍して約1カ月。ボランチとしてプレーし、優れたキープ力と冷静な状況判断とで中盤に安定感をもたらしている。リーグ戦残り10試合で、J1残留圏内の15位甲府とは勝ち点差15。厳しい戦いが続く中、攻守にわたってのフル回転を誓った。 (聞き手・構成 伊藤瀬里加)
■90分全力出し切れ
-8月上旬の加入から1カ月。ここまでを振り返って
「チームの雰囲気は良くなってきているけど、僕が入って5試合で勝ち点2(2分け3敗)しか取れていない。その点では物足りない」
-今の大分に足りないと思う部分は
「90分間、全力を出し切らないと勝ち点3は取れない。前半はいいプレーをしている。最後まで続けて、試合が終わった時に『しんどかった』と思わないと。残り15分で失点したり、逆転されるシーンが多い。その時間は守るなら守るで、全員が厳しく当たるとか。ちょっとした部分でも徹底しないといけない」
-大分ではボランチとしてプレーしている
「自分の特長を出すことができれば、中盤に時間が生まれる。田坂監督からは『真ん中でゲームをコントロールしてほしい』と言われている。自分がゴールを決めたり、直接得点に絡むことがなくても90分間が終わったときに、勝ち点3を手にしていることが大事。攻守で役目を果たさないといけない」
-複数のクラブからオファーがあったが、なぜ大分に
「残留争いをしているチームで、やりがいや責任感を持ちたかった。大分のフロントの方から声を掛けていただき、必要とされていることを感じた。力になりたい」
-国内のクラブでは、ユースからFC東京一筋。移籍に迷いは?
「多少はあったけどプロである以上、試合に出ないといけない。話をもらって2、3日ですぐに決まった」
-田坂監督の印象は
「練習では厳しいが、ピッチ外では冗談を言ったりしてくれる。ピッチ内外でうまく(選手と接する態度を)コントロールして、いい雰囲気をつくってくれる。こういうチーム状況だけど、雰囲気はいい。力になりたいと思える監督」
-今年は半年間、ギリシャでプレーした
「(2005年の)ワールドユース大会(現U-20W杯)に出場した時から、海外でプレーしたいという気持ちがあった。けがもあって機会に恵まれなかったが、昨年末にオファーがあり、決断した。どこの国というこだわりはなく、とにかく欧州のチームでやってみたかった」
-実際に経験してどうだったか
「外国人はルーズ(苦笑)。10時に練習開始だったら、10時にロッカーを出てくる。言葉も含めて全てが違った。慣れるまでは大変だった。ピッチも荒れていて、厳しい環境でやらなければいけない。(両膝を手術した経験があり)古傷に疲労がたまって痛みが慢性化するようになった」
-そんなギリシャで得たものは?
「プレーの激しさやシュートを打とうという意識の違いを感じられた。言葉も違ったし、周りとのコミュニケーションの大切さを学んだ」
-MF本田、FW香川ら08年北京五輪でともに戦ったメンバーがフル代表でも活躍している。日の丸や海外再挑戦への思いはあるのか
「今は大分を残留させることが最優先。両膝をしっかりケアして、大分のゲームだけに集中している」
■サポーターが身近
-妻と2人の子どもを東京に残し、単身赴任
「寮で暮らしていて食事には困らない。苦労はあまりない。子どもと会えないことくらい」
-大分の街の印象は
「ギリシャと似ている。繁華街に行けばそれなりに街らしい感じがするけど、市街地から少し離れると海とか山とかがあって自然が多い。サポーターの方も身近に感じる。東京は(プロスポーツクラブが)FC東京だけではない。トリニータが注目されていることはよく分かる」
-サポーターの期待も高い。街で声を掛けられることも多いのでは
「いやいや…。大樹さん(FW高松)がすごいです」
-リーグ戦は残り10試合。どう戦うか
「残留することだけを考えて、ここまで自分が出た5試合で見えた課題を改善していく。あと一息だと思う。勝ち点3を取れば勢いが出る。サポーターの方も『一緒に戦おう』と言ってくれた。サポーター、選手全員で残留を目指して戦う」
◆梶山陽平(かじやま・ようへい)1985年9月24日生まれ。東京都出身。下部組織からFC東京でプレーし、U-18(18歳以下)時代の2003年に2種登録でJリーグデビュー。04年にトップチーム昇格。05年にワールドユース、08年に北京五輪に出場。今年1月にギリシャスーパーリーグのパナシナイコスへ期限付き移籍し、6月にFC東京に復帰。8月から大分でプレー。J1通算213試合に出場し、16得点。180センチ、73キロ。利き足は右。
=2013/09/06付 西日本スポーツ=